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ちょっとそこの異世界まで  作者: 三毛猫
5/294

お試しにも程がある5

「さて、どっちに行けばいいかな。」

街から暫く歩いて見えなくなったくらいで、久々車を出す。お留守番ご苦労様でした!ナビは車に付いているナビも操作できるのかな?

『可能です。首都までの道を出しますか?』

お願いします!助かるわ。ドライブ久し振りだから楽しみたいしね。食料もあるし、準備万端。

「道っぽいとこ走るの?ホントに周り何もないね。」

「車の事バレなくていいから、むしろいいかな。ここじゃ制限速度も無いしな。」

「ねぇねぇ、魔法使えるならこの子も飛べるんじゃない?」

「成程、飛ばしてみるか。」

程なく空中を走り出す車。何でもありだな。街は既に小さく見えるくらいになっている。どうやって進んでいるかは考えるまい。

「飛んでる、スゴーイ!」

「お、おぅ。窓からあまり乗り出すなよ。拾えるかわからん。」

「何あれ、鳥かな?」

「ん?鳥にしては大きくなってきたんじゃ…」

あっという間に巨大な物体になり、こちらを威嚇しているようにも見える。まさかドラゴン?食べられる?

「叩き落されたら困るな。」

「困る!やっつけてみようか。」

「おいおいみさと、初実戦がドラゴンてヤバいんじゃないか?できるかもわからないんだから。」

「だからやってみるんじゃん。」

リュックから剣を取出し、ドアを開けるみさと。ドラゴンとすれ違う瞬間を狙って、飛び出した。無事に乗れたみたい。あれ?戦ってるよりじゃれて見えるんですけど、大丈夫か?

剣は全く使うことなく、ドラゴンは下に降りていった。車も近くに下ろし、駆け寄ってみる。

「この子お腹空いてたんだって。車を食べ物と思ってたっぽいよ。」

「言葉わかるの?」

「わかるよ!喋るから聞いてみてよ。」

「お腹空いた…」

「本当だ。みさと、リュックの食べ物出してあげなよ。」

「そうだね、取ってくる。」

車からリュックを持って帰ってくるなり、食べ物を次々取出し始めた。ひたすら買い込んでもいたが、増えている分もあるのでどんどん出てくる。ドラゴンでもいい香りが分かるのか、パクパク(?)食べだした。みさとの方は出し切った様だ。だが、山のようになっていた食料も、ドラゴンにかかればすぐになくなる。

「すっからかんになったけど、足りたかなぁ。」

「もっと食べたいな~。美味しかったし。」

「気に入ったの?次の街に行ければ補給できるけど、君そのままじゃみんなびっくりしちゃうんじゃない?」

「そうかもな。お前、小さくなれたりするか?」

「出来るよ。見ててね。」

みるみる小さくなっていくドラゴン。最終的には手乗りサイズになった。やるなぁ。

「どう?」

「かわいい!じゃあ頑張ったし、次の街まで一緒に行こうか。ご飯買ってあげるよ。」

「満腹になるには、街中の食料買い込む必要あんるじゃないか?買ってもいいけど程々にな。」

「許可下りた、やったね!そういえば君、名前あるの?」

「シビックだよ、宜しくね。」

「いい名前だな。俺拓海、こっちみさと。宜しくな。」

「シビック君か。街に行っても、人は食べないよね?」

「さっきの食べ物の方が美味しかったから、また食べられるなら人間は要らないかなぁ。あれ、ちっちゃくなったらちょっとお腹いっぱいになってきた。」

「それは良かった。普通の食事でも間に合うといいんだが。」

「早目に次の街に行って、食べ物仕入れないとね。飲み物以外は私達の分も必要だし。」

「飲み物しかないのか!本当によく食べたな。」

「育ち盛りですから。」

胸を張るシビック。小さいからかわいいしかない。

「食べて大きくなって元の大きさに戻ったら、さっきより大きくなるのかな?ちょっと楽しみ。」

「すぐには大きくならないだろう。楽しみではあるが、いつまで一緒にいられるやら。」

「そもそも帰れるかわかんないでしょ!その時までかわいがってあげようよ。」

「そうだな、改めてよろしくな、シビック。」

一緒に車に乗込み、空中を直線距離で首都に向かう。飛んでるというより、ちゃんと車を走らせてる気分。上に行きたいと思うだけでその高度までの坂を登るような感じ。どっちに行きたいかは、ハンドリングでどうにでもできる。渋滞もないし、思い切り飛ばせるし、なんて素敵なんだ!周りに物がないから速度もあまり感じない。メーターは振り切ったままずっと走ってる。ドライブ最高!

「シビック君が食べようと思って向かってきたって事は、他の人にも見えてるんじゃない?」

「忘れてた、透明化しよう。何かあったら面倒だしな。」

「ねぇねぇシビック君、赤いけど炎出せたりする?」

「出来るよ。やってみようか。」

「ここでは止めなさい。お前降ろすぞ。」

「じゃあ見たいとき言ってね。」

「このサイズ感かわいいね。頭の上とか肩の上とか乗せてもいいよね?」

「街の様子見てからの方がいいんじゃないか?珍しいかもしれないし。捕まったら逆に可哀想だろ。」

「僕強いから捕まらないよ。大きくなって暴れればいいんじゃない?」

「止めろ!何でもやりたい放題するんじゃない。街も店も無くなったら、ご飯買えないぞ。」

「それは困る!シビック君、様子見しようね。それまでどうする?」

「リュックにでも入れとけば?増えると困るか。」

「ナビさんが、生き物は増えないって言ってる。大丈夫そうだよ。」

「流石ナビだ。話が早い。」

「聞いたの私!私も褒めて。」

「はいはい、みさとさんは気が利きますねー。」

「むぅ。後どれくらいで着くかな?」

「見えてきたあれがそうじゃないか。思ったより早かったな。」

「馬車と比べちゃ駄目だよ。好き放題スピード出してたんでしょ。」

「バレた?あんまり感じなかっただろ?」

「事故らなければいいけどね。お気をつけ下さいね!」

「そろそろ降りないとか。早いなぁ。もう少し走っててもいいんだけどな。」

「ご飯仕入れに行こう!」

「宿屋も見つけないとな。後は武術大会の会場も確認したいし。魔法協会は後でいいか。」

街からは見えないだろう地点に、着地。名残惜しいけど、車をウエストポーチにしまう。早くまた出してあげないと。

脳内地図で確認すると、かなり広い街のようだ。流石首都。宿屋は街の外れでもいいかな。街中探険しながら、違うところに泊まり歩いてもいいし。早く着いて良かったかも。

「じゃあ行くか。」

「ここからだとすごく歩きそうな感じですけど?」

「怪しまれるよりいいよ。運動した方がご飯が美味しいぞ。」

「そればっかり!」

シビックは、俺の肩の上に乗った。門番の動きが見えるくらいの地点で、やっと大人しくリュックに入った。

「通行証確認します。」

門の手前で待ち構えていた門番に、二人共通行証を出す。開こうとした時、止められた。

「SSランクの方ですか!どうぞお通り下さい。」

本当に色だけでわかるんだ。中身も見ないと、意味無いと思うけど。盗まれない様に気をつけてとは、こういう事か。悪用されたら大変だ。

「ありがとう。」

そのまま通らせてもらい、中に入る。前の街より数段賑やかだ。街の中心部はもっと栄えているのだろうか。通行証をしまってから、二人で歩き出した。露店も多く、ついつい立寄ってしまう。食べ物は5個注文、1つは分合って食べて残りはリュックへ。そうこうして街中を歩くうちに、生き物を連れている人をチラホラ見かけた。武術大会でテイマー部門もあるくらいだから、ここでは普通なようだ。前の街では殆ど見かけなかった。


「シビック君出してもいいかな?」

「いいよ。いたずらしない様にだけ言っとこう。」

小さいままの状態で、リュックから出す。街中が珍しいのかキョロキョロしだした。まるでみさとだ。

「いいか、触られても火を吐くなよ。連れ去られないように気をつけてろよ。食べ物は買ったらあげるから、その前に食べるなよ。」

「わかった!」

俺の肩の上に乗るシビック。買い物はみさとが担当。美味しそうなのを選んでくれる。買った物を差し出すと、小さい体で器用に食べる。大きめの物は支えてあげる。どんどん進んで行くうちに、後ろから悲鳴が聞こえた。シビックを捕まえようとした奴の手を、尻尾で薙ぎ払ったようだ。男は既に逃げていた。


「子供じゃなかったのか?」

「悪意はわかるので、対応しただけだよ。」

「そんなことも分かるのか、お前凄いな。」

「そりゃあね。」

「どしたの?」

「シビックが誘拐未遂を自分で防いだだけだよ。何もないさ。」

「大事じゃん!ホントに大丈夫なの?」

「悪意はわかるみたいだよ。」

「便利だね。じゃあリュックに入れなくても大丈夫かな。」

「こっちにいないと、ご飯貰えないじゃん!もうしまわないでね。」

「なるべくな。次行くか。」

その後も露店を巡り、暗くなってきたので宿屋に入る。

「いらっしゃい。食事かい、お泊りかい。」

「両方したいんだけど、いいかな?」

「そりゃ嬉しいね。二人と…テイマーかい?そのちっこいのは暴れないかい?」

「大丈夫、こいつの分も食事頼むし。」

「へぇ、食えるのか。まずは部屋の手続きからだ。名前書いてくれ。一泊銀貨10枚だ。」

「ほいっと。金貨で頼む。」

「お客さん、いい商売してんだね。はいありがとさん、お釣りだよ。鍵これね、4階の突き当り。」

「ありがとう。荷物置いて、頃合いを見て食べに来るよ。」

「はいよ。」

階段を登り、鍵を開けて部屋に入る。以前は階段が地味にキツかったけど、こっちに来てから感じなくなった。異世界だからかな。てかエレベーター導入してほしいわ。魔法協会本部が何階建てか楽しみである。

「今日は夕飯食べたら部屋でゆっくりしようか。」

「そうだね、いっぱい歩いたしね。」

「明日の予定だけど、まだ大会まで日数的に余裕あるから、街中歩いて疲れたら近くの宿屋探そうか。地図見ると中心部近くみたいだから、渦巻みたいにぐるぐるすると全部見やすいと思うよ。折角だから色んな所見たいしね。」

「途中魔法協会本部あったらよる感じ?」

「そうだった。行ってみるか。そういえばみさとはどこかで実践やってみたいよね?」

「できるとこあればそーだね。」

「大会出てみるか。賞金も出るらしいし。」

「いきなりだね!まぁいいけど。賞金貰ったら、沢山ご飯食べてまわろうね、シビック。」

「みさと、頑張って!お肉もいっぱい食べたいな。」

「そこそこ食べてるだろ。やっぱり肉か。サンドイッチじゃ物足りないよな。」

「美味しいけどね。ガッツリ食べたい時もあるじゃん。」

「食べ放題とかあるといいかもね。」

「みさと、あっても人間しか対象じゃ無いよね。」

「そっか!賞金で牛一頭買とかできればいいんじゃない?」

「がんばれみさと!待ってるよ。」

「シビックはそのままでも強いのか?」

「いけるよ。」

「テイマー部門もあるみたいだから、自分で稼いでみるか?俺は立ってるだけで何もしないから、自由に暴れられるぞ。」

「楽しそうだね。みさと、どっちが優勝できるか競争だ!」

「怪我しない程度にね。無理はしたくないなぁ。」

「ベゼルの事だから、剣の腕もチートクラスなんじゃない?」

「あり得るねぇ。」

「僕は最初から強いから心配しないで。」

「じゃあ決まりだな。始まる迄にはエントリーできる様に移動しよう。」

「はーい!じゃあご飯に行こうよ。」

「僕お肉がいいな。」

「はいはい、メニュー見てからね。」


翌日も街中散策でまったり過ごす二人と一匹。食事出来る店舗も多く、どこにしようか迷った挙げ句、気になる所には全て入る。2人前注文、1つは二人で分けて1つはシビックが食べる。ちょっとずつ味見できて、怪しまれず皆で食事ができる。以前に食べた物と同じメニューでも、店によって味が違うから面白い。後で作りたいのか、みさとはスマホにメモしてた。写真も撮っていたら、シビックも写り込んだらしく見せてきた。

「可愛くない?元の世界では信じてもらえなさそうだけど。」

「いいんじゃないか?可愛く写ってる。食べるの一生懸命だなこいつ。」

自分が話題になっているのがわかったのか、こちらを向くシビック。口元にソースが付いてるぞ。ベタな可愛さに思わず微笑む。


そんな日々を過ごしていると、武術大会の会場より先に魔法協会本部を見つけてしまった。仕方ないが、取り敢えず立ち寄る。

「すみません、こちらに寄るように言われてきた者ですが。」

大きなカウンターで中の人に声をかける。証明書も見せると、別室に案内された。飲み物を飲んで待っていると、灰色のローブを来た人が入ってきた。

「待たせたな。長官が待っているので、案内する。来てくれ。」

名乗りもせずさっさとドアをあけ進む。階段を昇り角を曲がって、場所を覚えられない様になのかかなり遠回りしている感じだ。建物はとても大きかったからそこに行くまでの道がこれしかないなら仕方ないが、そろそろ30分位経とうとしている。生真面目な表情だが、この道順を覚えるのは大変だろうと思っていたその時。

「あれ、どちらに行かれるんですか、副会長。」

「君、会長室に行くかね。一緒に行こうか。」

「はいはい、行きましょう。」

…おや、まさかの迷子だった?ナビ、建物内の通った道出せる?

『畏まりました。』

何と、器用にループしてた様だ。副会長と呼ばれてたから、ここの人だよな。

5分とたたず会長室に辿り着いたらしい。この前通ってたみたいだが、何も言うまい。みさと以上の方向音痴かも。

扉を開けると、白いローブの男性が居た。

「やっと来たか、ご苦労さま。私は魔法庁長官のレジアスだ。宜しくな。報告だと、拓海さんだったかな?」

「はい、星野拓海です。はじめまして。」

「イカサマはしてなさそうだな、この顔は。」

「長官、そんなことでは困ります!きちんと見て頂かないと。」

「見ておるよ。綺麗なオーラの色だ。特殊で困るくらいにな。お前さん、どこで魔法を教わったんだい?」

「正直に言っても信用してもらえるかな。異世界からこっちに来て、魔法を使えるようにしてもらったんです。ベゼルって子に。」

「君、大丈夫か?そんな事あるわけ無いだろう。世界創造主の一人だぞ。」

「ほっほっほっ。成程な。ところで副会長アイシスよ、用事を頼まれてくれるか。もう一度検査ができる様に、水晶を持ってきてくれんかの。」

「畏まりました、只今お持ちします!」

副会長は即座に出ていった。

「これで暫く帰ってこんだろう。拓海さん、その話信用するぞ。他の人に話してもまず信用されまいて。適当に話を作った方が良かろうなぁ。」

「ありがとうございます。ベゼルをご存知なんですか?」

「あやつも楽しい事をしておるようじゃの。その昔、私も世話になったからな。内緒じゃぞ。」

「そうなんですか。良かった、話のわかる方で。ところで、どういったご関係で?」

「私が若い頃に、更に若造と思い挑んだらあやつじゃった。いやー強かった。流石創造主ってとこだの。正体聞いてから私の魔法強化してくれって頼んだら、色々してくれた。ついでに不死も付けてくれたわ。」

「そうなんですか。会長は…」

「レジアスでいいぞ。周りがいない時はな。兄弟弟子のようだしの。」

「弟子かぁ。どっちがいいって選んだらこっちだったんですよ。」

「もう1つの選択肢は何じゃ?」

「剣で、ウチの奥さんが貰いましたよ。」

「剣か。奥方も強そうじゃの。」

「まだ試したことなくて、武術大会に出ようかと思ってますよ。賞金出るらしいし。」

「やり過ぎないように気をつけるんじゃぞ。拓海の方は出番がなくて残念じゃな。」

「連れができたので、テイマー部門狙おうかと。こいつです。」

「何と、ドラゴンか。これは珍しい、このサイズは見たことないぞ。」

「もっと大きいんですが、ご飯食べるために今は小さくなってます。」

「人と同じ物を食べるのか?」

「はい。美味しいから人間じゃなくてもいいって。」

「まるで話ができる口ぶりじゃな。」

「本人から聞きましたから。話せますよ、コイツ。」

「そろそろご飯?」

「まだだよ、もう少し待ってて。」

「何と言ったのだ?」

「あれ、そろそろご飯って聞こえませんでした?」

「鳴き声しか聞こえんかったぞ。」

「あれ?おかしいな。お前、喋れるよな?」

「誰もがわかる訳じゃ無いと思うよ。拓海達はわかってくれて嬉しかったよ。」

「そーなの?レジアスさんは分かりませんでしたか?」

「そういったじゃろ。それは、アイツのせい…お陰かな?」

「そんな感じですね。言葉がわからないと困るでしょって、言ってましたよ。まさかドラゴンまでわかるとは思ってなかったけど。」

「成程な。お前さんの異様な魔力も納得じゃ。良かったな、確認ができて。動物と話ができる者は今のところ聞いた事はない。それも、黙っておくといいぞ。」

「アイツやり過ぎだよ。」

「そのようじゃな。時に拓海よ、お前さんのスキルに魔法創造というものがあるが、何を作ったんじゃ?」

「何も作ってないけど。思うだけで魔法発動するから、元々何が出来たかも知らないし。これができたらいいな~と思うと、結局できてるみたいな。」

「ほうほう。で、何をしたんじゃ?」

「わかりやすいのだと、このリュックとウエストポーチは、大きいものも入ります。」

「このテーブルとかも入るのか?」

「もっと大きなものが入っているので、出してみてもいいですか?ちょっとこの辺どかしますね。」

「そんな大きな物が入っているのか?」

「見てて下さいね。」

ウエストポーチから車を取り出してみる。床が耐えられるかはわからなかったので、念の為魔法で防御だけしておく。レジアスの驚く顔が固まったままだ。

「俺達、これに乗ってる時にこのまま移動してきたんですよ。こっちでも乗れるようにしてくれたし。」

「あやつがか?」

「あいつがです。向こうに帰れるまで過ごしやすくしてくれたみたいで。」

「はぁ〜!そもそもこのデカブツは乗り物なのか。いやはや凄いな。乗ってみたいものではあるが、またしまえるのか?」

「この通り。」

何事も無かったかのように、ウエストポーチに入っていく。跡形もなく消えたあと、レジアスはウエストポーチに手を入れた。

「どこまで入るんじゃ、この入れ物は。私も入れそうな感じじゃな。」

「入らないで下さい!まだまだ余裕はありますよ。」

「何と!これがお前さんの作った魔法か…」

「作ったというか考えたというか。思ったら出来てた感じです。魔法の杖も貰ったんですが、使い方がわからなくて。」

ウエストポーチから貰った杖を出すと、レジアスは飛びついた。

「これは素晴らしい!このような強力な杖は見たことないぞ。私も欲しいくらいじゃ。」

「あげますよ、まだあるし。はい。」

更にもう一本杖を取出し、渡した。

「何と…このような杖が複数あるとは。もう無いだろうな?」

「まだまだありますよ。ほら。」

どんどん取出すと、レジアスは青褪め始めた。

「量産できるのか、このような性能の杖を。お前さんはいくつ貰ったんじゃ?」

「一本ですよ。ちょっと工夫したら、増えるようになっただけです。」

「他の者には、その事は話して無いだろうな?」

「話しても信じて貰えないと思って、誰にも話してないですよ。」

「誰にも話すなよ!大変な技術だ。私も教えてくれ!」

「さっき教えるなって言ったじゃないですか!」

「私は別に決まっているではないか!こんな魔法知ったからには使えるようになりたいぞ。」

「教え方わからないですよ。思ったらできてたんですから。」

「成程な。では、私にもその魔法をかけてもらえるか。それを研究するとしようかの。」

「レジアスさんにですか?」

「そうじゃ。この袖にかけてほしいんじゃ。入れ物は持ち歩かないのでな。」

「あ、袖にですか。いいですけど。ほい。」

「もうできたのか?早速この貰った杖を…おぉ、入った!では次はこの巻物を…これも入るぞ。いつもは袖が重くなるのに、なんともない。破れて縫ってもらうこともなさそうじゃな。これはいい。

ところで、その無詠唱もどうしたものかの。私と同等とバレてしまうからのぅ。弟子が出てきた事にするかな。」

「いいんですか、そんな適当で。」

「何かあった際に、私の所に話が来るじゃろ。まぁ、私の身内とわかって悪さする者も少ないだろうて。これでも400年長官やってるからのぅ。」

「そんなにやってんですか?凄いですね。じゃあ頼らせて頂きます。」

「ほっほっほっ。楽しくなりそうじゃの。」


こんな話を1時間位した頃に、アイシスは息を切らせて飛び込んできた。

「お、お待たせしました。水晶です。」

「ありがとうアイシス、助かるよ。」

「いえいえ、副会長として当然の事をしただけです。」

満面の笑みで、会長からのお褒めの言葉を受けるアイシス。

「他に御用はありませんか?長官。」

「ここでは会長と言えと言っているだろうが。仕事の手を止めさせて悪かったな。後は大丈夫だ。」

「…そうですか。また何かありましたら、呼んでくださいね。」

項垂れた仔犬のようにしょんぼりした顔で、トボトボ出て行く。

「永く面倒見過ぎたかのぅ。有能ではあるのだが、私と居るとさっぱりじゃ。」

「見ていなくても方向音痴ですよね。」

「あれはどうにもならんの。何とかしてやりたいんじゃが。」

「仕事はできる人なんですね。周りから受け容れられてるから、良いのではないですかね。さっきも助けてもらってたし。」

「だといいんじゃがの。さて、私の用は済んだが、まだ何かあるかね。」

「あれだけ色々聞いたから、今日はもう無いですよ。また何かあったら寄らせてもらいますね。」

「おぉ、楽しみにしてるぞ。この魔法の研究が終わった位に、また何か教えてもらうとしよう。」


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