お試しにも程がある 49
「そろそろ飽きたなー。
もうやめてもいっかなー。」
「…おいおいベゼル、何してんだ?」
ベゼルの大き過ぎる呟きに、仕方なくジェイドは反応した。
「地球ってやつに行く方法。」
「頑張れよ!」
「薄情じゃない?
もうちょっと聞いてよ。」
「俺がどうにか出来るわけないだろ?
お前、あの時実験してたやつもう1回試したんじゃないのか?」
「試したよ、試したんだけどさぁ。
上手く行かないんだよ。
魔法みたいには行かないんだよ。」
「じゃあ、まだ帰れてないんだろ、あん時の人間。」
「そうなんだよ。
顔を見に行ってやりたいんだけど、まだ出来てないからなぁ。」
「経過報告で、まだ出来てないよって言えば?」
「それ、ありだね!」
「えー。」
「そーだよ、そうしよう。
じゃあ行ってくるよ!」
ジェイドが止める間もなく、ベゼルは消えていった。
お気楽過ぎるんじゃないか、あいつ…
家で一息付いていた俺達のもとに、それは突然やってきた。
「やっほー、拓海・みさと。
元気してた?」
「ベゼル?」
「ホントだ、ベゼルくんだぁ。
元気だよ!」
「いやぁ君たち色々やってるから、見てて面白いよ。
気になって来ちゃった。」
「ほぅほぅ。
帰る手筈も出来たのかな?」
「そ、そこはまだ出来てないんだけどね。
ほら、途中経過の報告も必要だと思ってさ。」
「確かにね。
お茶淹れようか?甘い物でも食べる?」
「ありがとうみさと、食べる食べる!」
みさとはキッチンに向かい、ベゼルは空いている椅子に座る。
何故かベゼルとシビックで見つめ合っている。
いや、シビックは睨み返してるのかな?
暫くすると、ニヤニヤしたベゼルが俺の方を向いた。
「かわいいペットだよね、それ。」
「勿論、うちの家族だからな。
シビック、あいつにいじめられたらちゃんと言うんだぞ。」
「はーい!」
「いじめないよ。
ねっシビックちゃん。」
シビックは俺の方に寄ってくる。
「あいつ気持ち悪い。
僕のこと馬鹿にしてるよ、きっと。」
「ベゼル、やめなさい。」
「ちょっと!拓海はコイツに過保護なんじゃない?
やっぱ可愛くないよ、お前は。」
ん?知合い?
「ベゼル、シビックと知り合いだったの?」
「んーまぁ、知り合いかな。
ドラゴンでもこんな特殊な個体、そうそういないからね。」
「やっぱり特殊個体なんだ。
フォークも持てるしな。」
俺はシビックの頭を撫でる。
「お前の邪魔はしてないから、別にいいだろ。
僕は此処が居心地いいんだ。」
「へぇ、君がそこまで言うなんてね。
拓海、暫くその子宜しくね。」
「そのつもりだが、どうした改まって。」
「逃げ出した子なんだよ。
居心地いいなら、ここにいればいい。
嫌な所にいる必要はないさ。」
「じゃあ遠慮なく、ここで快適に過ごすよ。」
「おいおい、家主の意向も聞いてくれよ。
勿論、ずっと一緒だよ。」
お茶とケーキを持ってきたみさとが、やっと会話に入る。
「皆仲良しさんだね。」




