お試しにも程がある 46
「ここがダンジョンです。
宿題は一番奥に置いてある物を取ってくることなの。」
「わかった。
因みにセリカさんは何ができるの?
剣とか弓とか魔法とか。」
「私はシーフよ。」
「何故その職に?」
「大人は狡い人ばっかりだから、騙されないようにねってお母様からよく聞くの。
裏で何をしているか自分で確認・判断できるように、そういったことのできる職にしたの。」
「そうなんだ。
シーフだと、罠の探索・解除・隠密、武器は短剣とかかな?」
「そ、そんなところね。
だから、ひとりだとまだ魔物倒せないの。」
「確かに、最前線で敵を倒す職ではないよね。
チームは組まないの?」
「入れてもらうんだけど、何故か追い出されちゃうの。
不思議よね。」
「今回俺達は宿題のための護衛だから、ちゃんと今後は仲間集めないとね。」
「わかってるわよ。
早くできるようになって、お父様を守るんだから。」
「お父様、ヴォルツ様ね。
何か危ないの?」
「人が良すぎるのよ。
この間も慈善事業のためとか言って、お金をもらいに来てる人いたわ。
本当にそんなことやってるかわからないけど、お父様はそのためならって土地の一部を売ろうとしてたのよ。」
「凄い方だね、確かに。」
「お母様が止めてたから大丈夫だと思うけど。
だから私はそういった人の裏を取るために暗躍するの。」
「少女よ大志を抱け、だね。
頑張って。」
「あとどれくらいでなれるかな?」
「それは君次第じゃないかな。
何もせずになれるとは思えないからね。」
冷や汗ものである。
俺達、なんも苦労しなかったからなぁ。
でも、このイタイケな少女の願いをベゼルに叶えてもらうわけにもいかないだろうし。
「取り敢えず、中に入って宿題済まそうか。」
ここで問題である。
何かさせた方がいいのかな。
俺達いれば、この子は何もせずに奥まで辿り着ける。
「セリカさん、宿題は物を取るだけなの?
道中あれこれするとか、何か確認するとかは必要?」
「先生からは何も言われてないわ。」
「途中に出てくる魔物の確認も要らないの?」
「むしろ必要かしら?」
「進んだ時にどんな魔物が出たか、どう倒したかの話もしないの?
養成所だし、そこに向かうまでも訓練の内かなと思って。」
「う、煩いわね。」
「情報要らないなら真っ直ぐ進むだけだけど。
それで良いかな?」
「わかったわよ、何が出たかは教えてほしいわ。」
心意気は買うが、世間知らずと言うかなんというか。
やっぱりお嬢様何だろうな。
気は強いけど。
「了解。
じゃあ進もう。」




