お試しにも程がある 44
「これは美味いな。
飯もいいけど、酒にも合いそうだ。」
「それなら、烏賊にはマヨ醤油七味でしょ!
七味はまだ出来てないから、一味でお試しあれ。」
ボンゴの一言に、みさとは即座に対応。
皿にマヨネーズを出して、醤油と一味唐辛子をかける。
「多分いけるはず、どーぞ。」
ボンゴだけでなく、クレスタも試す。
俺は美味しいの知ってるから、2人を見守る。
「これはいい、酒持ってくるわ。」
「待て待てボンゴ、酒飲んで味見・商談出来るの?」
「酒入ってからが本番だろ?
こんな美味いもん作るから安心しろ。」
「じゃあ買い付けと店に出すこともこっちは考えておくね。
この組合せはまた違って美味しい。」
クレスタも気に入ったようだ。
ボンゴは席を外したが、何もしてない方が焼き上がったので同じ様にみさとが取り分ける。
「お魚良いよね。
私は、大根おろしもたっぷりと。」
既に食事会になっていた。
「魚というのは、こんなに美味しいんですね。
是非次のメニューに取り入れましょう。
先程の話だと、順調に行けば翌日には出来るんですよね?」
「そうだけど、ボンゴ達の作業がどう進むかだね。
俺達には食べ頃の大きさの魚だけど、あの巨体からすると小さくて扱いにくいかもしれないし。」
「なぁに問題ないさ。
小さい魚は手で捌けるからな。」
酒を持って戻ってきたボンゴ。
「しかもこれなら、こっちでも売れるんじゃないかと思っている。
塩焼きしか知らなかったが、これなら焼くだけで美味い。
醤油とマヨネーズの味変も有りだ。」
「気に入ってくれて良かった。
後で冷蔵庫作りたいところ教えてね。」
「おぅ、頼むわ。
嬢ちゃん、この大根おろしってのもさっぱりして美味いな。」
「でしょでしょ?」
「確かに。
みさとさん、そのおろし金とやらも後で交渉させてくださいね。」
「はーい!
細かい部分はたっくんお願いね。」
こうして、色々なことが纏まりつつ、試食会は楽しく終わった。
今度はクレスタだけ来てもいいように、ボンゴとは話がついた。
どうやら、醤油とマヨネーズを売ることも取付けたらしい。
商人、抜け目ない!
試作品もあるので、帰りは直接クレスタの家まで転移する。
クレスタはさらなる売上向上を確信し、ホクホク顔。
「そういえば、前に言ってた鰹節削り器だけどね。
みさとさんのおろし金では対応できないの?」
「硬さが違うからなぁ。
形状も薄くならないし。
イメージは、大工さんが使う鉋かな。」
「鉋かぁ。
薄く削る感じだと、おろし金とは用途が違うか。
成程成程…」
「下に受け皿になるように、箱も付いてる方が使いやすいよね。」
「では、上が取外し出来るか、下を引出みたいにする感じかな?」
「そうだね。
みさとみたいに、剣で薄く削ってボウルに貯められる人はそうそういないと思うよ。」
「あの硬さなら納得だよ。
店で誰でも使えないと困るしね。
小さくなってきた時の支えも必要かな。
手を怪我しないように。」
「そこは大事だ。」
「貰った鰹節と分けてもらった干物を、うちの中でも試食してもらおうと思う。
最高のひと時だった、有難う!」
「これからもご贔屓に。
じゃあ、また何かあれば連絡してね。」
家に戻ったみさとは、先程貰った鰹節を取出した。
シャカシャカ削って、あっという間にボウルいっぱいになる。
一度リュックにしまってから、再度取出す。
腕組みして、何かを考えているようだ。
「どうしたの?みさと。」
「うん、鶏ガラスープと合わせると美味しいと思うんだけど、このまま入れるか粉にしてアクセントにするか迷ってる。」
「両方やってみれば?」
「そうだよね。
美味しかった方をクレスタさんに追加で伝えよう!」




