お試しにも程がある 40
「お疲れ様でした、今回も助かりました。
みさとさん、次のメニューも楽しみにしてますよ。」
クレスタはホクホク顔で、俺達を見送った。
依頼報酬も貰い、帰路に着く。
…筈だった。
みさとは居ても立ってもいられなかったようで、もう一度蕎麦屋(?)に行きたいと言ってきた。
シルフィに転移し、蕎麦屋に入る。
改めて座ってメニューを見る。先程持帰り出来た物以外に、きりたんぽのような形にして焼いて醤油をまぶしたもの・醤油のスープに蕎麦の生地が入っているもの等あった。
店の人に話を聞き、この辺りは蕎麦と山葵の栽培していることがわかった。
早速買って帰ることにした。
今度こそ家に帰り、リュックから蕎麦の実と山葵を取り出す。
「お蕎麦に本当に会えるとは!
やっぱり細い麺にして間違いないかなもう一度食べよっか。」
「良いね。
俺はざる蕎麦希望。」
「私は温かいお蕎麦にして、天婦羅も作っちゃおう。」
「僕は両方試したいよ!」
「わかってるよ。
作ってみるから待っててね。」
恒例の作り方検索。
「何々、石臼でゆっくり挽くのと、水分量と混ぜ方に注意か。
じゃあ先ずは石臼出して、粉にしよう。」
PCを開いたまま、紙を広げた上に石臼を置く。
蕎麦の実を入れて、豪快に挽き出す。
「待ってみさと、あんまり早く挽くと熱が入って香りが飛ぶって書いてあるよ。」
「あわわ、ありがとう。
気を付けなきゃ。」
今度はゆっくり回しだす。
蕎麦の香りが広がってきた。
1袋分全て挽き終わり、ボウルに入れてリュックにしまう。
再度取出してから、今度は捏ねに入る。
再度PCで分量と捏ね方確認、先程よりは慎重に取り掛かる。
近くで水を足す前の蕎麦粉を見ていたシビックがくしゃみをしそうになり、俺が顔を背けさせる。
「危なかった。
食べる分減ってたぞ。」
「ごめんごめん、そんなつもりはなかったんだけどね。」
みさとは気にせず、作業を続ける。
コネコネ、丸めて伸ばして薄くして。
2枚目の俎板も駆使して細く切る。
切り終わって一息つくと、ハッという顔をする。
「どうしたの?みさと。」
「たっくん大変、お蕎麦直ぐ茹でたいけど、お汁の用意忘れてた。
香り飛んじゃうかな。」
「リュックに入れとけば、時間経過しないよ。」
「あ、その手があったか。
流石たっくん。」
みさとは切り終わった蕎麦をリュックにしまい、鰹節を取出す。
慣れた手付きでシャカシャカ削り、あっという間に山にする。
蕎麦の汁を用意し、天婦羅に取り掛かる。
もう1つの鍋で、たっぷりの湯を沸かす。
茄子・南瓜・玉葱等の天婦羅、かき揚げも仕上げる。タイミングを見て、蕎麦を茹でる。
手際よく揚げた天婦羅は皿に盛られ置いてあるので、俺は箸と一緒に運ぶ。
空いた所に、水で締めた蕎麦が置かれる。
笊に盛って出してくれた蕎麦は、とても美味しそう。
お椀に汁を入れて葱と下ろしたての山葵も添えて、食べる準備は万端。
みさとは温かい蕎麦も用意し、シビックの分も持ってきた。
「お待たせ、食べよう!」
「「いただきまーす!」」
「召し上がれ。」
先ずは蕎麦。
太さは少し不揃いだが、とても香りが良い。
店で食べたものより良いかも。
山葵も合うなぁ。
シビックは俺の真似をして、器用に食べている。
みさとはかき揚げを載せて、ハフハフ食べてる。
「うんまい!
今度茸の天婦羅も良いかもね。」
「有りだね、それ。
すっかり忘れてた。
筍とかも美味しいよね。」
「そうなると魚介類欲しくなるな。」
「うちだけなら、リュックから出せば食べられるけどねぇ。
おもてなしの時くらいかしら。」
「流通がそもそも無いからな。
転移装置活用できれば、魚も早く移動出来るけど。」
「早く出回ると良いね。」
「みさと、美味しいけど足んない…」
「そっか、ゴメンね。
かやくご飯て訳にはいかないけど、おにぎりでも作ろうか?
お蕎麦ももう少し出せるし。」
「ポテトは天婦羅にならないの?」
「良いよ、やろうか。」




