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ちょっとそこの異世界まで  作者: 三毛猫
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お試しにも程がある4

目を覚ますと、部屋の中は既に明るくなっていた。みさとは思ったとおりまだ夢の中だ。

カーテンのない窓の外を眺めると、天気も良く動き出した人達が疎らに見える。もう少しして店が開く時間になったら、人が増えてくるだろうか。あまり早く起こしてお腹空いたとゴネられても面倒なので、みさとはもう少し寝かせておくとしよう。

さて、今日の予定だが、行きたい所はいくつかあるが歩いてみないと店の位置がわからない。最初の魔法協会支部があまり遠くないといいのだが。全て歩きか?自転車くらいはあってもいいのでは?でも、窓の外を見る限り徒歩か荷物を引く馬しかいないな。

『この街の地図を出しますか?』

・・・は?誰?何処?見られたら嬉しいけど、と思っていると、脳内に見たこともない街の地図が出ていた。

声に出していないのに、まさかナビが動いてるのか?

『はい、その通りです。ご質問あれば承ります。』

なんと!本当にナビ(⁉)が利用できるとは。

じゃあ、魔法協会支部とギルドの場所教えてくれる?

『畏まりました。』

脳内地図に、現在地と魔法協会支部とギルドの位置が示された。距離感が掴めないと思っていたら、縮尺と現在地からの距離も表示された。なんて便利なんだ!ありがとう。

『どういたしまして。』

返事が来るとは、かわいい奴だ。ついでに、美味しいご飯・スイーツの店も知りたいな。

『食品を販売している店舗の表示はできますが、味まではわかりかねます。』

だよね、味の評価は情報無いよね。食べて回ってみるよ。


そんな脳内会話してるうちに、みさとが目を覚ましたようでモゾモゾ動き出した。

「うーん、もう朝?おはようたっくん。」

「おはよう。よく眠れた?」

「バッチリ!やっぱ疲れてたんだね。ベッドで休めて良かった。」

「それは良かった。行くとこ確認したから、準備できたら出掛けよう。」

「用意いいねぇ、場所もわかるの?ウロウロするなら、飲物とかご飯も考えて欲しいよ?」

「大丈夫、迷わず行けるよ。」

「お任せします。」

のんびりした準備が終わった頃には、人通りも増え相変わらず良い天気。外に出ると、多くの店が開いていた。まっすぐ魔法協会支部に向かうと、みさとはキョロキョロし始めた。

「露店で美味しそうなの売ってるよ!」

「おいおい、両替しないと買えないよって言ったよね?」

「そうだった。見てるだけは辛いなぁ。」

「両替終わったらギルドの前にご飯にするか。」

「やった!両替は魔法協会だっけ?遠いの?」

「もうそれ程じゃないよ。ご飯前のいい運動と思って頑張って。」

「瞬間移動とかできればいいのに。」

「ちょっとぐらい動こうよ。ほら、看板見えてきたよ。」


それは、この街の中では大きい部類に入る建物だった。敷地も広い上に5階建て。看板が仰々しい。取り敢えず入ると、1階は受付・待合室・その他。2階が道具売り場になっている。2階へ上がろうとすると検問が待っていた。

「魔道士若しくは冒険者しか上がれないよ。見ない顔だけど、証明書あるの?」

「持ってないです。何処で発行してもらえるの?」

「そっちの受付に並んで。ここは魔道士認定されれば証明書発行してもらえるよ。魔法使えるならね。」

「そこはご心配なく。すぐできるかな。」

「ほぅ、そりゃ楽しみだ。まだ列は短いから並んでな。」

「どーも。」


「なにアイツ、やな感じ!」

「よくあるパターンでしょ、気にすんな。実力があるとわかったら態度コロッと変わるかもね。」

「実力あるの?」

「やってみないとわからないけど、ベゼルのお墨付きでしょ。大丈夫だよきっと。」

そんなに待つことなく、拓海の番がやってきた。

「手数料銀貨1枚頂きます。」

「そーなんだ。金貨しかないけど、大丈夫?」

「金貨しか無いんですか?」

「そうなの。金貨しかない。両替したかったから丁度いいけどね。」

「お釣りは用意できますのでご心配なく。これに名前と年齢書いてから、この水晶に手を当てて下さい。」

「はい。」

「この水晶は、魔力がどれくらいかで色が変わります。何系統かもわかります。どうぞ。」

火・水・土・風・木に加え、聖魔もわかるそう。何になるかな。

手を当てて虹色の光が見えてすぐ、粉々に砕けた。

「どーいうこと?」

「何これ、こんな事初めて見た!判定を本部に問合せますので、お待ち頂けますか?」

「はぁ。」

バタバタと駆け回る職員、こっちを見ながらヒソヒソ話をする人達。暫くすると、別室に案内された。ソファに二人で座ると、飲み物まで用意された。なんか待遇変わってない?さっきまでずっと立たされてたのに。

暫くすると、先程の受付とは違う人が入ってきた。

「お待たせして申し訳ありません。今回の判定ですが、最高ランクのSSとさせて頂きます。」

ランクとは、下からF〜A、S、SSとなるそう。実力あったらしい。

「それから、この紹介状を持って首都の魔法協会本部に行ってもらえますか。」

「なんの為に?」

「それはわかりかねます。本部の者からの指示です。この国で五指に入る魔道士からの依頼と思って頂いて結構です。」

「行く予定もないんだけど、拒否できる?何かメリットある?」

「なんと、こんな光栄なことを拒否されるとは!お目にかかるだけでも中々出来ないのに。わかりました。本当の事をお話しますと、あなたの魔力を本部で改めて確認したいそうです。何か細工をされるといけないので言うなとは言われてましたが、行っていただかないと困ります。是非お願いします。」

「それなら、自分でも確認したいからいいかな。時期未定だけどいい?」

「なるべく早くとは言われておりますが、期限は切られておりません。」

「わかった。何か証明書みたいの出るんだっけ?」

「はい、こちらが証明書です。失くさないようお気をつけ下さいね。それからこちらがお釣りです。確認してください。」

「ありがとう。ついでにこの革袋も、もらっていっていいかな。こんなに枚数増えるとは思ってなかったから。」

「どうぞお持ちください。2階の魔道具も良かったらご覧になって下さいね。」


早速2階に入ると、一斉に注目され、一瞬の静寂の後あちこちでこんな会話が聞こえてきた。

「あれがSSだって、すげーな。」

「何やったらそこまでなれるのかな。」

「いいトコのボンボンなんじゃないの?」

「声掛けといた方がいいかな。」

俺は珍獣か。そんなに珍しいのか、SS。気にせず見て回ろう。どれどれ。

ポーション・解毒薬・麻痺解除・暗闇解除等々。流石にエリクサーはないか。後は杖、浮遊できるネックレス、暗闇防止メガネ、トラップ解除ベルとかか。色々あるけど、自分でも出来ないか試したいな。ポーション位は買っとくか。

取り敢えず一通り見てから、ポーション2つ購入。1つ銀貨20枚って、結構値が張る。金貨出してお釣りもらおう。両替はできる所でしとかないとね。全てみさとのリュックに入れて(革袋の財布も含めて)から、外に出た。明らかに不満そうなみさとの顔。

「よし、ご飯買いに行けるぞ!好きなとこ選んでいいよ。」

「待ってました!まずはさっきの美味しそうなとこ行こう。」


迷わず美味しそうな香りのする店に辿り着く。いつもはどこに行くにも最終的に遠回りする羽目になるのに、ご飯に関しては別らしい。

焼きたてパン・サンドイッチ・焼いた肉の串刺しや蒸したじゃがいも・丸焼きの鶏らしきものもある。ドリンクは瓶詰めをいくつか仕入れ、甘い匂いでドーナツに似たものを見つけたらしい。

「あのねみさとさん、何日かあるから今日全て買わなくてもいいんじゃない?」

「そーだね、日によって違うもの置いてるかもしれないし、食事前にお散歩だね!」

買ったそばから全て自分のリュックにしまい込むみさと。機能をしっかり理解しているようで何よりだ。その後もウインナーやビスケット、中身の違うサンドイッチ数種類も買込み、尚且食事は別の席のある店舗に入った。食料確保と食事は違うらしい。こういう所はしっかりしている。

「一杯歩いたらお腹空いたね!ここは何があるかな。」

「名前からじゃわからないから、取り敢えず頼んでみるか。」

メニューは読めるが、写真や食品ディスプレイは無いから想像もつかない。中身の分からないものを名前だけで注文するのは少し勇気がいるが、来たものを見て安心できた。肉を焼いた物には変わらないが、スパイスが違うのか昨日の食事とは違う美味しそうな香りがする。みさとの方は、シチューのようなスープとパンも付いてきた。

「シンプルだけど美味しいね。」

「そうだな。持帰りできると良かったのに。」

「そーだね。露店は露店で美味しそうだったよ。味見して美味しかったら、いくつか買ってもいいよね。」

「バッグの容量は大丈夫かね。」

「まだ1%も使ってないので大丈夫ですって、ナビさんが言ってるよ。」

「みさともナビ起動してるの?」

「うん。食べ物のお店も教えてくれた。」

「俺も今朝、この街の地図見せてもらった。便利だね。」

「何かあったらお知らせしてくれるって機能つけたのが、意外に高性能なんじゃない?」

「意外は失礼かもな。反応速度早いし、対応力もある。みさと、使い過ぎるとダメ人間になりそうだな。」

「そんなことないよ!仲良くやってるし。今日からのお友達だけど。」

「いいんじゃないの?迷子になったら教えてもらうんだよ。」

「迷子にはなりません!」

「はいはい。そうか、最初からナビに聞けばいいだけか。」

「たっくん、私よりナビさん信頼しすぎ。」

「だって出来る子なんでしょ?みさとより。」

「そーだけどさぁ、ちょっとは私を信用してもいいんじゃない?」

「いやいや、今までの行動見てたらできないっしょ。」

「ヒドイ。まぁ、20年以上一緒にいるからね。」

「何でもお見通しですよ。ナビは何でも教えてくれるかもしれないけど、躓いた時は支えられないから気をつけて。」

「そこはたっくんの出番でしょ。って、転ばないし!」

「ご飯食べたら、もう少し街中見て回ろうか。」

「おぅ!」


食後は、本日の予定通りギルドに行くことにした。拓海が地図を見ながら進んで、みさとはそれについて行き街並みを見て楽しんでいるようだ。人にぶつからないようにだけは気をつけてほしい。腹ごなしの散歩に丁度いいくらいの距離で、ギルドの拠点があった。魔法協会支部と比べるとこじんまり感はあるが、やはり大きな建物だ。人の出入りは、こちらの方が多いかも。入ってみると、長いカウンターとテーブル席や長椅子、壁にはいくつもの貼り紙がある。何人かのグループもいれば、ひとりで壁紙を眺めている人もいる。冒険者ギルドと聞いていたので、強そうな人ばかりに見えてしまう。

カウンターに向かうと、笑顔で迎えてくれた。

「こんにちは、どういった御用ですか?ここは初めてですか?」

「そうなんです、ギルドで通行証貰えるって聞いてきました。あ、こっちね。」

「わかりました。冒険者になると、冒険者としての証明書が通行証として利用できます。貴女は何で戦闘するんです?」

「剣です!初めて使うけど。」

「そ、そうですか。最低ランクはFですけど、冒険者証出せるので安心して下さいね。」

「良かった。ランク付けって、何するの?」

「この巻物に手を当てて頂くだけです。その前に、こちらに名前と年齢を記入して下さい。」

「実践でランク付けじゃないんだな。」

「かなり昔はそうだったと聞いていますが、魔法協会の圧力でこちらに変わったと聞いてます。あ、内緒ですよ。」

「どこの世界も、強いところが幅をきかせるもんなんだな。世知辛いな。」

「そんなものですよ。忘れてました、手数料銀貨1枚です。」

「こっちもか。金貨だけどいい?」

「は?金貨ですか⁉多分大丈夫だと思います、おそらく。」

「書けましたよ!これ触っていい?」

「どうぞ。色が変わって、ランク表示出ますよ。」

「わかりやすいんだな。」

「そこは流石に親切設計で助かってます。」

わしっと掴んだ後は、水晶の時と同じ様な色・光の変わり方をして、やっぱりバラバラになってしまった。

「あ~あ、これもかぁ。」

「なんですか貴女、こんな事初めてですよ!どうしよう、困ったなぁ。これもってどういう事ですか?」

「さっき俺の方が魔法協会での検査で同じ様な感じだったからじゃないかな。最高ランクで出してもらったけど。」

「は、ははは。責任者に聞いてくるので待っててくださいね!」

勢いよく走っていった。そんなに大変な事なのか。

「これもまたか。」

「ベゼルくん、加減知らないんじゃないかなぁ。」

「軽そうな奴だったからなぁ。一応この世界で暮らすには困らないようにはしてくれたんだろ。」

「気遣いは有難いね。いい子なんじゃない?」

「誤魔化すのに手一杯だったんじゃないか?まぁいいけどね。楽しめそうではある。」

しばらくして、別の人を連れて戻ってきた。髭を蓄えた、精悍そうな男性が対応に変わった。

「お待たせしましたね。取り敢えずSSで出しときますね。証明書とお釣り用意するので、もう少し待ってて下さいね。」

「はーい!」

「無事に発行出来そうで何よりだ。」

「ところで、魔法協会でも何かやらかしたんですってね?」

「やらかした訳じゃないですが、水晶が壊れました。SS貰いましたけど。」

「なんと、あの水晶が壊れるとは!貴方も凄い魔法力お持ちなんですね。」

「この辺り来たばかりで証明書欲しかっただけなんだよな。そんな大事になるとは思ってなかったけど。」

「念の為言っておきますね。二人共最高ランクなので、この街では大変に珍しいんですね。証明書はホントに失くさないよう気をつけてくださいね。後、他の冒険者からパーティに誘われる率が高くなると思いますが、相手は充分に選んでくださいね。犯罪グループに入られると手がつけられないからね。むしろ自衛団に欲しいくらいですね。」

「ありがとう。少ししたら別の街に向かうので、何処にも入らないです。」

「成程ね。暫くはこの街を楽しんで下さいね。」

「私の証明書来た!」

羊皮紙を丸めたような見た目だが、パールの様な色合いで、場所によって色が変わっているように見える。手に取ると光の加減で色が変わるのがわかった。

「マジョーラカラーみたい。きれいだなぁ。」

「よく見なかったけど、俺のもそうなのかな。」

「本来は先程の巻物がそのまま身分証になるのですが、あの状態だったのでね。SS用の特別仕様なので、偽造出来ないのね。おいそれと発行できないから、ホントに失くさないでね。私も久しぶりに見ましたよ、いつ以来ですかね。」

「本当に珍しいんだねぇ。ちょっと嬉しい。」

角度を変えて、眺めているみさと。実践はしていないので、本当に剣が使えるかは怪しいものだ。どうやって判定しているか、謎すぎる。

「冒険者の実力も魔法でわかるなんて、思ってもみなかったな。」

「我々も詳しくはわかりませんが、何かの数値があってそれに反応するそうですね。」

ほほぅ。ナビ、仕組みわかる?

『体力・魔力・身体能力・持っている技の習熟度・幸運値、後は本人のレベルとなってます。』

みんなは数値化したものを見られないのか?魔法では判定できるのに。

『魔法での確認は可能です。魔法を使えない人はその数値の存在を知らないので、確認する方法も考えないのではないかと推測されます。マスターの数値を表示しますか?』

今はやめとこう!後でゆっくり教えて下さい。

ベゼルの事だから、かなりデタラメな数値になってビックリしそうだしね。

「用は済んだし、帰ろうか。何か観たいものある?みさと。」

「特にないけど、甘い物食べたい!」

「いいお店があるのね。パンケーキで、特別甘いシロップかけてくれるところが、今大評判ね。」

「ここから近いの?」

「近いですね。入口を出て、左に向かって歩くと緑の看板見えてきますね。焼きたてを出してくれるから、香りでわかるかと思いますね。」

「なら大丈夫そうだな。ありがとう、行ってみるよ。」

「楽しみ!早く行こう。」

「行ってらっしゃいね。」


早速緑の看板探して歩き出すと、言ってた通りいい香りがしてきた。

「おやつに丁度だね!」

「甘くないのもあるかなぁ?」

「パンケーキにバターならいけるんじゃない?」

「それいいね!フライドポテトも食べたい気分だ。」

「しっかりご飯になっちゃうよ。あくまでおやつですよ!」

「はいはい。」

店に入りメニューを見る。パンケーキにトッピングも追加できる様だ。

「みさとさん相談ですが、1つ頼んでトッピングたっぷり使えるように半分こしませんか?夕飯前にあの量は多いと思う。」

「そーだねぇ、いいと思う。他のメニューも頼みたいし。」

「そっちか!まぁ甘くなさそうなメニューもあるからそれならいいけど。」

「むむむ、妥協しましょう。美味しかったらまた来れば良いだけだしね。」

他のテーブルに来ているお皿を見ると、思った以上に大盛りに見える。お皿が小さいのかパンケーキが大きいのかはわからないが、縁が見え隠れしてる。少しずつ頼む方が良さそうだ。

「じゃあトッピングは、シロップ追加とバター、ソーセージもあるよ。ベーコンとかチーズあればいいのにね。」

「名前違うだけであるかもよ。お腹に入る程度にしとこうね。」

「うん!」

結局注文してみると、テーブルの上はお皿で一杯になった。


「お夕飯要らないかな。かなり満腹。」

「美味しかったね。様子見て少なめご飯でもいいんじゃない?」

そんな話をしながら、宿屋に向かった。流石に疲れたので、今日は戻ろうということになった。

それにしても、脳内地図は便利だ。行きたい所を考えたら、その中で帰り道を表示してくれた。何も考えていなさそうなみさとは、相変わらずキョロキョロしている。一度通った道なのに、珍しいか?何か楽しいのだろうか。

「ねぇここどこ?帰れる?」

「やっぱりね。ナビがいるから大丈夫だよ。さっき通った道戻ってるだけだけど覚えてる?」

「そーなんだ!なんか見たことあると思った。」

「嘘つけ、覚えてなかったろう。」

「そ、ソンナコトナイヨ。あ、あのパン屋さん覚えてる!」

「食物屋は覚えてるんだな。流石だよみさと。」

「えっへん!」

「褒めてないから。取り敢えず帰れるから気にしなくていいよ。」

「はーい。」

夕暮れの中、宿屋を目指した。


真っ暗になる前には宿屋に到着。ご主人に声をかけて、3階の部屋に上がった。荷物を置いて直ぐにベッドに転がるみさと。そのまま寝そうである。

「よく歩いたね。」

「よく食べたの間違いじゃないか?明日は行ってない所を回ってみよう。」

「はーい!」

「そういえば、バッグの中身どうなってる?」

「んー大体2つに増えてるみたい。ノートPCもお財布の袋も冒険者証もなってるっぽ。」

「ほぅ!ノートPC1つ欲しい。」

「どーぞどーぞ。でもさ、そのサイズのウエストポーチにノートPC入るのはやっぱ面白いね。」

「だから今日は大きなものはみさとのリュックに入れたんだよ。明らかに怪しまれるだろうし。」

「そりゃそーだね。ねぇ、たっくんのウエストポーチも、中身増えるんでしょ?車も増えてるのかなぁ?」

「それはそれで嬉しいな。元の世界でどうなるかではあるが、増えても大事に乗るよ。」

「帰れるかわかんないけど、今は今で楽しいね。」

「そうだな。軍資金もあるし、何とかなるだろ。」

「…」

いきなり静かになったと思ったら、寝落ちしてるみさと。まぁ疲れてるよね。毛布をかけてあげてから、俺も寝るか。明日もいい天気だといいな。

そうこうして何日か過ごした日の夜、宿屋で夕食にしていた時に発見した。

「武術大会?何これ。」

「毎年恒例の、首都で行われている大会ですよ。魔法以外は何でも有りの大会で、優勝者には賞金も出ますよ。」

注文を取りに来た亭主が教えてくれた。

「魔法は対象外なんだ。」

「そうですね。魔法協会以外で強い人出られても困るんじゃないですか…なんてね。あ、魔獣を闘わせるテイマー部門もありますよ。迫力満点で大人気ですよ。以前は観に行ってましたが、宿屋を始めてからは何日も閉じることできないので、久しく行ってないですね。」

「首都までは遠いの?」

「馬車でも20日近くかかります。馬の頭数にもよりますがね。観に行くなら早目に行った方がいいですよ。」

「もう出場選手は決まってるのかな?」

「当日参加もできますが、大会始まる前に締切られるはずです。まさか、参加されるんですか?」

「面白そうだから観に行ってみるよ。参加はどうかな。」

「そうですか。まだ日数はありますが、間に合うといいですね。」

「間に合ったらでもいいさ。1日で終わるの?」

「大概2日ですかね。決勝リーグは、翌日になりますから。会場周りに出店も出て大盛況ですよ。」

「へぇ、お祭りみたいだね。私はそっちが楽しみだな。」

「じゃあ明日ここを出たら、首都に向かうか。」


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