お試しにも程がある 33
「ところで、あの春巻というものもうちで出せますよね?
胡麻油が香ばしくて美味しかった。」
ターセル・ラッシュが帰った後、クレスタが残って話を続けていた。
「気に入ってもらえて良かったです。
パリパリ、良いですよね。」
「中華系増えたから、店分けてもいいかもな。」
「1店舗で品数多くより、それぞれの店舗で特色を出すんだね。
有りだよ、それ採用!
聞いた感じスープの仕込みも時間かかりそうだし、店舗分けた方がお客さんの回転も良くなりそうだし。
その中華系って、そもそも何?」
「そうなるよね。
何だろ、ラーメンとか胡麻油とか辛い物系が合わさった感じかな。」
「成程。
では、店舗分けるので、それぞれに合ったメニュー提供もお願いしますね。」
「はーい!」
こんな簡単で良いのだろうか。
いつも思うけど、クレスタは即断即決。
上に立つ人はこうあるべきなのだろうか。
「話は変わるけど、教えてもらってた転移装置利用できるって通達来てた。
あれって、拓海さんじゃなくてもできちゃうの?」
「あれね。
魔力持ちの人が装置に乗ると、何処に行きたいか選択できて、そこまでの魔法補助がされる仕組み。
大概できるはず。
魔導士じゃなくても、冒険者でも魔力あれは利用出来るように組んだ。
今度から冒険者ギルドで魔導士引っ張りだこになるんじゃないかな。
そんなに移動する人も居ないのかな?」
「いやいや、それが本当なら凄く助かるよ。
米の買付だけじゃなく、大きい川とか湖まで直ぐ行けるなら魚も持ってこられそうだよね。」
「ほうほう、それは良いねぇ。
そう、聞きたかったんだけどさ、地方にしかない食材とか、観光名所みたいなのって知らない?」
「そうだなぁ。
さつま芋がよく取れるところとか、じゃが芋が有名なところとか、黒い麺があるところとか。
観光だと、白い花が沢山あるところとか、珍しい青い花あるところとかかな。
山のある地方だと、滝があるくらいかなぁ。
あまり珍しくもないかもね。」
「黒い麺て何ですか?」
「確か、蕎麦とか言ったかな。
小麦の麺とは違う感じで、食べ方は塩か何かつけてた気がする。」
「お蕎麦!食べたい!
たっくん行こうよ!」
「みさと落ち着け。
その黒い麺の情報も聞きたいけど、クレスタの用事が片付かないと。」
「あはは、いつもすみません拓海さん。
そうですね、明日にでも店舗と担当者の確保するので、出来てから中華系メニューを詳しく教えてもらえれば助かります。
私の方でも、蕎麦についてもう少し情報集めておきますね。」
「すみません、つい…
宜しくお願いします!
天婦羅も一緒に食べたいなぁ。」
「わかったよ、みさと。
楽しむためには、仕事もしようね。」
「了解!」
クレスタを送り届け、後片付けを一緒にする。
「お蕎麦かぁ。
お出汁とか醤油とか、そっちならあったかもね。
ちょっと楽しみ!」
「気が早いなあ。
ま、俺もざる蕎麦食べたい。
天婦羅の響きも久し振りに聞いたし。」
「ホントだよね。
年越し蕎麦とか食べられるかな?」
「いつが年越しか調べるところからだね。
こっちに来て大分経つとは思うけど。」
「あっち、大丈夫かな。」
「まあ、心配しても仕方ない。
天変地異でも起きない限り、大丈夫じゃないかな。
ベゼル、全然連絡ないし。」
「…そうだよね。」
「食生活が回復してきたから、寂しくなった?」
「たっくんといるから、それは無いかな。
毎日楽しいよ。
シビックも居るしね。」
「呼んだ?」
飛んできたところを、みさとが受け止める。
「君がいてよかったって言ってたんだよ。
来てくれてありがとね。」
「よくわかんないけど、えっへん!
僕は美味しいご飯食べられて満足だよ。」




