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ちょっとそこの異世界まで  作者: 三毛猫


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315/332

お試しにも程がある 314

 「やぁ、久し振り、アベンシス。

 ちょっといいかい?」

 牛の皮を購入後、その足で防具屋に駆け込むナディア。

 俺は一緒に連れて行かれた。

 みさとにはカムリから伝言してくれるそう。

 なるべく早く帰るとしよう。

 「おぅナディア、良く来たな。

 そちらさんは?」

 アベンシスは、如何にも職人という感じの、筋肉ガッチリ・高身長・強面な出で立ち。

 ナディアに対しては良い笑顔だったが、俺が付いてきたことで表情が険しくなった。

 「初めまして、拓海と言います。

 ナディアさんの付き添いです。」

 「アベンシスだ、宜しくな。

 で、何だよ、改まって。」

 俺には一言で終わり、直ぐにナディアの方を向く。

 「確か、魔獣の皮で防具作ってたろう?

 同じ工程を、この牛の皮で試して欲しいんだ。

 服や靴・鞄とかにできるんじゃないかってね。

 どうだい、できそうかい?」

 ナディアが持つ牛の皮を見つつ、応えるアベンシス。

 「牛の皮なんて薄そうじゃねぇか。

 まぁ、防具にしないなら薄くてもいいか。

 ゴホン、お前の頼みなら、やってみるよ。」

 そんなアベンシスに、満面の笑顔で応えるナディア。

 「頼もしいな、アベンシス、助かるよ。

 この拓海が情報提供してくれてさ、私も試したくなったんだ。

 皮については、君に頼んだら間違いないだろ?アベンシス。」

 ナディアに頼りにされ、アベンシスはデレデレしている。

 わかりやすいなぁ、この人。

 「勿論だ、任せてくれ。

 直ぐに取り掛かるから、見ていくかい?ナディア。」

 「うん、実際にこれがどうなるか確認したいな。

 オスメス分けてもらってきたから、作ってみて違いが出るかも教えてほしい。

 使えそうであれば、今後取引としてもお願いしたい。」

 「おぅ、わかった。

 ナディア、汚れるといけないから、少し下がっててくれ。」

 「なんだ水臭い、どうせなら近くで見せてくれよ。」

 アベンシスの気持ちに気付いているかは怪しいが、更に近づくナディア。

 「お、俺は良いが、じゃあ。」

 アベンシスは周りをキョロキョロ探して、大きめのエプロンを取り出す。

 「汚れないよう、この前掛けでもしといてくれ。

 俺が心配だ。」

 「いつも優しいな、アベンシス。

 ありがとう。」

 笑顔で返すナディアに、隠そうとしても隠せないほどデレデレしているアベンシス。

 このふたりの世界に、俺は必要だろうか。

 「俺いなくても大丈夫そうだし、帰るけどいいかな?ナディア。

 加工の工程には口出しできるほど知識ないし。」

 「そうかい?

 じゃあ、製作までできたら見せに行くよ。

 気長に待っててって、カムリにも伝えてくれるかい?」

 「了解。

 アベンシスさん、よろしくお願いしますね。」

 俺が帰るとわかると、最初の挨拶とは打って変わって、朗らかな返答のアベンシス。

 「おぅ、任せろ!」

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