お試しにも程がある 310
「なんだか盛り上がってましてたね、ナディアさんとたっくん。」
話が止まらなさそうなので、私はカムリさんと一緒にキッチンにお邪魔している。
「そうだねぇ、紹介してよかったよ。
あんな楽しそうにするなんて。」
「興味のあるものは、知りたくなるよね。
あ、もうちょっと色つけましょうか、カムリさん。」
カラメルを作っている鍋を火から外すのが早そうなので、もうちょっと頑張ってもらおう。
「カラメル作るの、気を抜くと焦げるからねぇ。
加減が難しいよ。
いつも早めに切り上げてたけど、もう少し色つけた方がいいかね。」
「プリンの場合の私の好みは、濃い方が好きかな。
プリンが優しい味だから、味変になるし。
いつものヤツは、カムリさんが食べてみて、どっちがいいかにした方がいいんじゃない?
クッキーとかミルクとかカムリさんの商品として出すんだし、それこそ「カムリ風味」になりますよ。
加減は面倒ですが、出来上がってしまえば美味しいんですよね。」
「そうだねぇ、食べ過ぎないようにしないとね。」
ふたりして笑いながら、プリンを作る。
型があれば何回でもできるから、気兼ねなく作れる。
「暑くなるようなら牛乳にはアイスの出番で、寒くなれば熱々チーズの出番になりますね、カムリさん。」
「上手く売れるといいね。」
ゼラチンとか寒天あれば、もっと色々作れるんだけどな。
ないものは仕方ないから、他に作れるものとすれば…
「そうそう、冷やしたコーンスープも美味しいですよ。
じゃがいもの冷製スープとか。」
「ほぅほぅ、後で教えとくれ。
今は…プリンが上手くできる方が大事だからさ。
聞いとくれよ、卵買いに行ったらさ、ターセルったら、「うちの卵が美味しいから、プリンも美味しくできるわよ」だって。
だからさ、「うちの牛乳が美味しいから美味しくできるよ」って言ってやったのさ。」
「その後2人で笑ってたんじゃないですか?
目に浮かびますよ、その光景。
両方美味しいから、出来上がり楽しみですね。」
「よくわかってるね、みさと。
そうなんだよ。
後で食べ比べしようってことになってるんだ。」
「やっぱり仲いいですよね。」
「そりゃ付き合い長いしね。」
会話も進むが、手もしっかり動かしている。
型にカラメルを入れてもらったところに、卵液を注いでいく。
勿論カラメルは型に入れてから冷やしてあるよ。
入れ過ぎないよう注意しないと、溢れてもったいないことになる。
沢山作り、オーブンで蒸し焼きにする。
手が空いたところで、片付け開始。
「そう言えば、動物の皮って服とか靴とかに使わないんですか?
牛の皮もいい材料だと思ってたんですけど。」
「牛の皮で服は作らないねぇ。
寧ろできるのかい?」
「手間はかかると思いますが、良い艶の牛革になるみたいですよ。
服も靴も、鞄もありですよね。」
「余すことなく使ってもらえるなら、万々歳だね。
食肉は隣で弟がやってるから、後で聞いてみようか。」
「弟さんいるんですか。
隣…あぁ、確か、隣と言うには離れた所に建物あるけど、あれかな?」
「よく知ってるね、みさと。
牛の放牧している反対側が、弟の建物さ。
食肉として預けるのは仕方ないんだけど、なるべく不安にさせないように、敷地内を歩かせて移動するんだ。」
「それは良いですね。
姉弟で役割分けてるのもいいですよね。」
和やかな会話の空間に、乱入者が現れた。
「カムリ、牛の皮使いたい。
何処にある?」




