お試しにも程がある 31
「美味しかった!
流石にお腹いっぱい。」
「あれだけ食べたらそうなるよ。
俺も大満足だ。」
「皆で作った甲斐があったね。
リュックにも入れたから、また食べられるからね。」
「明日も食べる?」
「明日は違うものにしようか。
流石に麺類続きは俺でもキツイかな。」
「あはは、連続で食べたら飽きちゃうよね。
早くお豆腐試して麻婆豆腐したいなぁ。」
「それいいね!
大豆は確保してあるし、試せるのか。
作り方は先生に聞くんでしょう?」
「もっちろん!
美味しく食べる為には作り方からだもんね。」
お腹いっぱいなのに、次の料理を考えるみさとは凄いな。
暫くご飯は考えたくない。
「ちょっと腹ごなしに運動したいな。
片付けてから散歩でも行く?」
「いいねぇ。
あ、折角だから、ターセルさんとラッシュさんにラーメン食べてもらいなぁ。」
「そんなこと言ってたね。
じゃあ、声かけてみようか。」
手分けして片付けてから、早速出掛けた。
それぞれのお宅訪問、明日の昼に試食会することを伝え、二人共来られるとのこと。
家に来てもらい、鶏ガラと豚骨両方を味見してもらう。
約束を取付けてから、暫く道なりに散歩。
緑豊かな森に入ると、池の周りに花畑がある。
「こんな綺麗なとこあるんだ、いいねぇ。」
「俺も知らなかったよ。
そういえば、観光的なもの何もしてないよね。
何があるかも知らないし。」
「確かに。
ガイドブックみたいなのあるのかなぁ?」
「本屋にでも行ってみる?」
「クレスタさんに聞くのはどうかな?
色んなとこ行ってそうじゃない?」
「そんなこと聞くために行くのは、忙しそうだしどうかな。」
「じゃあ、明日の試食会に呼ぶのは?
メニューに取り入れるかは食べてみないとわからないだろうし。
仕入れの相談も一緒に出来ちゃうよ。」
「みさと、よく思いつくなぁ。
それは有りだな。
ちょっと行ってみるか。」
声をかけに、転移する。
クレスタの家に行くが、本店に居るとのことで、歩いて移動。
家から近い場所に、事務所として構えているらしい。
着いてみると、家よりかなり大きい建物。
魔法協会程ではないが、冒険者ギルド並みに大きい。
受付に声をかけ、暫くして中に案内される。
「やぁやぁ拓海さん、みさとさん。
お待たせして申し訳ない。
こっちに来るのは初めてだっけ?
今日はどうしたの?」
「クレスタ、急に来て悪かったな。
実は、新しい料理の試食会を、明日家でするからどうかなと思って誘いに来た。
材料提供してくれた人に、味見がてら振る舞うんだ。
興味あればどうだい?」
「新メニューになりそうってことかな?
しかも仕入先も紹介してくれると。
勿論行くよ、楽しみだね。」
「お昼前を予定してる。
ここからだと遠い、街外れになるから、良かったら迎えに来るよ。」
「それは是非ともお願いするよ。
新商品開発、大分早いね?」
「作るのに手間かかるから、慣れも必要かなと思ってるので、早めにね。
味噌や醤油みたいな期間かかるわけじゃないけど、胡麻油的な面倒さかな。」
「成程。
検証させていただきますよ。」
「明日は完成品だけ出すから、細かい部分は食べた後でね。」
「わかった、楽しみにしてるよ。」
「そうそう、毎回予告もなしに押しかけるの申し訳ないから、連絡手段に水晶置いてくよ。」
「水晶?
冷蔵庫にも使ってるやつかい?」
「そうだよ。
便利なんだよね、あれ。
離れていても通話できるようにしてあるんだ。」
「なんだいそれ!
売れそうな予感するけど?」
「あはは、作れればね。
レジアスと作ったから、他の人が作れるかはわからない。」
「え、君レジアス様と仲良いの?
カレーの時も言ってたよね。」
「うん、伝手というかなんというか、仲良いよ。
魔導具の話は良くする。」
「そうなんだ!
作っていいか、売っていいかもお伺いたてないとだな。
教えてくれて有難う。」
「そんな凄いことなの?」
「当たり前じゃないか!
魔法省のレジアス長官だよ?
ていうか、そんな大事な物貰って良いの?」
「予備もあるし、大丈夫でしょ。
なくさないようにね。」
「わかった、心して扱うよ。」
襟元に留めておける形状の物を渡して、通話できるかお互い試す。
納得のクレスタに挨拶して、帰ることを告げる。
帰りがてら、魔法協会に顔を出す。
壁には、転移魔法の周知の為のポスターが貼ってある。
使い方の説明と、わからない場合は聞くようにとの記載だ。
こういうのはアイシス得意そう。
理路整然・わかりやすく簡潔に。
しかも、レジアス検証済とまでしっかりある。
レジアスが主導してるから、張り切っている姿が目に浮かぶ。
聞くと、冒険者ギルドにも同じものを貼っているらしい。
研修行っている間に、痒いところに手が届く感じの仕事ぶり。
出来る人は仕事も早いな。
いや、レジアスが居なかったから早かったのかな?
ポスターは、来た人は立ち止まって見ている。
数人でポスター前で話していた内容が聞こえた。
「なぁ、これって、移動魔法出来るってこと?」
「なんか装置があって魔力流すと利用出来るらしいよ。」
「俺、そんな高等魔法出来ないんだけど。」
「誰でもって書いてあるし、何か補助されるんじゃない?」
「仕事依頼が、旅の護衛にするか転移するかになるのかな。」
「依頼完了、早くなるな。」
「安全に行けるのは良いんじゃないか?
ポーションとか余分に用意しなくて済むし。」
「依頼料、どうなるんだろうね。」
…興味を持ってもらえたようで、何よりだ。
使ってもらえれば、設置した甲斐がある。
今後の運用に期待かな。
魔法協会を出て、みさとと顔を見合わせる。
「さて、明日の準備に取り掛かりますか。」
「材料はまだあるから、追加で仕込みするね。」
「中華が出来るとはね。
回鍋肉とか青椒肉絲とかも出来るの?」
「なんちゃってになるけど、似てるのは出来るよ。」
「白米もあるし、食べたいな。」
「今日のお夕飯にしよっか。」
「僕も食べる!」