お試しにも程がある 298
「ちょ、おわ、ぎゃあ!」
シビックが速度を上げ宙返りや横回転もしだしたので、レジアスは驚きの連続。
「あははは、たーのしー!」
みさとは慣れたもので、笑顔で楽しんでいる。
下から見ていた俺は、レジアスだけ心配になった。
最初の体験があれだと、大変じゃなかろうかと。
待っている方からすると短い間という感覚だが、端まで行って折り返ししてきたようで、シビックの姿が大きくなってきた。
静かに着地し、止まったところで魔法解除。
序に魔法で2人とも降ろした。
「おかえり、どうだった?」
みさとは元気いっぱい、全身で楽しかったことを表現する。
「すっごい楽しかった!気持ちよかった!
ね、レジアスさん。」
一方レジアスは、降ろした途端座り込んだ。
「凄いのは凄かったぞぃ。
次はまぁ、暫く遠慮しよう。」
あれじゃそうなるよね。
「なかなか無いから、いい経験でことで、ね。
皆、お疲れ様でした。
コーヒーでも淹れるから、少し休もうか。」
「僕、もうちょっと遊んでくるね。
おやつ取っといてよ!」
折角大きくなったからなのか、もう飛んでいってしまった。
徒広い空間から扉ひとつ隔てて、リビングに繋がる。
俺とみさとは慣れているから普通だけど、レジアスにはホッとする空間に見えたようだ。
「家に入った感じで、安心するのぅ。」
「さっきのところも家の一部なんだけどな。
さぁさぁ座って、レジアス。
みさとも座ってていいよ。」
「ありがとう、たっくん。
おやつだけ見繕っとくね。」
ソファの方に座らせてから、俺はキッチンに向かう。
いつも通りお湯を沸かし、コーヒーを準備。
カップ4つと淹れたてのコーヒー、牛乳も出して、テーブルに運ぶ。
みさとはレジアスと何を出そうか話している。
レジアスの好きなチーズケーキと、クッキー・試作したチョコレートも出した。
チョコレートの塊を指で摘み、持ち上げて眺めるレジアス。
「これがあの液体なのか?
こんな形にもなるとは、不思議じゃのう。」
「レジアスさん、あんまり長く持ってると、溶けて指に付きますよ。」
「何、どれどれ。」
塊は口に入れて、指を見てみる。
「おぉ、本当じゃ、指に付いとる。
この塊も美味しいのぅ。」
口の中のチョコレートを堪能してから、指も舐めている。
「お手拭きどうぞ。」
みさとは、濡らしてあるタオルを差し出す。
「みさと、助かる。
早く販売してくれんかのぅ。」
そう言いつつ、レジアスはチョコレートをもうひとつ口に運ぶ。
「チョコとコーヒーも合うよ、レジアス。
お試しあれ。」
レジアスの好みはブラック・みさととシビックは牛乳と半々・俺は2:1でコーヒー多め。
目の前に置かれたコーヒーを、チョコレートで満たした口に含むレジアス。
「ふむ、これはこれは、素晴らしい組合せじゃ。
以前出してもらったお茶も良いが、コーヒーはまた格別じゃ。」
「気に入ったようで、良かった。」
俺も、チョコレートとコーヒーを楽しむ。
「レジアスさん、チョコレートお土産で持って帰ります?」
「本当かみさと、勿論頂こう。
私も増える箱に入れて楽しむかのぅ。」
レジアスは、ニヤニヤしつつチーズケーキにも手を伸ばす。
「うちで作るのはビターな物ばかりだから、販売されだすと甘いのが多いかもね。」
「それはそれで違いを楽しめば良いのではないか?
寧ろ、世間に出廻らないビターな物を楽しめるのは優越感じゃのぅ。
家の者にも食べさせてやらんと。」
なんだかんだ、レジアスは家人に優しい。
「いくつかの種類試してるから、甘さ違うパターンで渡すよ。」
ナビに作ってもらったものを、それぞれ出す。
「おぉ、有難い!」
「何か、羽根ペンより嬉しそうだね、レジアス。」
俺のひとことに、みさとはくすくす笑っている。
「数が増えると、楽しめる回数増えますもんね。
増やしてお家の皆さんで楽しんでくださいね。」




