お試しにも程がある 296
「流石にこれは商品化せんじゃろ?」
怪訝な顔で聞いてくるレジアス。
「しないさ。
レジアスにはプレゼントするよ。
確かに、仕事で使えたら楽だろうしね。
運用は任せる。」
「助かる。
会議録は、書記官の書き漏らしや他の者に改竄されてもわからんから、私の方で予備としてまずは使ってみようかのぅ。
なに、他の者に種明かしは暫くせんよ。」
俺を安心させるかのように、利用方法を語ってくれる。
「信用してるよ、レジアス。
改竄されていてもほら、魔法の痕跡辿ればいいじゃん?」
「それは私も研究するとしよう。
まさかそんなことでバレるとは、相手も思わんじゃろ。」
「使わなくて済むことを願うけどね。」
話は一段落、お互いお茶を口にする。
「ところでな、その、チョコレートが出る町おこしとは、いつ頃何処でされるのかのぅ?
またあの店でも出すかのぅ。」
とても気になっていたようで、レジアスは羽根ペンより熱心に聞いてくる。
「あれね。
みさと、聞いてる?」
「ううん、前回会った時はこれからとしか聞いてないなぁ。」
「結構日数経っていると思うんだけど。
本人に聞こうか。」
「そうだね、直接行ってみる?」
「みさと、相談される率100%だと思うけど、行くかい?」
「あはは、力になれるなら行っても良いかな。
もう確定で進めてるかもよ、クレスタさん。」
楽観的なみさとと、心配性の俺。
レジアスは、お茶を飲みつつ、シビックにお菓子をあげている。
「お主の主人達は、仲がいいのぅ。」
言葉がわかるようになり、やっと懐いて来たようで、嬉しそうに話しかけるレジアス。
「そうだね、いつも楽しいよ!
このお菓子、美味しいね。」
「そうかそうか、みさとに教わった料理法で作ったと言っておったぞ。
早くチョコレートも取り入れて欲しいのぅ。」
「美味しいよね、あれ。
僕も好きだよ。」
「お主の舌も肥えてるのぅ。
毎日みさとの料理を食べていれば、そうなるな。」
「拓海がね、僕ちょっと大きくなったんじゃないかって、見てくれたんだ。
そしたら本当に大きくなってて、部屋も大きくしてもらったんだよ!」
「そうかそうか、部屋を大きく…ん?
そんなに大きくなるのか?
おい拓海、どういうことじゃ?」
いきなり呼ばれて、俺も何故かみさともレジアスの方を向く。
「どしたのさ、レジアス。」
「この可愛らしいドラゴンが大きくなったから、部屋も大きくしてもらったと聞いたぞ。
そんなに大きいのか?」
「そうだよ、今は小さいだけだし。
言ってなかったっけ?」
「小さいドラゴンの方が確かに珍しいが、そんなに大きいのか?」
「うん、まだまだ成長期みたいだしね。
な、シビック。」
俺の言葉に、小さい姿で胸を張るシビック。
吹き出しつけるとしたら、「どやぁ!」って感じ。
「そんなに大きくなったの、シビック?」
「そうだよみさと、僕成長してるって。
昨日拓海に部屋を大きくしてもらったんだ。」
「良かったねぇ。
…聞いてないんですけど?」
シビックには甘い顔をしているが、俺にはジト目で問いただすみさと。
「えっと、ほら、昨日みさとが寝てからの話だし。
言うの忘れてたかな、あはは。
そうだ、今から見に行こうか、シビックの部屋。」




