お試しにも程がある 294
「お、書けてる書けてる。」
コーヒータイムを一段落させ、羽根ペンの様子を見る。
まだ止まるように指示してないから、俺の呟いた独り言まで書いている。
もう良いぞ、お疲れ様。
口には出さず、羽根ペンに向かって言ったつもりで考えたら、書くのが止まった。
「知らないうちに沢山喋ってたな。」
みさとが出してくれた白紙の残りは、かなり少なかった。
どうやっていたかまでは見ていないが、山積みだった紙は書き終わったものを移動させ、新たな用紙に続いている。
綺麗に誰が喋ったかをわかるようにも書かれている。
俺が見ていたものを、隣からみさとも覗く。
「頑張ったね、羽根ペン。
日本語に見えるけど、良いのかな?」
「確か俺達、どんな言葉でもわかるようにしてもらってた筈。
あとでレジアスにでも見てもらうか。
序に、テストもしてもらおう。」
実証はできたので、あとは増やすのみ。
他の羽根ペンと区別できるように、羽の一部分に色を付けた。
「よし、これで増えても判別つくな。
あとは紙か。
ベゼルは、丸めた羊皮紙みたいの使ってた気がするけど、あれも延々使えるやつかな。」
「それってさ、何処に何が書いてあるか分かんなくなるやつじゃない?」
「それもそうだ。
みさとが貰ったノートなら別だろうけど、使う時は普通に紙を多めに用意してもらうか。」
そんな話の中、疲れが出たのかみさとは大欠伸。
「ちょっと疲れたかも。
お昼寝しようかな。」
「もう外暗いから、既に夜だね。
ベッドで寝なよみさと、シビックとは遊んどくから。」
「うん、よろしくね…」
ほてほてと寝室に向かうが、そのまま寝そうである。
念の為寝室まで支えていってベッドの上に転がるところまで確認、毛布もかけてあげた。
「色々あったからね、体じゃなく気が疲れたかもね。」
既に寝息を立てているみさとの頭を撫でてから、俺は部屋を出る。
リビングに戻り、シビックに話しかける。
「シビックもお疲れ様だな。
オデッセイ様喜んでたね。」
「今日は楽しかったよ!
またオデッセイ様のとこに遊びに行こうね。」
嬉しそうに話すシビック。
座ってはいるが、尻尾は正直だ。
「そのうちな。
時間的には晩ご飯だが、何かいるか?
ウエストポーチから出すしかできないけど。」
「こんな時は、カレーかな。
唐揚げとメンチカツも付けてね!」
「おぅ、ポテトもサービスしてやる。」
「拓海、わかってるぅ!」
ウエストポーチから、カレーとご飯の鍋・おかず類と1つずつ取出す。
「作っといてもらってよかったな。
食べたい時に食べられるって、助かるし。」
「みさとの料理は美味しいからね、いつでも入るよ!」
「ま、程々にな。」
元の大きさになったら、中の物殆ど食べ尽くされそうだが。
「そう言えばお前さん、最初の頃より成長してないか?
大きさは自由になるんだろ?
最初の小ささよりちょっと大きくなった気がする。」
「元に戻ってみようか?」
「わかるかどうかにもなるけど、自分の部屋でお願いします。
後片付けを考えたくない。」
「じゃあ食べる前にちゃっちゃと確認しよう。」
飛ぶのが面倒なのか、シビックは俺の肩の上に乗る。
言い出したのは俺だしな、観念してシビックの部屋へと向かった。
部屋に入り、シビックは元の大きさに戻る。久し振りに威厳のある姿を見た。
「下から見上げると、大きいなとしか思わないな。
シビック、自分で感覚的に分かるか?」
「ちょっと部屋が狭く感じるけど、気の所為かな?」
「そんなデカくなったんかい!
かなり余裕を持って広さ設定したんだけどな。」
「育ち盛りだし!
みさとのご飯は美味しいし、適度に運動もできるし、成長するには良い環境だよね。」
俺は浮遊して色々な角度から眺める。
「確かに狭そうだ。
部屋はもう少し広くしとくぞ。」




