お試しにも程がある 293
「はぁ、やっと一段落だな。」
レジアスも家に戻り、家族だけの静かな空間になった。
「お疲れ様、たっくん。
シビックもね。」
「僕は楽しかったよ!
オデッセイ様とも沢山お話したし。」
ぐったりした俺とは対照に、シビックは上機嫌。
オデッセイとアスコットにも念話したし、もう今日はやることないかな。
(父さん、俺だけど、届いてるかな?)
聡太からの念話だ。
(おぅ、届いてるぞ、聡太。
これで何かあったら直ぐ行けるな。)
(良かった!
実はさ、起きたら念話ってずっと思ってて、中々寝付けなくて寝坊してさ。
遅刻するかと思ったよ。)
(実際しなかったのか?)
(うん。
こっそり転移しちゃった。
便利だよね。)
(他の人に見つからないように、程々にな。)
(うん。
じゃ、仕事してくるね。)
(頑張れよ。)
これでもうひとつも片が付いた。
「みさと、聡太からの念話来たよ。
何かあったら向こうに行けるな。」
「おぉ、良かった。
やっぱり、これのおかげかな?」
みさとは、ベンダントを持ち上げる。
水晶と王冠の飾りを、掌に載せて改めて眺める。
「そうだろうね。
凄いもの貰ったなぁ。
勝手に複製して使ってるけど、それでも効果あるし。」
「オデッセイ様のだからね!」
自分のことのように、シビックは胸を張る。
「そうだな、凄い人と関わってんだな、俺達。」
今更ながらに感じてしまう。
現在と過去の行き来ができたのも、このおかげだしね。
微調整はナビにお任せってことで。
そう言えば、羽根ペンって前にも見たな。
「確か、聡太が羽根ペン貰ってたな。
あれを使ってたのかな、ベゼルは。」
「どしたの、羽根ペン?
あぁ、作ろっかって言ってたやつね。
確かリュックに入れた筈…あった、これこれ。」
みさとはリュックをガサゴソして、羽根ペンを取出す。
受取った俺は、利用方法を思い出す。
「確か、自分で考えたことを自動筆記だった筈。
ベゼルが使ってた物の方が高性能なのかな。」
「これに機能追加させるか、新しいのを作るかなの?」
「そうだな。
まぁ、羽根ペン作るのは考えてないし、増えてるだろうから機能追加で良いかな。
取敢えず試してみよう。」
羽根ペン、頑張れ!とだけ念じて、みさとが出してくれた沢山の紙の上に置く。
そして、これからの会話を書き取るよう指示。
「さて、お喋りしようか。
書き取りできるか実践だ。」
「なんか、お喋りしようと意気込むと何話していいかわかんないね。」
「あはは、そう固くならないで。
コーヒーでも淹れようか。
お茶菓子はみさとに任せるね。」
「はーい!」
「僕ね、シュークリーム!
チーズケーキも食べたい!」
「いいよ、両方出そうね。
クッキーとアーモンドフロランタンも出そうかな。」
リュックから色々出しているみさとの手が、ふと止まった。
「なんか、ずっとおやつばっかり食べてる気がするけど、ご飯にしなくていいの?」
まじまじと俺を見るみさと。
「そこな。
正直、時間がよくわかんないんだよ。
腹具合で言えば、おやつでも良いかなと。」
「僕は何時でもおやつもご飯も食べられるよ!」




