お試しにも程がある 29
「レジアス、来たよ。」
「拓海か、よく来てくれた。
来る前に連絡するとか言ってなかったかのぅ。」
「忘れてた、ごめんごめん。」
「まぁ丁度良かった。
今は休憩ということで、アイシスはしばらく戻らんじゃろう。」
「迷子か…出来る人なのに、そこは変わらないんだね。」
「そこは個性じゃ、問題ない。
では例の件じゃが、これに出来るかのぅ。」
レジアスは、袖ポケットからモノクル眼鏡を出した。
形は同じだが、フレームと鎖が以前とは違って見えた。
「何か高そうだね、これ。
いいの?」
「勿論じゃ。
寧ろ他のものと区別をつけるためにも、違いがわからんといかんからな。」
「じゃあ、試してみるね。」
魔力視えるようになれーと念じるだけ。見た目は何も変わらない。
「出来たと思うけど。
俺とレジアスじゃ、試しようがないね。」
「どれどれ。
ふむ、確かに何も変わらんのぅ。
アイシス戻ったら、確認してもらうとしよう。」
「何か、できるはずなのに不便だね。」
「そんなもんじゃよ。
なら、アイテム鑑定でもしてみるかのぅ。」
いいなぁアイテム鑑定。
俺もできるかな。
『その機能は利用可能です。』
何!?アイテム鑑定出来るのか。
どれどれ…出来たわ。
ステータスと同じように、アイテムの情報が視える。
「レジアスには、魔道具で嘘つけないね。」
「何じゃ、騙す気だったのか?」
「そんなつもりは無いよ。
鑑定できるのは便利だなと思って。」
「どうせお主も出来るんじゃろ?」
「レジアスができるの見て、できるようになった。」
「これも想像力じゃの。」
「ほんとだね。」
あっはっはと笑い合う俺達。
「ところでのぅ、その肩のドラゴンじゃが…以前より強くなっていないかのぅ。
気の所為なら良いんじゃが。」
「へ、コイツ?
どうなの、シビック。」
「うん、強くなってると思う。
すんごい調子良いよ!」
「何したの?」
「何も?」
「何かあるだろ?」
「知らないよ!
最近してるのは、遊んで、ご飯食べて、よく寝る!」
「腕白坊主の生活だなぁ。
俺もこっち来てから調子良いけど、何かあるのかな。」
「今、会話聞こえたぞぃ。
本当に聞こえるとは…」
「あ、エルフの言語わかるようにしたけど、その影響かな?」
「そうらしいのぅ。
お主、やりすぎた様じゃよ。
全ての言語がわかることになっとる。」
「俺達はベゼルにそう付けてもらったからなぁ。
普通だと思ってた。
言語、限定したほうがいいかな?」
「そうじゃのぅ。
私はこのままにしてほしいが、研修生達はエルフ語限定にした方が良いのぅ。
出来すぎるのも困るじゃろうて。」
「成程ね。
次に集まる時に、やってみようか。
レジアス、出来そうじゃない?」
「失敗すると戻れんからな、後腐れなく修正してくれんか。」
「わかった。
その時はまた呼んでね。」
「うむ。
環境か、食事か、生物的な体質か。
ドラゴンの成長か、まだまだ謎が多いのぅ。」
「味方だし、問題無いんじゃない?」
「それもそうじゃな。
そもそも勝てる気がせんよ。」
「お前そんなに強いのか?
気にしたこともなかったけど。」
「そこそこ強いんじゃない?
ほら、僕ドラゴンだし!」
「そういうことにしとくか。
みさとの用心棒助かってるし。」
「えっへん!」
「お主ら…みさとにそのドラゴンじゃ、勝てるものおらんじゃろうて。
過剰戦力じゃ。」
「いやいや、怪我されたら困るし。
攫われても大変じゃん!」
「そうだよ、みさとの美味しいご飯食べられないの、僕困るよ!」
「すっかり餌付けされとるのぅ。」
「スプーンとフォークも上手になったしな。
意外に器用だ。」
「そんなこともさせとるのか。
全てのドラゴンがそんなに器用なのか?」
「ご飯は美味しく食べたいからね。
みさとの料理は、熱々で美味しいし、一口で食べるのは勿体無いからさ。」
「大事に食べないとな。
口拭かれるのも面倒なんだろう?」
「そう、あれやっと慣れだけど、しなくてもいいじゃんて今でも思ってるよ。」
「あのね。
服とか髪に汚れが付くのは困るんだよ。
食後必ず水洗いする?」
「それもめんどくさいなぁ。」
「出来ない時もあるしね。
ご飯やおやつ我慢するよりマシだろ。」
「そこは譲れないよね。
みさとは美味しそうなもの買うと直ぐくれるもん。」
「まるで子供じゃな。」
「うちの家族だよ。」
「えっへん!」