お試しにも程がある 285
「腰巾着、物理的に腰低くなってるね。」
ベゼルが視せてくれている映像で、天井は高そうな部屋なのに、腰巾着は膝を曲げて低姿勢になっている。
俺の呟きに、レジアスが解説。
「あれはな、エスティマがあまり身長高くないので、上から見下さないように言われてるんじゃよ、おそらく。」
「見栄っ張り?」
「貴族なんてそんなもんじゃよ、全く。」
そんなことには興味ないようで、ベゼルは次を催促する。
「ねぇ、そろそろ記憶遡っていいかな?」
「ちょっと待ってベゼル、2人の話の内容聞いてるから。」
「あの大物を今ここで消しちゃえばいいじゃん。」
突拍子もないことを言い出すベゼル。
俺は、2人の会話どころじゃなくなってきた。
「急にいなくなったら、大騒ぎでしょ?
駄目駄目!」
「大丈夫だよ1人くらい。
あそこの2人でも良いけど。」
何でもできるから、発想が怖い。
「ベゼル、背景も探らないと、後から同じことされると困るから慎重にやってるんだよ。」
「人間もそうだけどさ、結果同じこと繰り返してるよね。
人が変わるだけで。」
実際に見ているから知ってるんだろうけど、痛いところを突いてくる。
歴史は繰り返すか。
「それはそうなんだろうけどさ。
直近で同じこと繰り返さないようにしたいんだよ。
もうちょっとだけ協力してほしいな。」
「慎重過ぎるよね、拓海は。」
そんな話をしている間に、腰巾着が部屋から退出。
「話の中では、シグマの名前出なかったねぇ。」
「そこは慎重になっとるんじゃないかのぅ。」
「ひとりになると本性は出るもんだね。
全てエルフ達に罪を被せると言ってる。」
ちゃんと話を聞いていたディグニティとレジアスは、内容について話している。
聞いててくれて、ありがとう。
「もう新たな展開はなさそうか。
ではベゼル先生、宜しくお願いします。」
「その言葉を待ってたよ!
えっと、別のエルフに会うところでいいんだよね?
記憶探るよ。」
もう映像が動き出した。
何回か会っていることは確認できて、最初は別の人間から紹介されていた。
「さて、何処に行きたい?」
ニコニコしながら、ベゼルは聞いてくる。
「今回の企みを最初に話してたところかな?」
「こ奴らの最初の出会いがなければいいのではないかのぅ。」
「そもそもさ、シグマがこっちに来なければ良かったよね。」
「じゃあ、出会うところより少し前にする?
その引き合わせした人とどういう関係・約束してたかは分からないけど。」
俺は、レジアスとディグニティの意見をまとめてみた。
「そうだね、会わなければ発生しない事件かも。
その時点から、シグマを国に連れ戻すことはできるかな?」
良かった、すぐに殺すと言われたらどうしようと思うからな。
ベゼルの方を向くと、うんうんと頷く姿が見える。
「連れて帰れそうだよ。
じゃ、その流れで行こうか。」
「それはありがたい。
自国に転移すればいいんだね、フフフ。」




