お試しにも程がある 284
「着いたよ。
早速覗き見しよう。」
何故か楽しそうなベゼル。
あっという間の出来事だったが、既に映像が共有されている。
ナビさん、さっきの時間移動の魔法できそう?
『問題ありません。
マスターの望む時間に移動することができます。』
ありがとう、頼りにしてます!
そうとなれば、映像に集中しないとね。
視えているのは、変身前の腰巾着とトライトンだ。
「ベゼル、音声までは無理なの?」
「我儘だなぁ、ちょっと待ってて。」
注文するとすぐ対応してくれる、便利…ではない、何でもできるスグレモノ!
2頭身のロボットでは、決してない。
未来の道具じゃなくても、魔法で対応できるからね。
そんなこと考えている間に、音声も聞こえてきた。
トライトンともうひとつは、少し高めの声。
話からすると、お互い別の人物から時間指定でここに行くようにと言われて、何をするかを聞かされているようだ。
これなら確かに、お互いがその上の人物までは知らない訳だ。
そうなると、やはりあの腰巾着の記憶を確認するしかないか。
変身させるところも確認できて、2人は別れるようだ。
一緒にいるところを見られたくないのか、時間をずらして別々の方向に向かった。
変身した腰巾着は、以前捕まったお目付け役のところに行くみたいだ。
待たせてあった馬車に乗り、移動を開始。
「今ならいいんじゃない?
覗いてみようか。」
やっぱり楽しそうなベゼルは、嬉々として行動してくれる。
腰巾着が今考えてることとしては、上から言われた通りお目付け役を上手く言いくるめること。
上手くやらないと、大変な目に合うのか。
腰巾着も楽じゃないな。
名前と顔も考えたようで、誰からの命令かも確認できた。
レジアスの方を見ると、思い当たる人物なのか、やれやれといった顔をしている。
「あれは、やはり王弟派の貴族・エスティマじゃな。
あれが関わるとなると、しっかりとした証拠がないと追い詰められんぞ。」
「言い逃れがどうにでもなる、権力持ってる人ってこと?レジアス。」
「その通りじゃ。
想像通りというかなんというか。
問題は、その上・王弟も噛んでいるかじゃな。」
「それは…問題だね。」
レジアスと俺の会話を聞いて、ベゼルが問いかける。
「次、誰覗く?」
「そのエスティマという人とシグマとの関係性も確認したいねぇ、私としては。」
俺が応える前に、ディグニティが呟く。
「そこも大事だね。」
ディグニティの意見に、大いに同意する俺。
「じゃあ、腰巾着が大物と会ってたところまで飛んで、大物の方を覗こうか。」
やはり嬉しそうなベゼル。
「その方が早そうじゃのぅ。」
「よし、エスティマと腰巾着が会ってたところまで戻ろう。
ベゼル、宜しくね。」
「お任せ!」
指をパチンと鳴らすと、もう移動していた。
「仕事早いね、ベゼル。」
「だって、面白そうじゃん?
僕見てるだけだしね。」
何とも暢気な回答。
まぁ、そこに俺達は助けられてるけど。
「ありがとう。
もう少し付き合ってな。」
「拓海こそ、終わったら僕の方を手伝ってよね。」
「力になれると良いんだけど。あんまり期待しないでよ。」
「拓海なら大丈夫だって。
寧ろどんな意見を出してくれるか楽しみだよ。」
クスクス笑うベゼル。
まぁ、ギブアンドテイクってとこだよね。
今は自分達の問題に集中しないと。
エスティマの住居に、腰巾着が訪問、門番に通してもらったところは確認した。
お気楽ベゼルは、ウキウキと対象物を探す。
「さてさて、大物と腰巾着は何処かなぁ?」




