お試しにも程がある 281
「もうお腹いっぱい、沢山食べたなぁ。」
ベゼルは笑顔で、お腹を擦る。
レジアスとディグニティは、サンドイッチとポテトフライで口直し。
オデッセイはシビックとアスコットと談笑しながら、お茶を飲んでいる。
エリシオンは、楽しそうなオデッセイを見て微笑んでいる。
ジェイドはポテトチップを抱えて食べている。
みさとは、お茶のお代わりを用意する。
皆思い思いに、ゆったりとした時間が過ぎていく。
俺は、思い切って声をかけた。
「オデッセイ様、ご歓談中すみません。
俺達、まだやらないといけないことが残ってまして。
そろそろお暇させて頂いても宜しいでしょうか。」
「人間、オデッセイ様に失礼ですよ。
弁えなさい。」
オデッセイより先に、エリシオンが反応する。
「エリシオン、大丈夫ですよ。
拓海、楽しい時間でした。
みさとも一緒に行くのでしょう?
そちらのお二方もでしょうか。
元の時間に送りますよ。」
ん?元の時間に?
「えっと、来た時まで戻れるってことですか?」
「えぇ、そうです。
もう少し前がいいですか?」
「オデッセイ様、僕が連れてきたから、僕が送りますよ!
ね、拓海。」
オデッセイが魔法使う前に、ベゼルが慌てて立候補する。
「そうですか、では宜しく頼みますね、ベゼル。」
「はい!
じゃあ行こうか。」
そう言うなり、俺・みさと・レジアス・ディグニティの4人を連れて、ベゼルが移動する。
ディグニティの家に戻ってきた。
「ふぅ、危ない危ない。
一応、僕達が来た時点より少し前に戻ってるよ。
ところでさ拓海、僕のお願いも聞いてくれる?」
「さっき言ってた、良い考えがあるかってやつ?」
「そうそう!
ちょっとだけ考えてよ。」
屈託のない笑顔で、何でもないことのようにお願いしてくる。
「もうちょっと後でも良いかな?
俺達、王妃様を殺そうとした黒幕追いたいんだよ。」
黒幕という響きに惹かれたのか、ベゼルは身を乗り出す。
「黒幕?それはそれで面白そうだね。
良いよ、何からしたいの?」
「魔法の痕跡を追う方法を練習してたんだ。
それが上手く行けば、すぐ終わる。」
「なんだ、そんなことか。
拓海ならできるでしょ」
ベゼルは表情がわかりやすい。
さっさと終わらせなよと言いたげな顔だ。
「そんな簡単に言うなよ。
やっと痕跡の見分け方が分かっただけなんだから。」
「時間を遡れば良いんでしょ?
拓海ならできるよ、良いもの持ってるしね。」
ベゼルは、俺の腕に嵌めてある王冠を指した。
「これ、そんな凄いものなの?」
「当たり前じゃん。
オデッセイ様直々の贈り物だよ?
やりたいと念じれば、普通の人間ではできないことでもできるよ。」
俺の質問に、自信満々に応えるベゼル。
俺達のやり取りを聞いていたレジアスとディグニティは、やれやれという感じで会話する。
「拓海に任せておけば、解決じゃな。」
「私も魔法の痕跡だけじゃなく、実際に時間を遡れる方法知りたいよ。」
「うむ、それは私もできるようになりたいのぅ。
特別と言われては難しいんじゃろうが。」
言いたい放題である。
他人事だと思って、もう!
「ねぇベゼル、実際にさ、悪巧みしてる現場まで戻れるの?」
「そうだなぁ、本人を見るか触るかすれば、何とかなるんじゃない?
何もない状況からは、難しいかな。」
「そんなことでいいの?
ディグニティ、さっきの変化してた人物に会えるかな。」
「構わないよ、一緒に行こうか。」




