お試しにも程がある 279
「食べたいものをフォークに刺して、流れてるチョコにくぐらせてから食べるんですよ。」
以前にみさとがやったことを、ベゼルが行っている。
実演し、食べるところまで同じだ。
反対側では、アスコットが皿とフォークをオデッセイに渡している。
エリシオンは、オデッセイの服が汚れないように、膝上に布をかける。
「ありがとう、皆。
どれから試そうかしら。」
「バナナが美味しいですよ。」
「苺が良いんじゃないかな。」
「チーズケーキもお勧めです。」
「ドーナツが良いですよ!」
オデッセイのひと言に、アスコット・ジェイド・エリシオン・ベゼルが、一斉に意見を述べる。
微笑みながらも困ったようで、シビックに声を掛けるオデッセイ。
「あなたはどれが好きなの、シビック。」
「どれも美味しいけど、食べやすいのはバナナか苺かなぁ。
慣れてきたら、ドーナツもチーズケーキもパンケーキも美味しいし、クッキーにかけても美味しいよ。」
「まぁ、食いしんぼさんね。
じゃあ、バナナから頂きましょう。」
綺麗な所作で、フォークでバナナを刺し、チョコにくぐらせ皿に受けてから口に運ぶ。
オデッセイが咀嚼するのを、皆見ている。
「これは美味しいですね。
次も試そうかしら。
あら、皆も一緒に食べましょう。」
「「はい!」」
全員が席に着き、好きなものを選び出す。
みさとは何か思い出したようで、リュックをガサゴソする。
取出したのは生クリーム。
器に小分けにして、スプーンを添える。
「これは、生クリーム?」
アスコットがみさとに問うと、肯定したのはシビック。
「生クリームだぁ、チョコ付けた後に載せていいの?」
「その通りだよ、シビック。
皆さんも、お好みで付けてみてください。
スプーンで取れば、付けやすいと思いまして。」
みさとは、シビックだけでなく皆に声をかける。
最初に実践したのは、ベゼル。
パンケーキをチョコにくぐらせ、そこに生クリームを載せる。
大きな口でひと口で頬張る。
「これは良い、みさと、お代わりある?」
「沢山あるから、遠慮なくどーぞ。」
それを皮切りに、皆試してみる。
アスコットはバナナ・ジェイドはパンケーキ・エリシオンはチーズケーキ・オデッセイは苺で、それぞれ試す。
「これは良いね、ケーキみたいになったよ、みさと。」
「ふわふわ、滑らかで美味いね。」
アスコットとジェイドは、堪能しているようだ。
「オデッセイ様、如何でしょうか?」
「これも美味しいですね、エリシオン。」
エリシオンは自分でも食しているが、オデッセイに喜んでもらえて嬉しそうだ。
「オデッセイ様、今回はエリシオンさんがオデッセイ様にも献上したいとの事だったので、伺う形になりました。」
「そーなんです、だから僕が連れてきました!」
俺の口添えに調子良く乗ってくるベゼル。
「そうでしたか。
エリシオン、ベゼル、そして皆の気持ちを嬉しく思いますよ。
そちらの御二方も楽しんでますか?」
いきなり声をかけられたレジアスとディグニティは、手を止めて改めて立ち上がり挨拶する。
「お初にお目にかかります、オデッセイ様。
私はレジアスと申します。
同じこの場にいられることを、光栄に存じます。」
「私はディグニティと申します。
御目通りが叶ったことは有難き幸せ。
ご一緒できるこの機会に感謝致します。」
2人共、丁寧に挨拶する。
にこやかに、オデッセイも挨拶する。
「私はオデッセイです。
皆と仲良くしてくれて嬉しいです。
これからもよろしくお願いしますね。」
「滅相もございません。
こちらこそ、どうぞ宜しくお願いします。」
「畏れ多いことです。
何卒、宜しくお願い致します。」
レジアスもディグニティも、流石年長者と思わせる挨拶だ。
俺には堅苦しくてできないかも。
ひと通り挨拶も終わったところで、お茶を配るみさと。
「甘いので、口をさっぱりさせてくださいね。
良かったらサンドイッチ…口直しに塩っぱいものも出せますよ。」
「みさと、僕欲しいな。
オデッセイ様、みさとの料理はどれも美味しいんだよ。」
「みさと、僕はポテトチップも欲しいな。」
シビックに負けじと、ベゼルも声をかける。
みさとは、くすくす笑いながら、リュックから色々取り出す。
サンドイッチ・ポテトチップ・ポテトフライ・トマトのサラダとマカロニサラダ・カリカリチーズも出す。
器に乗せたアイスクリームも出し、食べ方の説明。
「これはアイスクリーム。
さっきの棒に刺さったアイスより滑らかです。
オデッセイ様に齧らせるのはどうかと思いましたのでこちらにしました。
チョコはこうして、スプーンで上手くかけてくださいね。」
スプーンとクッキーも乗せチョコがかかったアイスクリームを、皆に見せる。
みさとは出来上がったものをオデッセイの前に出そうとするが、その前に楽しそうに発言する。
「私もやってみようかしら。」




