お試しにも程がある 273
「やってみないとわからないでしょう?
ほら、知恵を借りるっていう手もあるしさ。」
「それなら良いですが。
そこの人間、無理なら断るのですよ。
本来はベゼルがやる仕事ですから、遠慮なくね。」
「エリシオン、余計なこと言わないで!」
漫才のようなベゼルとエリシオンのやり取りに、思わず笑ってしまった俺。
「ベゼル、話聞かないと答えられないからね。
エリシオンさんかな、ご心配ありがとうございます。
無理なら無理って断りますよ、俺だってそこまで万能じゃないですから。」
「えー、拓海ならできるって、大丈夫!」
むくれるベゼルを、エリシオンが諌める。
「ベゼル、自分の仕事を他の者に、しかも人間に押し付けるのはやめなさい。
恥ずかしいですよ。」
そのやり取りに飽きたようで、ジェイドが声をかけた。
「あのさ、俺達も用事があって来てるから、邪魔するなら別のとこでやってくれる?
話が進まないんだよ。」
応えるのは、エリシオン。
「それは申し訳ありません、ジェイド。
さ、帰りますよ、ベゼル。」
「拓海に話するまで帰らない!」
「仕方ないですね。
じゃあ、ジェイド達の用事が済んでから話しましょうか。
それまで大人しくしててください。」
「勿論!」
何となく先生と生徒みたいな、エリシオンとベゼル。
アスコットが咳払いし、改めて話し始める。
「ではジェイド、エルフ族の領地にダンジョンを作るのは、進めて良いのかな?」
「おぅ、宜しくな、アスコット。」
快く応えるジェイド。
「では拓海、他の種族にもダンジョン作った方が良い理由を、改めて確認したい。」
「そこはレジアスから説明を。」
突然呼ばれ驚くレジアス。
たまには丸投げでもいいでしょ、こっちはいつもされてるし。
「おほん、私はレジアスと申します、皆様方。
何故他の種族にも作る希望をしているかというと、過去諍いの起きた原因の1つが魔石にあるからです。
特に、エルフ族とドワーフ族の因縁が深いようで、人族が関わらなくても、山を隔てているにも関わらず争いをしていたそうな。
そうじゃな、ディグニティ。」
「はい、レジアスの申告通りです。」
ディグニティは溜息を付きつつ、レジアスの意見を肯定。
「ということで、エルフ族にだけ作ってドワーフ族の所にないと、また争いが始まる可能性があるのです。
そうじゃな、拓海。」
おっと、こっちにも来たか。
「そうだね、以前ドワーフ族に聞いた際に、今は争っていないけど何かあった際に備えて武器・武具の手入れは怠らないって言ってた。」
「私としては、作るのは問題ないのですが、争いの種は避けていただきたいのです。
ご理解いただけますかな。」
アスコットは話を聞き終わると、少し考え込む仕草をする。
「ふむ、そういうことなら、作った方が良いかもな。
拓海は、その他の種族からも異論が出ないように、公平に作ってほしいということかな。」
「全くもってその通りです。
俺も平和に暮らしたいし、仲良くなった他の種族同士の争いも見たくないんですよ。」




