お試しにも程がある 271
「ふぅ、面白いこと言うね、拓海は。」
先ずはジェイドに確認に行くか。
アスコットは、ジェイドを探すことにした。
向かった先には、ジェイドと一緒にベゼルもいた。
「ジェイド、少しいいかい?」
「勿論だよ、どうしたんだいアスコット。」
声をかけられたジェイドは、お茶を飲む手を下ろす。
一緒のテーブルにいるベゼルは、我関せずとおやつを食べている。
ジェイドの隣の椅子に腰掛け、相談開始。
「さっきね、拓海から念話が来てさ…」
「えっ、拓海から?
なんで僕が先じゃないの?」
うるさいなコイツ、そこに突っ込むか。
ベゼルを見ながらそう思いつつも、冷静を保ちつつアスコットは応える。
「単純に用事がなかったんじゃない?
不必要に連絡取るのを控えてくれたのかもよ。」
「それならそれでいいけどさ、最初の連絡は僕に欲しかったよね。」
子供っぽいところは相変わらずだと、アスコットは思う。
「それでね、ジェイド。
ジェイドの知り合いがエルフにもダンジョン欲しいって言ってるみたいなんだよ。
どうかな?」
「俺の知り合い?
もしかして、あのエルフの子かな。
名前は確か、ディグニティだったかな。
ちょっと魔法の手助けしたんだけど、いい子だったよ。」
思い出しながら、ジェイドは応える。
「そうなんだ。
もし作るとしたら、喧嘩にならないようにドワーフや巨人のところにも作った方が良いんじゃないかとも言われてさ。
君はどう思う?」
「逆に聞くけど、そのダンジョンはたくさん作らないの?」
ジェイドの質問に、事の経緯から教えるアスコット。
「最初はね、オデッセイ様からの指示で弱い人間用に練習場作るようにってことで、私がダンジョン用意したんだよ。
だから、人間のところには6つある。
頑張ればご褒美も出るようにしてある。」
「それは良いね。
ご褒美目当てでも、頑張れば練習になるし。
で、エルフに必要かだっけ?」
「そう。」
「俺も久し振りにあの子に会いに行こうかな。
本人から話聞いたほうが良いでしょう?」
またこのパターンか、と思わざるを得ない。
アスコットは心の中で溜息をつき、笑顔で応える。
「それは良いかもね。
ちゃんと話聞いてあげてね。」
今度は丸投げされないように、布石を打つ。
「え、拓海のとこ行くの?
僕も行くよ。」
何言ってるんだコイツ、という顔をして、アスコットもジェイドもベゼルを見る。
そこにちょうど良く(?)、エリシオンが登場。
「ここに居ましたか、ベゼル。
この間頼んだ仕事、まだ終わってないと聞きましたよ。
なるべく早めにと言われてますので、取り掛かりましょう。」
「え、エリシオン、なんでバレたの?
しかもまだ時間あるはずだよね?」
「あなたは、期限が迫らないと焦らないのは重々承知してます。
だから、焦らせに来たんですよ。
私の優しさを身を持って知りなさい。」
「そんな優しさいらないよ!
これから遊びに…ゴホン、用事があって出かけるんだからさ。」
助けを求める顔をして、ベゼルがジェイドを見る。
「あー、エリシオン。
ベゼルは、行かなくても大丈夫だ。
今回は、俺とアスコットで対応できそうだしな。
何処へでも連れてってくれ。」
「そうですか、助かりますジェイド。
ほら、行きますよ、ベゼル。」
エリシオンはベゼルの服を後ろから掴んで、離さない。
「裏切り者ー!」
ベゼルは叫びながら、エリシオンと共に消えた。
「面倒見の良い友達って、大事だよね。」
ジェイドの呟きに、アスコットが応える。
「そうね、ちゃんと仕事してほしいわ、全く。」




