お試しにも程がある 269
「言われてみれば、そうだね。」
「明らかに違うのぅ。」
俺とレジアスは思い出しながら感想を言う。
簡単な模様なら真似できるってこと?
「やっぱ、できる人の魔法は真似しにくいってことかな?」
俺は、考えたことをディグニティに聞いてみる。
「そうなんだよ。
君達の真似も大変なんだからね。」
「ディグニティだからこその技じゃのぅ。」
応えるディグニティに対し、うんうんと頷くレジアス。
「てことは、波長を偽装するってディグニティくらいできる人じゃないと無理ってことかな。」
「他の人がしてるのは見たことないね、今のところ。」
俺へのディグニティの回答は、早かった。
「それを知っている者も少ないのではないかのぅ。
ディグニティよ、他の者にもこの話はしているのか?」
「いや、自分からはしないし、聞かれもしないね。」
ちょっといたずらっ子のような笑顔を見せるディグニティ。
「気付く人がいたら、話したいと思っていたんだよ。
今回みたいにね。」
「じゃあ、俺とレジアスが第一号かな?」
「そうだね、大歓迎だよ。
そろそろ続きをしようか。」
続き?そうか、魔法の痕跡を追う方法を教わってたんだっけ。
新しいことだらけで、すっかり忘れてた。
「例えば、みさとだ。
彼女には魔法がかけられている。
いつ頃誰がかけたか、遡ってみることはできる。」
ディグニティの言葉に、驚く俺達。
かけた本人だから俺はわかるけど、見られるもんなんだ。
「ただね、二重がけされてるんだけど、最初の魔法は私の知らない波長でね。
誰かがかけたとしか分からないんだ。」
「ディグニティでも分からないとなると、おそらくベゼルかな。
見てみよう。」
ま、俺もあいつの波長は知らないんだけど。
いきなり指名されたみさとは、お茶を飲みながらこちらを向く。
「みさと、何もされないからそのままでいいよ。
ちょっと魔法の痕跡を追わせてもらうだけさ。
ジロジロ見て申し訳ないね。」
ディグニティは、簡潔に事情説明。
「はーい、気にしませーん!」
みさとは手にしたドーナツ毎ふりふりしつつ、笑顔で口に運ぶ。
俺とレジアスで、みさとをじーっと見る。
「拓海の波長しか確認できんのぅ。」
「うーん、ちょっと待ってね、見えそうで見えないと言うか、薄っすら見えてきたぞ。」
遡って見たいと思いながら見つめると、出てきた、俺以外の痕跡。
シビックや腕輪にした王冠と同じような、密集した波長。
結果、よくわからない。
模様としては確認できず、王冠よりも薄い色だなくらいの認識。
「きっとベゼルだよ、多分。
模様は分からないくらい緻密なんでしょ。」
見るのを諦め、結論を出す俺。
待てよ、ということは、俺とレジアス、ディグニティにも見えるのでは?
「ディグニティ、ベゼルじゃない人から魔法もらったって言ってたよね?
同じようにディグニティにもついてるのかな?」
「拓海、それは見て確かめていいよ。」
変わらぬ笑顔で応えるディグニティ。
俺はディグニティをまじまじと観察。
別に、顔じゃないよ。
見えた!ベゼルとは違う色っぽい。
「みさとのとは違うから、別の人ってことはわかった。
色でしか判別できないけど。」
「お見事、拓海。
魔法のレベルが違いすぎるのか、私も模様は見えなかったよ。」
「やばい人達から恩恵受けてたんだね、俺達。」




