お試しにも程がある 27
「やぁやぁお待たせ、研修は進んでいるかい?」
みさとを案内してから戻ってきたディグニティは、俺とレジアスに話しかけた。
「順調…なのかな?レジアス。」
「以前に比べたら、格段に出来るようになっとるわい。
本当に来てよかった。」
「そう言ってもらえて何よりだ。
先生やってる2人も、成果が見える方がやる気になるだろうしね。」
「戻った後の研修の参考にさせてもらうわい。
ところで、魔法の在り方は体験した方が理解が早いと思うが、魔力が視えていないものでも実感するもんかのぅ。」
「それは研修生達に聞いた方がいいんじゃない?
私達は視えているから正直わからない。
成長してるって事は、感覚でもわかってるってことじゃないかな。」
「ふむ。
今回は若い者達を集めたが、あまり上手に使えてない中年クラスも鍛えたいんじゃ。
今回の研修生たちが先生になると、舐めてかかって上達しないかもしれんと思ってな。
厄介な者を連れてくるつもりはないが、結果そうなったら申し訳ないと思っている。」
「実力を示すのは得意だよ、あの2人。
何なら私が教えてもいいけど、レジアスの立場もあんるじゃない?」
「成長してくれれば私はどう思われても構わんよ。
私が教えると、私だから出来ると思われて成長しなさそうでなぁ。」
頂点二人の会話は、小難しいものになってきた。
何事も簡単にはいかないんだね。
ズルした訳じゃないけど、訓練も何もしてない俺は口を挟めない。
「因みに、先生の貸出はしないからね。
あの子達が危険にさらされるのは看過できない。」
「無論じゃ。
来てくれるなら万全を期すが、絶対ではないから理解できる。
因みに、次回以降は転移魔法教えないつもりじゃろ?
部外者が来られるようになると困るじゃろうて。」
「理解が早くて助かるよ。
今回は特別だからね。
これは内緒だけど、うちの結界は転移の阻害もできるよ。
指定した人しか入れない。
本当に便利だよね、魔法って。」
「そんな使い方もあるのか。
勉強になったぞ。」
「想像力が大事かな。
何でもは出来ないけど、出来るものの組合せは自由でしょ。」
その通り!
隣で聞いてた俺は、心の中で頷いた。
俺は思うだけで出来ちゃうけど、どこまで出来るのやら。
あっという間に研修終了、転移魔法は半数以上が覚えられた。
「上出来じゃない?」
「全員できないとは情けない。」
「二人共、有難う。
先生上手だったよ。
教え方良かったから、できる人多かったんだから。」
「「はい!」」
ディグニティから褒められ、エルテナ・スタリオンは笑顔になった。
「その通りじゃ。
先生方、有難う。
本当に世話になった。
感謝してもしきれん。」
レジアスからの謝意に、戸惑う2人。
研修生達も集まり、全員で口々に感謝を述べる。
それを少し離れて見ている俺達は、顔を見合わせ笑顔になる。
「やっぱ知らない事を学習出来るって良いよね。」
「ほんとだね。
私も、調理場のエルフさん達と仲良くなったよ。」
「みさとはそういうとこ上手いよね。」
「良い人達だったからね。
帰ったらお料理に取り入れてみるよ。」
「楽しみにしてる。」
無事に研修は終了、レジアスの魔法で帰ってきた。
「レジアス様〜!
無事にお帰りになられて、何よりです。
心よりお待ちしておりました!」
「アイシス、留守番御苦労じゃった。
何も変わりないかの?」
「勿論です。
レジアス様の不在の間は、このワタクシめが目を光らせておりましたっ!」
「流石、頼りになるのぅ。
有難う、アイシス。」
「勿体無いお言葉です!
何と甘美な響き、心が洗われるようです。」
アイシスとの会話は一区切り、研修生達に声をかけるレジアス。
「それでは、研修御苦労じゃった。
3日間の休息を取るように。
体力が回復しても、魔力が回復してるとは限らんから、無理はしないように。
解散。」
研修生達は帰宅、レジアス・アイシス・俺達が残った。
「アイシス、以前話した通り、今回の研修生に指導役をやってもらおうと思う。
そこでじゃ、お前にも統括として関わってほしい。
研修で主に行ったことは、魔力の扱い方じゃ。
ディグニティが言うには、前回の使者・つまりお前は直ぐに魔法を覚えて優秀だったとの事じゃ。
単刀直入に聞くが、お前は魔力が視えるかの?」
「魔力が視えるか、ですか。
正直視えません。
でも、存在は感じてます。
なので、レジアス様の膨大な魔力もそうですし、拓海もかなりの魔力持ちであることはわかります。
慣れると視えるものなんですね。」
「そうなんじゃよ。
全身に纏わせる形になるが、感覚でわかる事でも良いんじゃ。
実はお主は、それが出来ておる。
自然に出来るので、視えているかと思ったんじゃが…視えていなくても、そこまで出来るのは凄いことじゃ。
感覚だけでそこまで出来るなら、指導者として申し分ない。
なので、引受けてくれんかの。
勿論何かあれば、直ぐに相談してくれ。」
「承ります!
レジアス様のお役に立てるよう、精進します!」
「お前は、既に私の役に充分たっておるから、安心せい。」
「有難うございます!」
やはりアイシスは優秀なんだな。
改めて思うが、視えたり無詠唱も覚えたら更に凄いことになるんじゃなかろうか。
「ねぇレジアス、アイシスに視えるようになるか・無詠唱できるかを、レジアスが教えるのはどうかな。
アイシスは基礎がもうできてるんでしょう?」
「ふむ…そうじゃな。
国内での研修メニューも一緒に考えてもらえるかの、アイシス。」
「勿論、喜んで!
直々に御教授いただけるとは光栄です!」
「期間は研修生達の休みが明ける3日までじゃ。
何処まで出来るが楽しみじゃわい。」