お試しにも程がある 267
「いや、そんなこと考えてなかったから、全くわからないよ。」
俺は、両手を上げてお手上げポーズ。
「仕方ないねぇ、じゃあ同じもの出してあげるから、波長を覚えてね。」
「ディグニティ、そんな事もできるの?」
エルフって、何でもありなのか?
「伊達に族長はやってないよ。
国中の子達の波長なら記憶している。」
俺は驚きつつも、基本的な質問をした。
「波長って、そんなに違うもんなの?
同じ魔法じゃないってこと?」
「いい質問だねぇ。
魔法の波長は、同じじゃない。
レジアスと拓海も、もちろん違う。
だから、トライトンも姿が変わっていてもわかったって訳さ。」
「簡単に言うのぅ。
では、私でも下の者の波長を覚えれば、誰のものか分かるようになるのかのぅ。」
「そうだね、レジアス。
なぁに、慣れれば簡単だよ。」
「やれやれ、仕事が増えたわぃ。」
レジアスは口ではそう言っているが、目はキラキラしている。
やはり、新しいことには貪欲なようだ。
「先程の拓海の質問の続きだが、魔法は形式としては同じさ。
ただ、使う者の得手不得手・波長・体調や心理的なものでも変わるもんさ。」
言われてみれば、確かにその通りだ。
「ふむ。
流石エルフ族、魔法の研究も進んどるのぅ。」
「そこはねレジアス、私だからだよ。
エルフだからじゃなくてね。」
変わらぬ笑顔で、応えるディグニティ。
「となると、あまりこの事は知られていないということかのぅ?」
「そうなるねぇ。」
「こんな確認ができるのも、私も黙っておこうかのぅ。」
レジアスも、同じように笑顔のままだ。
「聞かなかったことにしようか、みさと。」
「そうだね、たっくん。」
確かに、そんな事は知っている人少ないほうがいいけど、そもそもできる人がいないんじゃなかろうか。
「じゃあ、早速実践に入ろうか。
よーく見ててね。」
ディグニティは体の前で両手を広げ、魔力の波長を可視化する。
「どうだい、見えたかい?」
「見えた!こんな感じなんだ。」
「ほうほう、興味深いのぅ。」
俺達の感想を聞いて、第二段階に入るディグニティ。
「では、可視化は解除するよ。
これでどうかな。」
ディグニティの手の間の空間を凝視する俺とレジアス。
「さっきの波長を見てたから、何となくわかる。」
「同じくじゃ。」
ディグニティは手を下ろす。
「今度は、個人で放ってる波長の見え方についてだ。
誰しも、意図せず魔力を放っている。
私は抑えているけどね」
確かに、濃い色だが薄い層のようになっている。
「じゃあ、可視化させるよ。」
層の幅が広がり、見えやすくなった。
同時に、波長の模様が見えるようにもしてくれた。
「さっきと違うね。
これは、ディグニティの波長?」
「そうだよ。
放出する全ての波長を偽装は大変でね。」
そう言いつつ、波長の形が変わった。
「これがレジアス。
次は拓海ね。」
大変と言っていたのに、やってのけるディグニティ。
「ほぅほぅ、私はこんな風に見えるのか。」
「ディグニティ凄いね、しっかり見えたよ。」
俺達が見えたことを確認すると、波長の可視化を終了するディグニティ。
「ふぅ、わかってもらえて何よりだ。
では、拓海とレジアスでお互いの波長が見えるか練習だね。
私はひと休みだ。」




