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ちょっとそこの異世界まで  作者: 三毛猫


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お試しにも程がある 264

 「お見事じゃディグニティ、助かるよ。

 さて、いろいろ話してもらおうかのぅ。」

レジアスは近寄ったが、反対に離れてドアに近付こうとしている人物もいる。

 今出ていくなんて、仲間だと告白しているようなものなのにね。

 俺はこっそりと扉を開かないようにした。

 すると、扉の方から、ガチャガチャ音を立てて出ていこうとする姿が注目を集める。

 態とらしく、俺は声をかける。

 「どうしたんですか?どこへ行かれるんです?」

 「う、うるさい、ワシは忙しいんじゃ!

 なぜ開かないんだ!」

 序に脳内を読むと、やばい、バレた、あの方に知らせないとと焦っているようだ。

 そんな人物には構わず、レジアスはトライトンに尋問する。

 「さて。

 王妃様に呪をかけたのは、お前か。」

 「…」

 「誰に頼まれたんじゃ?」

 「…」

 「そこの出ていこうとしている男も仲間かのぅ?」

 「…」

 「やれやれ、だんまりか。

 ディグニティ、答えてくれんぞ?」

 レジアスの問いに、にこやかに応えるディグニティ。

 「ちゃんと答えてるよ、心の中で。

 呪術が人間ごときでできるもんか、俺がやったに決まっている。

 そこの焦っている男も仲間だが、他の奴らも含め名前なんて知らないとね。」

 驚いたように目を大きく見開き、トライトンはディグニティを見つめ、更に睨みつける。

 出て行こうとしている男も、その場にへたり込んでしまった。

 「わ、ワシは何も知らん!

 勝手にそいつが喚いているだけだ!」

 その言葉に、俺は思わず突っ込んだ。

 「え、あの方に報告に行かないとって焦ってるんだよね?」

 「貴様、何故それを…」

 口にしてから、男はしまったという顔をして、口に手を当てる。

 お粗末すぎる監視役。

 「王妃に手を出すとは、どうなるかわかっておるだろう。

 その者を連行し、取り調べろ。

 エルフに関しては、どうしたものかな、長殿よ。」

 王からの問いかけに、ディグニティは笑顔で応える。

 「お気遣い感謝する。

 連れて帰ってこちらで対応しよう。

 そして、二度と同じことはさせないと誓おう。」

 「それは助かる。

 我等では手に余る者だろうよ。

 レジアス、それで良いか。」

 「仰せのままに。

 最善の対応かと思われます。」

 「うむ。

 では、王妃と語らいたいので、他の者は退出するように。」

 王の一声で、皆ぞろぞろと出ていく。

 「私はトライトンを連れて帰るとしよう。

 お邪魔したね。」

 笑顔を崩さず、ディグニティは別れの挨拶をする。

 そこに、王から声がかかる。

 「長殿、また機会があれば語らいたいものだ。」

 「そうですな、またの機会にでも。」

 そう言うと、トライトンと共に姿を消した。


 レジアスは俺達に合図し、部屋を出ようとする。

 そこに、王からストップがかかる。

 「レジアス、今回も助かった。

 王妃も無事なようで、礼を言うぞ。」

 「勿体なきお言葉です、王よ。」

 「それに、そちらの者達もだ。」

 「私達は、レジアスに協力しただけです。

 お力になれたようなら、良かったです。」

 「何か礼をしないといけないな。

 何が良い?」

 ざっくりな王の言葉に、戸惑う俺達。レジアスを見るが、うんうんと頷くだけ。

 「今まで通り、静かに暮らせれば何も要らないです。

 俺達が関わったことは秘密にしていただけるとありがたいです。」

 「そんなことでいいのか?

 レジアス、どうなんだ?」

 戸惑った王は、レジアスに問いかける。

 「恐れながら王よ、こういう奴なんです。

 何でも出来すぎるので、名が知れ渡ると困るようでして。」

 レジアスの言葉に、王妃がくすくすと笑い出す。

 「私達の心に留めておきましょう、あなた。

 でも、何か困ったことがあれば、何時でも声をかけてくれて構わないわ。

 それだけのことをしてくれたんだから。

 本当にありがとう。」

 周りに人が居ないからか、王妃は気軽に声をかけてくれた。

 王からも声がかかる。

 「こちらからもまた、レジアスを通して声をかけさせてもらおう。

 なぁに、お茶でもしようというくらいだろうから、気軽に来てくれ。」

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