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ちょっとそこの異世界まで  作者: 三毛猫


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262/338

お試しにも程がある 261

 「よく来てくれた、拓海。

 早速で悪いが、話を聞かせてくれんか。」

 レジアスから呼び出しの念話が来たと思えば、何のことないダンジョンの話だそう。

 「確かに攻略進めてるよ、あとひとつで6つ目だし。

 何が聞きたいのさ。」

 「では、ドラゴンが出たというのは本当か?」

 「出たはずだけど、倒したら消えちゃうから素材回収は無理だよ。

 見るだけなら、最後のフロアまで進めばいいだけだ。」

 「簡単に言ってくれるな。

 そうか、素材回収はできんのか。

 いや、寧ろ好都合か…」

 ひとり考え込むレジアス。

 「何があるのか、説明してもらえるよね?」

 「わかった。

 いいか、他言無用じゃぞ。

 実は、王妃様が病で臥せって居られるのだが、それを治すためにドラゴンの肝が必要と宮廷医師が言っておってな。

 持ってきたものには好きな額を出すと国王様が仰っておる。

 本物か偽物かの判断がつくかも怪しいんじゃがな。」

 「その宮廷医師ってさ、信頼できるの?」

 俺の質問に、溜息を返すレジアス。

 「そこなんじゃ。

 最近変わったばかりじゃが、腕は良いと評判でのぅ。

 誰も反論できんのじゃ。」

 「成程ね。

 レジアスがしたいのは、王妃様の病気を治したいの、宮廷医師を調べたいの?」

 「できれば、両方じゃ。」

 苦りきった顔のレジアス。


 ナビさん、質問だけど、病気って魔法でも治せるの?

 『病気であれば可能です。

 寿命は対応不可です。』

 成程ね。

 因みに、ドラゴンの肝で病気って治るの?

 『ドラゴンの肝・人魚の肉・不死鳥の卵が万病に効くと言われています。

 検証結果は出ておりません。』

 流石に無理だよね。

 病人見たら、状態わかるかな?

 『概ね可能と思われます。』

 よし。


 「レジアス、俺が王妃様に会うことはできるのかな?

 難しいよね、魔法で治せればと思ったんだけど。」

 「本当か?

 私から掛け合ってみよう。」

 レジアスは、転移で居なくなった。

 「何か、大変なことになってるね。」

 「そうだね、治ると良いんだけど。」

 呼ばれたのはレジアスの家。

 余程他の人には聞かせられない話のようだ。

 俺の隣に座ったみさとは、しっかりシビックを抱きかかえている。

 「シビックの肝は渡さないから、心配しないで、みさと。

 魔法で何とかできないかなって考えてたからさ。」

 「王様が欲しいって言っても、あげないよ!

 寧ろ、他のドラゴン探しに行ってあげるけど。」

 「いやいや、それもしないように頑張ってみるから、ね?」

 みさとは、眉間にしわ寄せている。

 ちょっとおこの顔してる。

 相変わらずわかりやすいなぁ。

 そんな会話をしていると、ノックの音がした。

 執事のコルサが、お茶の用意をしてくれた。

 「旦那様より、戻るまでお待ちいただくようにと言付かっております。

 お茶とお菓子をお持ちしました。

 他にご希望あれば、何なりと仰ってくださいませ。」

 にこやかなコルサに、ホッとひと息の俺。

 「コルサさん、ありがとう。」

 「旦那様のあの様子だと、帰ってくるまで返すなといった感じでして。

 暫くお待ち頂くかもしれませんが、何でもお申し付けください。

 お食事も用意いたしますので。」

 「のんびり待たせてもらいますよ。」

 俺との会話の間にも、コルサはお茶と数種類のお菓子をテーブルに並べていく。

 シビックは我慢できなくて、モゾモゾとみさとから抜け出し、お菓子を手に取る。

 「お代わりもありますからね。」

 シビックにも話しかけてくれた。

 少しはみさとも落ち着いたようで、お茶を口にしている。

 「話に出てた宮廷医師が怪しいよね。」

 

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