お試しにも程がある 260
「私はこっち暮らしがいいなぁ。」
コーヒーを飲みつつ、みさとが呟く。
俺もティラミスを食べ終わり、コーヒーを楽しむ。
「俺も楽しんでるよ。
別に、戻らなくてもいいかな。」
「聡ちゃんは、今は仕事が楽しいのかな。」
「それはそれで良いんじゃない?
俺達は俺達だしな。
聡太はほら、社会人を楽しみ始めてまだ数年だし。
俺達の経過した時間とは一緒にならないよ。」
「まぁねぇ。
わかっちゃいるんだけどねぇ。」
「大丈夫、何かあれば行けるんだし。
その時できるものを楽しまないと。」
「子離れしたつもりなんだけどなぁ。」
ちょっと寂しそうな顔のみさとの、頭を撫でる俺。
「いつまで経っても、子供は子供だよ。
俺達は聡太の親で変わりないんだからさ。」
「そうだよね。」
「僕も子供?」
ケーキを食べ終わったシビックは、聡太の名前が出てきたので、興味を持ったのだろうか。
「お前も家族だな、シビック。」
「子供でも良いんじゃない?たっくん。」
「ペット枠だと思ってたんだけど。
家族には変わらないか。」
「ペットでも「うちの子」って言うしね。」
「聡太もお前もうちの子だな。」
今度はシビックの頭を撫でる。
「じゃあ、もう1個ケーキ欲しい!」
「「お代わりかーい!」」
子供関係あったのか?
「好きなの選んでいいよ、シビック。
どれにする?」
みさとは、シビックに箱の中身を見せながら聞く。
「じゃあね、この丸っこいやつ!」
「モンブランね、よっと。」
箱からモンブランを取出し、シビックの皿に載せるみさと。
「後ねぇ、その色々乗ってる綺麗なのも食べたい。」
「これかな?」
フルーツタルトを指差し、希望を確認。
「それそれ、色んな色でキラキラししてて綺麗だよね。」
正解を確認し、みさとはフルーツタルトもシビックの皿に載せる。
「モンブランは栗を探してからだけど、フルーツタルトなら作れるかなぁ。」
あ、やっぱり作れるもの探してたんだ。
俺の好きなもの優先で作ってくれるから、それ以外も研究してるのか。
みさとは凄いな。
「クレスタさんにもそのうちメニュー追加希望されると思うから、探しとこっかなってね。」
俺の心を読んだかのような反応。
「俺、顔に出てた?」
「バレバレですよ、たっくん。
何年一緒にいると思ってんの。
お互い様だけどね。」
「そりゃそうか。
でも、全部はわからないからね、ちゃんと聞きたい時は聞くよ。」
「勿論!私もそうするから安心して。
まだまだシビックはわからないからなぁ。」
こんな会話の間にも、美味しそうにケーキを食べるシビック。
俺達の目線を感じたわけではなく、食べ終わったからだと思うけど。
「みさと、ケーキお代わり!」




