お試しにも程がある 259
「美味しかった、お腹いっぱい!」
転移して家に戻り、リュックに入れたケーキの箱を取り出すみさと。
「ケーキは入るんだな。」
「別腹ですよ、勿論!」
「僕はまだまだ入るよ!」
こっちの広い我が家に慣れてしまったようだ。
食後に戻った向こうのマンションが狭く感じた俺は、用事が済んだら直ぐに戻ってきた。
忘れないうちに、聡太に念話。
(聡太、聞こえる?)
(父さん?聞こえるよ!
もうそっちに戻ったの?)
(おぅ。
どうやら成功したみたいだな。)
(やったね、何時でも念話できるね。)
(念の為さ、明日でも良いから、聡太から念話試してみてよ。
俺からしかできないと困るだろ?)
(そうだね、やってみるよ。
じゃあ、また明日ね。)
(テスト宜しくな。)
「みさと、聡太に念話できたよ。」
「ほんと?やったね!」
「明日、聡太から念話できるかも試してもらう予定だ。」
「上手くいくと良いね。」
「そうだね。
それができたら、オンタイムで聡太の元に転移できるかも実験だな。」
「そうなると、聡ちゃんに何かあっても直ぐ行けるね。」
「聡太は僕が助ける!」
シビックも話を聞いていたようで、聡太の話になった途端入ってきた。
「何かあったらだから、今すぐじゃないぞ、シビック。
安心しろ。」
「それなら良いけど。
ちゃんと連れてってね!」
聡太も、不老不死になっているから、滅多なことでは危なくならない筈。
寧ろ、仕事が嫌になったら避難してくるでも良いくらいだ。
気長に待つとしよう。
そんな事を考えていたら、みさとは箱を眺め腕組みして悩み中。
「どしたの、みさと。
何か忘れ物?」
残念そうな顔をして、振り向くみさと。
「流石に全部は食べられないから、どれにしようか悩み中なの。」
「残りを後日食べるにしても、今何を食べたいか悩んでるのか。
俺はティラミスにしようかな。」
「たっくんチーズ系好きだもんね。
はい、どうぞ。」
自分のは決まらないが、俺の分を取り分けてくれたみさと。
まだ悩んでいたが、やっと決めたようだ。
「よし、これにしよう。」
やっと手を伸ばしたのは、エクレア。
この店のエクレアは大きめで、カスタードと生クリームの両方が入っている。
「シビック、半分つしよ!
それとは別に、好きなの選んでいいよ。
今日は1個ね。
明日また食べたいし。」
「わかった!
僕ね、これがいい。」
シビックは、フルーツも入ったミルクレープを選択。
「お目が高いね、シビックくん。
これも美味しいんだよねぇ。」
みさとは、皿に載せたケーキをシビックに渡す。
「たっくん、お茶かコーヒー欲しいなぁ。
お湯お願いしていい?」
「いいよ、コーヒー淹れるね。」
「ありがとう!」
そうと決まれば、準備は早い。
俺がコーヒーの準備をしだすと、みさとはカップの用意。
牛乳も取出し、準備万端。
先にセットしておいたコーヒー豆に、瞬時に沸かした湯を注ぐ。
蒸らしも含め、ゆっくり注ぐと、芳しい香りがしてきた。
「良い香り!
早く飲みたいなぁ。」
「待つのも美味しさのうちだよ、みさと。
座って待ってて。」
「はーい。」
その間に、みさとはスプーンとフォークを用意、エクレアは半分に割ってシビックの皿の上に追加。
シビックは、尻尾を振り振り、待ち遠しそうだ。
やっぱり尻尾は素直なんだな。
そんなに柔軟に動きそうには見えないけど。
人数分のコーヒーを入れたカップをテーブルに運び、それぞれの前に置く。
みさとはシビックのカップに、たっぷり牛乳を入れ、自分のにも注ぐ。
俺は程々に自分で注ぐ。
欲しいものが揃ったところで、ケーキを楽しむ。
「んー、ここのやっぱ美味しい!
いっぱい買ってきて正解だよね。」
「好きに食べていいけど、程々にね、みさと。」
「ねぇみさと、このクリームいっぱいの外側のやつ、チョコなの?
美味しいね!」
貰った半分はひとくちで食べ、満足そうなシビック。
「お、よく覚えてたねシビック。
その通り、これはチョコレートだよ。
こういう食べ方もあるんだよ。」
「僕これ好き!
また食べたい。」
嬉しそうに目を輝かせるシビック。
「じゃあ、今度作ってみようか。
材料はあるしね。」
「やったぁ!いっぱい作ってね。」
「売るほどは作らないけどね。」
みさとはそう言うけど、クレスタかカムリ辺りが知れば売り出しそうだ。
「カスタードにキャラメル入れてもいいし、フルーツ挟んでも良いよね。」
「それさ、シュークリームで良いんじゃない?」
「そうだね、見た目はシュークリームの方が華やかにできるね!
苺もそのまま入れてもいいし、生クリームに混ぜてもいいし。」
「お、苺シュー、楽しみだ。」
「先ずは、シューが上手く焼けるかから始めないとね。」
お腹いっぱいのはずが、食べ物の話で盛り上がる。
「僕、味見する!」




