表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ちょっとそこの異世界まで  作者: 三毛猫


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/335

お試しにも程がある 26

「やれやれ、疲れたわい。」

 「お疲れ様でした、レジアス様。

 直ぐにお茶を淹れますね。」

 家に戻ったレジアスは、執事のコルサに迎えられ一息つく。

 お茶とお茶菓子を用意され、堪能しながら今日の振り返りをする。

 流石エルフ族としか言えない。

 基本がしっかりわかっているからこその、研修内容。

 まだ確立できていなくて、自分の感覚だけでしか理解できていなかった。

 しかし拓海のやつ、見ていただけで理解するとは。

 弟弟子ながら天晴。

 私も出来たがのぅ、ふふん。

 研修生達が理解できれば、他の者達に教えられるだろうし、私の感覚も間違っていなかった事も証明できた。

 今日だけでも行ってよかった。

 アイシスも理解は出来るだろうが、方向音痴はどうにもならんのぅ。

 この国の魔法レベルも、これで少し上がると良いんじゃが。

 設置した転移装置の利用も進むだろうて。

 それで経済の活性化が進めば、地方との差も少しは減るじゃろう。

 やっと歯車が動き出した感じじゃな。


 俺達は転移魔法で家に戻り、みさととソファで一休み。

 「居ただけなのに、気疲れした感じ。

 甘い物食べよっかな。」

 「みさと、僕も食べるー!」

 「俺も少し欲しいな。

 折角だから、コーヒーも淹れようか。」

 「そうだね、ありがとう。

 プリン・チーズケーキ・クッキー辺りでどうかな?」

 「全部食べるー!」

 「俺はチーズケーキかな。」

 「私は迷うな…一緒にチーズケーキにしよう。」

 「フルーツのソースかけて食べたいな。

 向こうの世界に居る時に出してくれたじゃん?」

 「そうだね、やってみようか。」

 「やったね。

 じゃあ俺はその間にコーヒー淹れよっと。」

 それぞれ動き出し、準備にかかる。

 シビックはみさとについて行く。

 俺の好きな苺を細かく刻み、砂糖入れて火にかける。

 トロトロになったものを、小さな鍋ごと持ってるく。

 鍋敷きをテーブルに置き、その上に乗せる。

 冷蔵庫からチーズケーキとプリンを出し、クッキーも皿に用意。

 トレーに載せて持ってくるみさと。

 俺は湯を沸かしミルでコーヒーを準備しつつ、こっそり苺に冷却魔法をかける。

 テーブルに色々置いたみさとは、鍋が熱いと思いちょんちょん触るが、思いがけず冷たいのでびっくりした顔になる。

 「なにこれ、冷たっ!

 たっくん冷やしてくれたの?」

 「そうだよ。

 直ぐ食べたいじゃん。」

 ニヤニヤしながら答えると、みさとから突慳貪な返事が来た。

 「おぅ、ありがとね。」

 そう言いつつ膨らむほっぺ。

 直ぐ顔に出るあたりが分かりやすい。

 そうこうしつつ鍋の中をかき回し、とろみが増していること確認。

 ちょっと固いらしく、鍋を手で温めてる。

 「これくらいなら良いかな。

 苺ソースはお好きにどーぞ!」

 「僕もかけたい!」

 「俺がかけてあげよう。

 たっぷりが美味しいぞ。」

 「色綺麗だね!」

 「お前もわかるようになってきたじゃないか。

 苺ソース美味しいぞ。

 俺のもかけよう。」

 わーきゃーやっている2人を見ているみさとは、もう笑顔になっていた。


 「ところでさぁ、研修は上手くいってるの?

 見てるだけだからよくわからなかったけど。」

 「大丈夫らしいよ。

 レジアスも上達してるって言ってたし。」

 「それなら良かった。

 私達はお菓子が捗っただけだもんね、シビック。」

 「どれも美味しかったよ!

 明日は違うの出てくる?」

 「まだレパートリーはある筈。」

 リュックを開きながら覗き込み、ガサゴソと確認。

 ナビに聞けば早いのに、見ないと気が済まないらしい。

 「ん~中身違い位ならあるかな。

 あそこでお料理する訳にいかないしね。

 デザート系は駄目だよ。」

 「じゃあ、それで我慢する。」

 「帰ってきたら、また探しに行きますか。

 作ってもいいけどね。」

 「みさとのお菓子好き!

 美味しいし沢山食べられる。」

 「ありがとねシビック。」

 「みさと、餌付けしすぎじゃないか?

 シビックが野生で生きていけなくなるぞ。」

 「拓海、もう遅いよ。

 果物は良いけど、生肉とかもう美味しくないしね。」

 「あはは、遅かったかぁ。

 ずっと一緒にいようね、皆で。」

 「俺とみさとは不老不死付いてるけど、シビックには見当たらないんだよな。

 どうなんだ、お前。」

 「まぁ、大丈夫だよ。

 心配しないで。」

 「それなら良いけど。

 何かあったら、直ぐ言えよ。」

  

 翌朝、ディグニティに連絡した上で、レジアスと共にエルフ領に到着。

 研修生含め、朝御飯も終わっているとのこと。

 「諸君、おはよう。

 本日で研修終了になる。

 最後まで気を抜かず、戻ってからは自分たちが教える立場になると意識して取組んで欲しい。

 以上じゃ。

 お二人共、宜しく頼む。」

 レジアスの言葉から研修開始。

 ディグニティからも2人に目配せし、今日も元気に研修が始まった。

 「じゃあ皆さん、昨日の復習で魔力の纏い方からやりましょう。

 今日の研修終わるまでは、それ維持するよ〜!」

 「最後までしっかり行うように。」

 エルテナ・スタリオンが、研修生達に声をかける。

 研修生達は返事と共に、魔力を纏い始める。

 「帰ってから通常の生活の中でも、これが出来ると一人前かな。

 頑張ろうね〜!」

 「子供の頃からやっておくべきだったな。」

 それぞれ激励?の言葉が飛ぶ。

 全員が纏って安定してから、それは告げられた。

 「はーい、今日の研修ですが…次の休憩まで、鬼ごっこします!

 勿論、今の状態維持ね。」

 「捕まった場合もそうだが、魔力が纏えてないと確認された場合も鬼になるからな。」

 「これは、私達が子供の頃やっていた遊びです。

 これくらい出来てくれば、無意識にでも出来るようになるはず!」

 「転移魔法はこれが出来てからだな。」

 鬼ごっこの説明がされて、鬼を決めてから開始。

 エルテナ・スタリオンは判定役で全体を見ている。

 鬼ごっこのエリアは、エルフ領の一部を囲い、研修生だけになるようにしてある。

 「鬼さん以外は好きに逃げて良いよ。

 10数えたら始めるね!」

 鬼以外は四方八方に逃げ、あっという間に散開。

 10数え終わった鬼に、エルテナから探し方を教わる。

 「集中するとね、どの辺りに魔力反応あるか分かるんだよね。

 それを元に探してご覧。」

 「頭に地図が描ければ良いのだが。

 出来なくても、方向だけでもわかれば探しやすいぞ。」

 鬼になった研修生は、魔力を纏うための集中だけでなく、周りの探索という更に集中力必要なものを求められ、知恵熱が出そうなくらい頑張っている。

 その後、1人探した時点で魔力が尽きた。


 「ありゃ、難しかったかな?」

 「子供でも出来るぞ。」

 「じゃあ少し休憩しようかね。

 その後また再開ということで。」

 見かねたディグニティが、口を挟む。

 「はーい、皆少し休憩しまーす!」

 「飲み物はそこにあるので、好きに取るが良い。」

 「じゃあ、休憩の間に私達も遊ぼうか。」

 「「えっ!?」」

 「研修生達に見本見せたほうが良いんじゃないかい?

 そうだなぁ、君達2人とレジアス・拓海の探し合いでどうだい?」

 「私は構わんぞぃ。」

 「俺も乗った。

 シビック、みさとよろしくね。」

 「任せといて!」

 初めてやる筈の2人が余裕そうなので、エルテナとスタリオンは断るわけにいかない。

 「相手にとって不足なし!

 手加減しないからね。」

 「無論だ。

 負けてやる義理はない。」

 「じゃあ、先攻後攻で追いかけっこね。

 10分逃げ切れば勝ち、魔力は切らしたら負けだから、隠密不可ね。

 魔法は…好きに使ってよし!」

 「族長、私達に有利すぎない?」

 「やってみればいいさ。

 レジアス・拓海、どうだい?」

 「何も問題無いぞぃ。」

 「魔法何でもあり、か。

 ちょっと楽しみ。」

 レジアスは杖を手に持ち、拓海は準備運動を始める。

 スタリオンは勝つチャンスと見て、やる気満々だ。

 「どちらも捕まった場合は、早く捕まった方が負けだよ。

 どっちが先攻する?」

 「はーい!

 私捕まえたい!

 直ぐ捕まえたら、それ以上の時間逃げれば良いだけだよね?」

 「私達はどちらでも構わんぞぃ。」

 「ではでは、エルテナ・スタリオンが先に鬼ね。

 10数え終わったら、探しに行くこと。

 始め!」

 レジアスと拓海は、別方向にそれぞれ飛んで行った。

 空中に飛ぶさまを見て、研修生達は驚きを隠せない。

 エルテナ・スタリオンもびっくりしているが、即座に10数え終わり追撃に入る。

 「私おじいちゃんね!」

 「俺は彼奴か。」

 

 レジアスは高い所に行き、全体を俯瞰する。

 場所の把握をして、転移できる準備。

 同じく拓海も、ナビによる全体把握。

 追いかけて来る影を感知した時点で、違う場所に転移。

 エルテナ・スタリオンも転移したいが、何処に行くかわからないので追いかけようが無い。

 飛行は高速で行うが、途中で目標を見失うので苛々してきた。

 そんな中、拓海とレジアスは念話でやり取りし、中央に2人で待ち合わせ。

 それを見たエルテナ・スタリオンは、即座に中央に転移。

 着いた時にはもう居なくて、お互いぶつかりそうになる。

 「何やってんのよ、危ないでしょ!」

 「それは俺の台詞だ。」

 啀み合ってる場合ではないが、睨み合う2人。

 「残り時間半分切ったよー。」

 全体的に響くように、ディグニティの声がする。

 更に焦って、対象者を探す。


 なんでこんなに速いんだ。

 人間のやることじゃないだろう。

 追いつけないなんて…


 奇しくもエルテナ・スタリオンは、同じことを考えていた。

 そうこうしている間に、拓海・レジアスは逃げ切った。

 「前半戦終わり!

 集まってー!」

 ディグニティの声が響き渡り、4人が集結。

 余裕そうな拓海・レジアスに対して、悔しそうなエルテナ・スタリオン。

 ニコニコしたディグニティが、後半戦について告げる。

 「今度はエルテナ・スタリオンが逃げる番ね。

 休憩必要なら、5分くらいあげるけど、どうかな?」

 「「不要です。」」

 かなりピリピリした感じで、即答。

 「追いかける組はどうかな?」

 「別に要らないよ。」

 「私もじゃ。」

 「じゃあ早速開始!」


 号令と共に、エルテナ・スタリオンが逃げる。

 飛行して逃げて、木の陰に隠れながらさらに移動。

 10数え終わった拓海とレジアスは、先程追いかけて来た者を追う。

 エルテナもスタリオンも、速度が遅い人間だから転移で移動したと考えていた。

 飛行速度は、自分たちの方が速いだろうと。

 周りの魔力反応を確認しながら、何方に行こうか考えている。

 先に動いたのは、拓海だった。

 スタリオンの飛行速度より遥かに速く飛び、あっさり確保。

 スタリオンは、何が起きたか理解出来なかった。

 いや、したくなかった。

 俺が捕まるだと?しかも人間だぞ。

 族長や幹部連中ならいざ知らず、人間だぞ?

 ありえないだろう…


 茫然自失のうちに、拓海に依って転移でディグニティの所まで移動させられていた。

 「残念だったね、スタリオン。」

 「族長、こ、これは…」

 「いいからいいから。

 さてエルテナはどうかな?」

 

 ディグニティの声で、スタリオンが捕まったことが全体に周知された。

 エルテナは驚き、レジアスはそろそろかと思った。

 「良い準備運動だったが、そろそろ終わりにしようかの。」

 暢気な声が聞こえたかと思った瞬間、エルテナは確保されていた。


 えっ?何?どういうこと?


 パニックになり逃げ出そうとしだが、同じく転移でディグニティの元まで連れて行かれる。


「どうだい、楽しかったかい?」

 「これは良い遊びだな。

 向こうでも研修の一環でやらせてみようかのぅ。」

 「久し振りに魔法で楽しめたよ。」

 「「…」」

 ディグニティの問いに対して余裕そうなレジアス・拓海とは違い、項垂れるエルテナ・スタリオン。

 そんな2人の肩を組み、小声で囁やいた。

 「言っただろう、凄いよって。

 2人をじゃなくて、私の忠告を甘く見たのかな?」

 「そ、そんなこと無いです!」

 「俺は、その…」

 「あっはっは、出来ない子達の気持ちが少しわかったんじゃないかな?

 今度は研修生全員逃げて、2人が追いかけるのはどうかな?

 私が全体把握しようじゃないか。」

 やる気の出たエルテナ・スタリオン、少し怯える研修生達。

 「君達は飛ばなくても、走って逃げて大丈夫だからね。

 こっちの2人も、走らせるから。

 そうそう、速度加速や摩擦軽減の魔法使うと、移動が速くなるからね。

 勿論、飛行できる子はしても良いよ。」

 ざわめく研修生達。

 魔法詠唱を短くできるか、いや、発動前状態にできるか…

 「そうそう、魔法ってね、想像力が大事だよ。

 レジアス達もそうだけど、詠唱してないでしょ?

 実は、詠唱無しでも発動するんだよ。

 事象を明確にイメージして、魔力集中させて発動ね。

 練習だと上手く出来ない場合あるけど、逃げなきゃ!って切羽詰まると発動するのはそんな感じ。

 本当に戦う訳ではないけど、それくらいの気持ちでやってみてね。」

 

 逃げては捕まり、全員捕まってから再度開始。

 5回程繰り返し、お昼休憩。

 研修生は全員、へとへとになっていた。


 「ディグニティは良い先生じゃのぅ。

 説明がわかりやすいし、実践させるのもタイミングが良い。」

 「そこまでの下地を作ったのは、エルテナとスタリオンだよ。

 2人が頑張って基礎の基礎を教えてくれたから、次が出来たんだ。

 いいとこ取りしただけじゃないかな。

 ごめんね、二人共。」

 何気に褒められてるのを聞いて、ちょっと嬉しそうな2人。

 「いえいえ、誘導ありがとうございます。

 午後の転移魔法に入りやすくなりました。」

 「ありがとうございます。」

 エルテナ・スタリオンも、元気を取り戻してる。

 午後の研修も、ビシバシ出来そうだ。

 「本当に頼もしいお二人じゃな。

 最後まで宜しく頼む。」

 レジアスもニコニコ対応。

 「「お任せ下さい。」」

 エルテナ・スタリオンの対応に、ディグニティはうんうんと頷いていた。


 俺とみさとは、出てきた食事について話していた。

 「このサラダ美味しいよね。

 食材も良いかもしれないけど、味付けが絶妙!」

 「みさとが気に入ったなら、後で味付け聞いてみようか。」

 「そうする!

 家でも出来ると良いんだけど。」

 「流石にここで聞いたレシピは、あの店では出せないかな。」

 「そうだね、アレンジしてエルフ風とかなら良いかもね。

 お魚は難しいけど、お肉の方なら材料揃いそうだし。」

 「料理はお気に召しましたか?

 良かったら厨房に案内するよ。」

 俺達の会話を聞いていたようで、ディグニティが声をかけてきた。

 「お邪魔じゃなければ、伺いたいです。」

 「何の研修に来たのやらだけど、お願いできるかな。」

 「勿論、構わないよ。

 他の者達も、交流してもらえるとこちらも助かる。

 中々他種族と関わり無いからね。」

 「いやいやいや…

 あの結界あったら、そりゃそうだよね。」

 あははと笑い合うが、ディグニティの目が笑ってない。

 ジョークなのか本気なのかよくわからん。


 午後の研修開始、みさとはディグニティの案内で厨房に向かった。

 その間シビックは、俺の肩の上に移動。

 徐ろにシビックが話し始めた。

 「拓海、前回は先生やってる雄のエルフから拓海に向かって敵意が感じられたんだ。

 今日は感じないから、スッキリだよ。」

 「おいおい、何もしなかったか?」

 「別にー。

 みさとにも言わなかったよ。」

 「そこは正解だな。

 怒ったら何しでかすやら。

 自分が言われてる時はニコニコしてるけど、俺に言われてる時はすんごい怒るんだよね。

 俺は自分でどうにかできるのにさ。

 でも嬉しいよね、ああいうとこ。」

 「今日は拓海がコテンパンにしたから、ぐうの音も出なかったんじゃない?」

 「結果そうなっただけだよ、きっと。」

 「じゃ、そういうことで。

 まぁみさとに何かあれば、拓海にも知らせるけど僕も対応するからね。」

 「ここではないことを祈るよ。

 何時も見ててくれてありがとな。」

 「えっへん!

 後でおやつくれて良いよ。」

 「そこはみさとにお任せします。

 何食べてるかわからんしな。」

 「昨日の苺ソース、美味しかったね。

 パンにもつけたら美味しいんじゃない?」

 「ジャムかぁ、良いかもな。

 後でみさとに聞いてみよう。」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ