お試しにも程がある 25
「皆さん、お疲れ様でした!
先に、休んでもらう部屋案内しますね。」
研修が終わり、エルテナは研修生を誘導する。
スタリオンは、後ろから迷子が出ないようについて行く。
レジアスと俺達は、夜は自分達の家に転移で戻る事をディグニティに伝えてある。
研修生達は、疲れて移動大変だろうから世話になる事になっている。
夕食は皆で食べて、和やかな会話になるが、食後の研修生達は回復に勤しむため部屋に戻っていった。
残った俺達は、明日の研修と帰りについて話し合う。
「レジアス、研修明日で終わりだよね。
各自転移魔法で帰ってもらうの?」
「そうしたいのは山々じゃが、奴らの魔力が持つかわからん。
迷子が出ないように纏めて帰る予定じゃ。」
「アイシスの例もあるしね。
帰るまでが研修だね、わかった。」
「おやおや、折角練習させたのに、自分達に使わせないのかい?
やっぱりレジアスは過保護だねぇ。」
「何を言う、ディグニティ。
これから先も育てないといけないんじゃ。
今度は奴らが先生になるんじゃからな。」
「そうかそうか。
研修なら何時でも受けるよ、この2人が。」
いきなり自分達の話になり、エルテナもスタリオンもディグニティの顔を見る。
「族長、今回だけじゃないの?」
「基礎も出来てない奴の相手は懲り懲りだぜ。」
「まぁまぁ二人共、上手に教えられてたから安心しなさい。
教えることで、自分達の更なる成長にも繋がると思うよ。」
「優秀なお二人に教わって、研修生達はかなり上達しとる。
本当に感謝している。」
「いやいや、やめて下さい。
私達は族長に従っただけですから。」
「その通り、仕事をしたのみ。」
「ありがとね、エルテナ、スタリオン。
君達で正解だったよ。」
「族長までやめてよー。」
「…」
エルテナは照れ笑い、スタリオンはそっぽを向いて黙ってしまった。
俺には、2人が嬉しそうにしているように見えた。
ディグニティは人望あるんだなぁ。
魔力が凄いだけじゃないと思う。
上に立つ人はそういうとこ大事だよね、きっと。
そんな考え事していると、袖を引っ張られた。
「ねぇたっくん、私達も明日で終了?
何かした方がいいかな。」
「明日で依頼終了だけど、何も要らないんじゃないかな。」
「ホントに付いてきただけだけど、いいのかな?」
「そんな仕事もあるよ。
楽チンだったね。」
「旅行来たみたいだった、楽しかった。」
「こらこら、まだ終わってないから。
明日までだよ。」
「はーい!」
研修生達が寝静まった為、煩くならないよう話を続ける。
「スタリオン、みんな明日で転移魔法覚えられるかな。」
「無理だろう。」
「そういうこと言わない。
希望を持たないと辛くなるでしょ、私が。」
「お前のことは知らん。
俺は最初からそう思ってるから問題無い。」
「それ、思ってても族長に言っちゃ駄目なやつだよ。」
「よく聞こえてるよ、二人共。」
「あわわ、聞こえてましたか族長。」
「そりゃ隣にいるんだから聞こえるだろうよ。
馬鹿なのかお前は。」
「馬鹿じゃない!
しかも君に言われたくない。」
「相変わらず仲いいねぇ、二人共。」
「「よくないです。」」
「あはは、息ぴったりだ。
その調子で、明日も宜しくね。」
「そこはお任せ下さい。」
「勿論です。」
「頼もしい先生方じゃ。
羨ましいのぅ、ディグニティ。」
「そうでしょう?
うちの子達は出来もいいしいい子ばっかりだよ。」
「そう思ってるのは族長だけだよ。」
「そこは同意見だな。
実際出来の悪いのも存在するし。」
「そういうことにしとこうか。
レジアス、何か確認事項あるかい?」
「特に無いな。
明日も宜しく頼むでの。」
「お任せあれ。
研修来てよかったと思える成果をご覧に入れましょう。
2人がね。」
結果丸投げなディグニティ。
慌てるエルテナ・スタリオン。
笑顔のレジアス。
俺とみさとは、苦笑い。
シビックは欠伸してる。
そんな形で、解散になった。
人間達が転移で消えてから、スタリオンはディグニティに声をかけた。
「族長、あの人間達何なんですか?
ヤバそうな感じがビンビンする。」
「私も感じた!
凄そうだよね、人間なのに。」
「確かに種族は人間だが、私と同類みたいなもんだよ。
迂闊に手を出すんじゃないよ、二人共。
反撃されたら、手に負えないし。」
「何だよそれ、族長より強いのかよ。」
「同じくらいで、優劣つかないんだよ、きっと。
そうですよね、族長。」
「はっはっはっ、優しいな二人共。
気を使ってくれてありがとう。
そういうことにしとこうかねぇ。」
「ねぇ族長、あのペット可愛かったけど、ドラゴンぽくなかった?
他のトカゲ種かなぁ。」
「よく懐いてたよな。
まるで犬か猫みたいな感じ。
ドラゴンじゃないだろ。」
「明日来るから、聞いてみたら良いんじゃないかい?」
「俺達が直接?」
「勿論。
交流する為に来てくれてるからね。
何でも聞くと良いよ。」
「誰に聞いたら良いかな?
ちっちゃい女の子の方が話しやすいかな。」
「そういえば、居たな。
従魔の世話役かな。」
「おいおい、彼女は拓海の奥さんだよ。
良かった、本人にそんなこと言う前で。」
「…気をつけます。
やっぱり族長聞いて下さいよ!」
「何事も経験だよ、エルテナ。
明日が楽しみだね。」
「確認ですが族長、彼奴等が転移魔法覚えられなくても俺等のせいじゃないですよね?」
「本人次第ではあるからね。
出来る人出来ない人出てもしょうがない。
確実に魔力操作は上達してるから、安心して。
レジアスもわかってたみたいだし。」
「ホントにあれ人間かしらね。」
「隣の奴も、魔力操作簡単にしてたな。」
「ほらほら敵視しないよ。
さっきも言ったよね?
明日も仲良くやってね。」




