お試しにも程がある 245
「今日の案件はこれで終わりかな?
いい時間だし、皆でご飯にしませんか?」
色々盛り沢山で、既に昼も終わりそうだ。
みさとの一言で、やっと腹時計の確認に気が向いた。
「みさと、何か作るかい?
家にあるものはどれ使ってもいいよ。」
「本当?ありがとうミレーニアさん、何があるかなぁ。
一緒に作りましょうか。」
「そうだね、そうしようか。」
楽しそうに、2人でキッチンに向かって行った。
「僕、商談に来ただけなんだけど。
食事まで頂くのは申し訳なくない?」
そわそわしていたクレスタは、こっそりと俺に耳打ちする。
「ひとりじゃ帰れないし、折角だからご馳走になったら良いんじゃない?
食べ終わったら、送ってくよ。」
「それなら宜しくね。
ボンゴさん、お昼ご馳走になります。」
そんなことを言われると思っていなかったようで、ボンゴはとてもびっくりしている。
「俺じゃねぇよ、母ちゃんとみさとが作るんだ。
ゆっくりしてっていいから、2人に言ってくれ。」
「それはそうですが…じゃあ、遠慮なく。」
デックスとルクラは、まだ名入れの話を続けている。
「眼鏡があれば、細かい作業出来るかもな。」
「それなら、細かい作業できる道具も揃えないとな。」
「そもそも眼鏡って、そんなに性能良い感じはせんがな。」
「使い慣れると、違うかもしれんぞ。
何事も試してみないとな。
確かあそこの爺さんが作っていた気がするから、覗いてみるか。」
「そもそも、そんな小さな物に入れる予定は今のところ無いがな。
できる幅が増えれば、仕事も増えるだろう。」
小さいものか。
俺が考えてしまうのは、アクセサリーかな。
この世界で、拡大鏡はまだ無いのか?
覚えていたら、向こうで買ってみようか。
そうだよな、手作業なんだから、小ささにも限度はあるよね。
でも、以前連れて行ってもらった市場では、道具の造りもかなり細かかった気がする。
色んな職人が居るんだろうな。
クレスタとボンゴは、包丁から別の道具に話が移っていた。
「この間よ、山で仕事している奴が、また斧を購入しないとなって言ってたんだ。
よく刃毀れするみたいでよ。
斧も作ってくれたら、そいつに勧めてみるよ。」
「ボンゴさん、色んな知り合い居るって言ってましたもんね。
次は斧をお願いしてみましょうか。
鋸もですかね。」
「そうだな、鉋も欲しいって言われそうだ。」
「山の仕事って、道具がいろいろ必要なんですね。」
「そうみたいだな。
俺達河のものは、釣竿と包丁くらいだがな。
デックス達も、道具は色々使うんじゃないか?」
呼ばれたデックスは、話に加わる。
「そうだな、工房がないと加工自体ができないから、そこに色々道具は置いてあるぞ。」
「俺は刻印がメインだから、そのための道具だな。」
ルクラも参加して、ワイワイ賑やかになってきた。
「拓海は何も道具いらんのか?
使ってるの見たことないぞ。」
ボンゴから流れ弾が来た。
「言われてみれば、使わないね。
ウエストポーチくらいかな。
みさとは剣を使うけどね。」
「みさとさんは、剣より包丁の方が上手そうですよ?」
「クレスタ、知らないってことは、大事なことだよ。」
「怖いこと言わないでくださいよ、拓海さん。
みさとさんが強いのは知ってるから。」
みさとの話になり、デックスも思い出しながら参加してきた。
「みさとは、腕っぷし強いからな。
剣がなくても、充分じゃないか?」




