お試しにも程がある 242
「相変わらず急だねぇ、拓海さんは。」
連れてこられたクレスタはぼやいているが、お互い様ではなかろうか。
「まぁ、でもさ、扱う商品増えたよっていう摺合せだから。
クレスタ居ないと始まらないだろ?」
「そこは感謝してますよ。
皆さんで段取りまでしていただいたようで、ありがとうございます。
これが注文書ですね。」
クレスタは、手渡した用紙を確認。
追記で、申込の日付・金額・申込者の署名の欄を書き込む。
「こんな感じでどうかな。
あとは金額をどうするかだけど、デックスさんとルクラさんにお任せしますね。」
「小さくしたら材料は減るが、手間は掛かるから全て同じ値段でも良いんじゃないか?
名前入れだけは、銀貨1枚だな。」
デックスは、あっけらかんと言い放つ。
ルクラもそれでいいのか、うんうんと頷いている。
「名入れだけ手間賃発生と。
じゃあ、大きい包丁の値段で統一だね。
わかりやすくてありがたい。
僕は受注したら、2人のところに直ぐ持っていくね。
少なくとも2日に1回はこっちに来るから、担当者にも伝えとくよ。」
用紙に金額について追記し、俺に渡すクレスタ。
ウエストポーチに入れて2枚にして、大きくしたものをボンゴに、もう1枚はデックスに渡す。
「皆さん、これで良ければ用紙増やしてボンゴさんに渡しときますね。
デックスさんとルクラさんは、見本の用意を宜しくお願いします。
あ、名入れの部分に、「見本」と入れてくださいね。」
「わかった、見本全てに入れえおくよ。」
「俺は、全部のパターンで見本作れば良いんだな?」
ルクラの回答に合わせ、デックスも自分のやる事を確認。
「そうですね…ミレーニアさん、小さめサイズだと、どういった組み合わせが使いやすいですかね。」
いきなり話を振られて、驚くミレーニア。
「あたしでいいのかい?
そうだねぇ。
刃渡りが短いなら、幅も細くしてほしいねぇ。
持ち手は、今の長さで細くなった方が細かい作業しやすいかもね。
子供に持たせるなら、持ち手は短くても良いかしら。
こんなもんかねぇ。」
ミレーニアは、考えつつクレスタを見る。
「ありがとうございます、大変参考になりました。
デックスさん、小さめサイズの見本は、幅も持ち手も細くしたもので宜しくお願いします。
持ち手の長さは、大きめ包丁と同じで。」
クレスタは即座に見本を決める。
「おぅ、任せろ。
大きめ包丁の見本は、まだ問題ないか?」
「問題ねぇな。
試した後は、言われた通り洗ってから保管しているぞ。」
デックスの問いには、ボンゴが応える。
「ところでよ、もう注文貰ってる奴からサイズ変更の希望があった場合はどうするよ。」
確かに、ボンゴの言った可能性もある。
「変更前が名入れしてなければ、受けても良いかな。
名入れ注文は変更不可って注文書に書いておきましょう。」
クレスタはそう言うと、忘れないうちに注文書に追記した。
「他に何か問題点はありますか?」
クレスタの問いかけに、みさとが手を挙げた。
「確か、革で作った鞘も付けてると思うけど、そっちにも名入れできると失くさないんじゃないかなぁと思いました。」
「良いですね、それ!
どうでしょう、デックスさん・ルクラさん。
両方に名入れできますかね?」
クレスタに問われたデックス・ルクラは、顔を見合わせる。
「できるっちゃできるよな。」
「持ち手と鞘の両方に名入れした方が、お客さんに渡す時間違いねぇな。」
「手間賃貰うし、一緒にやるか。」




