お試しにも程がある 241
「待たせたな、包丁代だ、受け取ってくれ。」
家に戻ってから金貨1枚をあっさりと用意し、デックスに手渡したボンゴ。
しっかり稼いでいるようだ。
「あの出来でこの値段は安いんじゃないか?
俺達はありがたいがな。」
「そう言ってもらえると嬉しいよ。
頑張った甲斐があったな。」
「そうだな。
中々ない機会だったから、上手くいって良かった。」
ボンゴの素直な感想に、デックスもルクラも応える。
「だが、小さめサイズを希望されるとは思わんかったな。」
「いつも作ってる普通サイズで良いんじゃないか?」
「そうだな。
持ち手の部分だけ調整必要かもな。」
デックスとルクラが、俺の方を向く。
「なぁ拓海、普通サイズを取りに行きたいんだが、移動を頼めるか?」
それに応えたのは、俺ではなくみさとだった。
「これでいいかな?」
リュックから包丁を取出し、テーブルに置く。
いつも作っているサイズで間違いないことを確認したデックス。
「みさと、用意いいな。
助かるよ。
ボンゴ、このサイズ感でどうだい?」
みさとの出した包丁を、ボンゴが手に取る。
「確かに小さいな、みさと用かい?
持ち手がちょっと足りないかな。
母ちゃん、どうだい?」
急に呼ばれたミレーニアは、キッチンからパタパタと歩いてきた。
「呼んだかい、父ちゃん。」
「あぁ、小さめサイズの包丁を試してほしいんだよ。」
ボンゴは、テーブルに置いた包丁を指さす。
「あら、かわいらしいねぇ。
みさとサイズかい?
細かい作業はしやすそうだけど、ちょっと持ちづらいねぇ。」
「母ちゃんでもそうか、ありがとな。
デックス、持ち手はもう少し大きくできるかい?」
ミレーニアもボンゴと同意見だったため、改良可能かを確認する。
確かに、手の大きさが違うもんな。
「持ち手だけでいいのか?
刃の部分はそのままで。」
デックスから問われたボンゴは、ミレーニアの方を向く。
「私は良いと思うよ。
何に使いたいかにもよるけど、細かい作業するなら軽い方が良いかね。」
「成程、軽量化か。
刃の部分を細くしたら、少し軽くなるかもしれんな。」
「小さくなると、軽量化の刻印までは難しいな。」
ミレーニアの意見に、デックスもルクラも考え込む。
考えている2人に、俺から提案。
「見本作ってさ、完全受注生産にすれば?
持ち手も刃の部分も、その人の好みに合わせるってことで。
日数と値段は要相談かな。
ほら、持ち手に刻印もできるじゃん。」
「じゃあ、注文書はこんな感じかな。」
みさとは紙を出し、スラスラと表を作っていく。
刃の長さ、幅、持ち手の長さ、名前を入れるか。
サイズは決め打ちで、どの組み合わせにしたいかで注文内容が決まる。
勿論、入れたい名前を記入する枠もある。
みさとが書いたものをリュックに入れ、取出した1枚はボンゴ達が見やすいように大きくした。
「これは良いな、俺でもわかりやすいぞ。」
デックスにも渡し、ルクラにも見てもらう。
「ふんふん、出来上がったら間違いないようにこの紙をつけておけば良いな。」
「名前も間違えないように出来るな。」
3人とも納得なようなので、これで決定かな?
「あとは、クレスタにもこの話をすれば良いかな。
面倒だから呼んでこようか。」




