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ちょっとそこの異世界まで  作者: 三毛猫


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お試しにも程がある 240

 「デックスとルクラには、ちょっと魔法かけるよ。」

 ボンゴの歩調についていこうとすると、ドワーフ2人は走っている感じになる。

 見兼ねた俺は、浮遊魔法をかけ、自動的についていけるようにした。

 「助かるぜ、拓海。」

 「こんなに運動するとは思ってなかったよ。」

 デックスもルクラも、やはり疲れていたようだ。

 包丁を担いだボンゴが目的地に到着すると、前回ほどではないが大物が鎮座していた。

 少し小さめの鯨の隣に、鮫も置いてあった。

 「おい、この鮫は誰のだい?

 捌いていいのか?」

 周囲に声を掛けると、返事が返ってきた。

 「ベリーサが今朝獲ったそうだ。

 解体頼めるか、ボンゴ。」

 声の主は、ビアンテ。

 「解体できれば店に出せるんだが、時間が経つと臭くなるからな、どうしたもんかと思ってたんだよ。

 いやーよく来てくれた、ボンゴ。」

 ビアンテの隣には、獲った本人のベリーサがいた。

 「頼むよボンゴ、解体できねぇと折角獲ったのに金にならねぇ。

 母ちゃんに仕事してこいって怒られるよ。」

 がっしりした体型のベリーサが、頭をかいて困った様子だった。

 「おぅ、任せろ。

 新しい包丁が来たから、試させてもらうぞ。」

 ボンゴの声に、周囲から歓声が上がった。

 先ずは鮫から。

 吊るして鰭を取って、内蔵を傷付けないように腹開き。

 色々出したものは、ベリーサがしっかり分けていく。

 あっという間に解体され、何事もなく終わった。

 「家で鰹捌くのと同じくらいに出来たぞ。

 この包丁すげぇな。」

 本当は、もっと時間がかかるらしい。

 この光景を見ていた他の人達が、自分も使ってみたいと群がってきた。

 特注の包丁は共有で使うものなので、皆で試すことになった。

 「デックス・ルクラ、お前さん達の包丁は凄い切れ味だ。

 頼んだ甲斐があったよ、ありがとな。」

 ボンゴからの言葉に、ホッとした様子の2人。

 「特に使いづらい点はなかったか?」

 「ないない。

 寧ろ、力を入れて余分な所切らないように気をつけたくらいだ。」

 デックスとボンゴで、ガッハッハと笑い合う。

 「皆、最近切れる包丁出回ってるが、同じ職人が作ったもんだぞ。

 その職人が、今日来てくれている。

 何か注文あれば今のうちだぞ。」

 ボンゴの大きな声に、皆一斉に振り向く。

 キョロキョロするが、見つからないようだ。

 俺は、ボンゴの肩の上にデックスとルクラを魔法で乗せる。

 やっと皆の目に止まった2人。

 ボンゴの周囲に人の輪ができた。

 「あの包丁すげぇな、うちの母ちゃんも喜んでるよ。」

 「細かい作業が出来るような、小さめサイズも欲しいな。」

 「万が一折れたりしたら、直してもらえるかい?

 凄く気に入ってるんだ。」

 「包丁の持ち手に、名前入れてもらえるかな。

 皆で持ち寄った時に、誰のか分からなくなるよ。」

 「皆同じ物持ちだしたからな。」

 色々意見が飛び交い、最後にはガッハッハと笑いが起こった。

 ボンゴが、肩の上の2人に話しかける。

 「皆、切れ味の良い包丁を使い易いって気に入ってんだよ。

 本当にありがとな。

 特注包丁の支払いは、家に帰ってからでもいいか?」

 「あぁ、宜しく頼む。

 気に入ってもらえて何よりだ。」

 「職人冥利に尽きるってもんだな。」

 デックスもルクラも、心からの笑顔に見える。

 デックスは、出てきた質問にも応える。

 「修理も名前入れも受付けるぞ。

 注文は、販売したクレスタ経由で頼んでくれ。

 小さめサイズも、見本を渡しておく。」


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