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ちょっとそこの異世界まで  作者: 三毛猫


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24/335

お試しにも程がある 24

 「はいはーい、皆さん。

 そろそろ魔力感じるの慣れてきたかな?」

 明るくエルテナが研修生に話しかける。

 「これが出来ると、細かな制御しやすくなるし、できる魔法も多くなるよ。」

 「こんな事も出来んのか。

 何しに来たのやら。」

 「そういうこと言わなーい!

 皆頑張ってるんだから。」

 「族長の命だからやってるんだ。

 お守りをしたい訳じゃない。」

 「うちに魔法のレベル上げに来てるんだから、最初から出来るわけないじゃん。

 そういうとこ短気だよね、スタリオン。」

 「余計なお世話だ。

 そこのお前、もう少し集中しないと上達せんぞ。」

 「何気にちゃんと見てるし。

 くぷぷっ。」

 「煩い!

 お前もお喋りしてないで集中しろ!」

 「はいはーい。

 お、貴方上手くなってきてるね。

 その調子!」


 研修生は車座になり、全体的にエルテナとスタリオンが見ている。

 身体を纏う魔力が、均等に全体的になる様にしている。

 エルテナ達は自然に出来るが、研修生達は集中しないと出来ない状態。

 そりゃ魔法上手く使えないよねとエルテナは思ってはいたが、出来ないと話にならない。

 魔法の詠唱は、この状態にする為にも必要だが、事象を明確に描く事にもなる。

 この準備が出来ないと、上手く発動しない。


 研修生を連れてきた中の2人は、膨大な魔力を常に全身に纏わせていた。

 人間の中でも、あの2人は別格なのかなと思う。

 正直戦って勝てるかどうか。

 エルフが魔法で負ける?

 あり得ないでしょ!とは思っているが、肌で感じる感覚は疑いようもない。

 スタリオンが大人しく従っているのも、族長には勝てないからだ。

 族長と比べても遜色ない2人を見て、顔色を無くしてたから今は大人しいのだろう。

 何時もは俺様で威張ってるくせに。

 いい気味だとこっそり思う。


 何なんだよ人間てやつは。

 できない奴ばかりだと思ってたのに、族長並みのやつ来るなんて。

 とっとと吠え面かかせて追い出したいのに、出来ねぇじゃねぇか。

 スタリオンは、族長から研修を頼むと言われて、うわべでは了承したが正直見下していた。

 どうせ人間なんて、偶々魔力を使える個体が居るだけだろうと。

 そんな奴らに何を教えても、時間の無駄ではないか。

 己の能力を自覚させて、追い返そうと。

 ところがどうだ、何なんだあいつらは。

 しかも、片方は族長と知合いっぽかったぞ。

 人間のクセに馴れ馴れしい。

 全く持ってムカつく。

 俺でさえ敵わない族長に、あんな態度取るなんて。

 エルフの誇りが許さない。

 早く追い出したいが、族長の目の届かない所で仕掛けないと…


 拓海・レジアス・ディグニティの3人で話が盛り上がっている頃、みさとと遊んでいたシビックは研修している部屋に目を向けた。

 拓海に悪意を向けている奴が居る。

 みさとに言うと、直ぐ突っ込んでくから駄目だよなぁ。

 後で拓海に声掛けよう。

 僕が退治しても良いけど、後々大変になりそうだし。

 でもこのチクチクする感じ、どうにかしたい。

 アイツにだけ威圧するか。

 

 シビックはピンポイントに、悪意の元=スタリオンだけに威圧を向けた。


 お、ビックリしてる、よしよし。

 何処から来てるかもわからないだろうから、少しほっとこう。

 「シビック、どしたの?

 なんかあった?」

 「何にもないよみさと、気の所為だよ。」

 「その割には嬉しそうだよ。」

 「そうかな、えへへ。

 ご飯楽しみだね!」

 「まだお昼には早いんじゃない?

 お腹空いたならおやつあげるよ。」

 「食べる!」

 こうして、時は平和に過ぎていった。


 研修生達は、へとへとになりながらも少しずつ成果を見せ始めた。

 あまり多くはない魔力だが、全体的に纏わせてる。

 意識しなくてもこの状態になれば、人間でもかなり使える部類になるだろう。

 後から顔を出したディグニティは、そう感じた。

 「エルテナ・スタリオン、教え方上手いな。

 明らかに上達しているじゃないか。

 流石だねぇ。」

 「いえいえ、みんなが頑張ってるんですよー。」

 「まだまだこんなもんじゃ、使い物になりませんよ。」

 エルフ3人の会話に、レジアスも入る。

 「こんなに早く上達するとは。

 連れてきた甲斐があった、感謝する。」

 「まだ基礎しかやってないので、応用はこれからですよ!

 楽しみだね、みんな!」

 元気のない声でエルテナに応える研修生達。

 そんな様子を見て、ディグニティは声をかけた。

 「皆さん、お疲れのようですね。

 少し早いですが、食事にしますか。」

 研修生だけでなく、エルテナ・スタリオンからも快い返答が返ってきた。


 いくつ部屋があるんだろうと思うくらい、抜けて抜けて抜けた先に大きな部屋があった。

 大きな円形のテーブルがあり、人数分の椅子もある。

 パンと飲み物はセットされていて、全員が席に着いてから料理を運んでもらう。

 俺は何となくテーブルに魔法がかけられている気がしてじーっと見ていたら、やはりかけられていた。

 どうやら、指定した人数用の大きさになり、椅子もセットされるみたい。

 内心驚いていると、ディグニティからニヤッとされた。

 しかも念話まで飛んできた。

 (拓海、テーブルの仕掛け気づいたのかい?)

 (これ凄いね。

 指定の人数分座れる広さ・椅子の用意までされるみたいだけど、合ってる?)

 (流石だねぇ、わかるんだ。

 良いでしょこれ。)

 (会議とかも便利そうだね。)

 ディグニティのニヤニヤが止まらない。

 隣のエルテナ・スタリオンも、ディグニティのご機嫌なところを見て、一緒にニコニコしている。

 そんな中、テーブルに運ばれた料理は良い香りがしてきた。

 勝手な想像で、エルフだから肉や魚・乳製品も食べないと思っていたが、どうやら違うようだ。

 お肉も出てくるが、野菜や他の自然の恵みもふんだんにあしらわれている。

 来てみないとわからないもんだ。

 食事と共に会話も進み、楽しい時間が過ぎた。

 食後の休憩後、研修再開。

 ずっと魔力を纏った状態で受けることと最初にエルテナから指示があり、研修生達の顔つきは険しいものになった。

 ディグニティも壁際で見ているため、エルテナ・スタリオンは大張り切り。

 応用とのことだが、先に聞いていた研修生のできる魔法以外にするそう。

 「先ずは、転移の魔法教えるように言われてるけど…やってみようか!」

 「こいつらじゃまだ早いんじゃないか?」

 「前回来た人は直ぐ覚えたから大丈夫だろうって、族長言ってたし。」

 「そいつがどの程度のやつか知らないが、出来たならやらせてみるか。」

 「やろうやろう!」

 研修生は聞いてはいるが、魔力維持に集中してそれどころではない。

 スタリオンが実践して見せて、エルテナが解説。

 驚く研修生達だが、魔力が散漫になるものもいて注意を受ける。

 「これくらい基礎のうちだよ。

 頑張ってねー!」

 「出来るまでやれば出来るようになる。

 実践あるのみ。」

 

 なんだかんだ面倒見の良い2人を眺めながら、俺はディグニティに質問する。

 「基礎って何やってたの?」

 「ん?魔力の纏方かな。

 みんな薄いけどできるようになってるね。」

 「俺達も出来てるの?」

 「拓海とレジアスは、常に纏ってるから意識してないんじゃないかな。」

 「レジアス、なんかしてる?」

 「何もしとらんぞい。」

 「自然体でそれは恐ろしいねぇ。

 纏ってる魔力見えないのかな?」

 成程、見えるもんなのか。

 じっと自分の手を見るが、よくわからん。

 ナビ先生、助けて!

 『俯瞰図で表示します。』

 見えた画像は、自分を覆っているふよふよした何か。

 隣のレジアスのも同じように見えた。

 これって何かな?

 『纏っている魔力です。』

 ほぅほぅ、これかぁ。

 ディグニティは纏っている色が濃いようだが、これは何?

 『大きな魔力を圧縮しているので、濃い色に感じるのではないかと推測されます。』

 へー、凄いなぁ。

 俺もできるかな?

 何となく、ぎゅっと縮まるイメージすると、ふよふよが小さく、色濃くなってきた。

 不意に、ディグニティからの視線を感じる。

 目が合うと、2人でニヤッとなる。

 (拓海、何を練習しているんだい?)

 (なぁに、ディグニティの真似してみただけだよ。)

 (何も教えてないのに、おかしいなぁ。

 しっかり圧縮できてるじゃないか。)

 (見本が良かったんじゃない?先生。)

 (そういうことにしておこうかね。)

 魔力を圧縮したことで、レジアスのものより小さく見える。

 手のひらを改めて見ると、濃い色の膜が見える。

 先程は周りと変わらなかったので、違いがよくわからなかったのかも。

 ひとりで納得してから、みさととシビックを見る。

 みさとは、全然違う色だが、大きなふよふよが纏わりついている。

 色が濃い薄いではなく、光ってる感じ。

 シビックは、黒に近い濃い色で、しかも大きなふよふよだ。

 前から思ってたけど、コイツは特別個体とはいえよくわからないんだよな。

 今は味方だから良いけど。

 何も考えてなさそうに、今もおやつもらってる。

 ご飯食べたばかりじゃないのか?

 みさとが甘いのか?

 あ、一緒に食べたいだけなのか。

 見てるだけでほっこりする。

 

 場違いな考えが顔に出ていたのか、レジアスが呆れ顔で俺を見ている。

 周りを憚ってか、こちらも念話が飛んできた。

 (お気楽な顔しとるの。)

 (個人的には楽しんでるよ。)

 (それはそれは。

 ところで、お主魔力の操作しておるのかのぅ。

 流れを感じるが。)

 (流石レジアス、魔力の圧縮してみた。

 ディグニティみたいに濃い色の魔力になるかなーって。)

 (上手くできたんじゃろ?)

 (多分できたと思う。

 レジアスは見えるの?)

 (魔力の動きはわかる。

 研修生達の上達ぶりも、魔力の纏わせ方でわかるわい。)

 (何だ、知らなかったの俺だけか。

 ちょっと色濃くなったでしょ?俺の魔力。)

 まじまじと全身を眺めるレジアス。

 (何と器用なことしとるんじゃ。

 ディグニティは種族違うから色が違うと思っていたが、そうでは無いのか。

 圧縮のぅ…)

 独りの世界に入ってしまったレジアス。

 目を閉じると、あっという間に圧縮された魔力になった。

 (これでどうじゃ?)

 (やるね、レジアス。)

 (イメージしやすかったからのぅ。)

 (やっぱ魔法はイメージ大事だよね!)

 (そうなんじゃよ。

 中々伝わらないがのぅ。)

 (無詠唱が広がらない理由かな?)

 (正解じゃ。

 若い者なら理解できるかと思い連れてきてみたんじゃが…)

 (まだ研修中だし、終わってみないとわからないんじゃない?)

 (そうじゃのぅ、気長にやる他ない。)

 声には出さず、2人で顔を見合わせ頷く。

 上に立つ人は大変だね、ほんと。


「あれー、おかしいねぇ。

 なんで中々出来ないんだろう?」

 「やっぱり早かったんじゃないのか?」

 「族長、どう思います?

 もう少し続けていいですかね?」

 「まだ初日だし、続けようか。」

 「はーい!

 じゃあみんな、張り切っていこうか!」

 「へばるにはまだ早いぞ。」

 慣れない魔力操作に新たな魔法の練習となると、流石に魔力も気力も体力も持たない。

 徐々に纏っていた魔力も解除されていった。

 「じゃあ一旦休憩にしましょう。

 お疲れ様でした!」

 エルテナの号令後、研修生達はバタバタと横になる。

 魔力の急激な減少を察知して、レジアスは魔力回復のポーションを研修生に配った。

 みさとは、チーズとナッツの入ったクッキーをお茶菓子として提供。

 ディグニティの指示で、全員にお茶も配られる。

 エルテナとスタリオンは、ディグニティの近くに集まってきた。

 「ねぇ族長、これひとつ教えて今日は終わりかな?」

 「やはり初級のものから教えたほうが良かったのではないでしょうか。」

 「そーだねぇ、出来るもの除くと初級はないんじゃないかなぁ。」

 「寧ろ、魔力操作だけでも良かったんじゃない?」

 「前回使者で来た人は、直ぐ覚えたんだけどなぁ。

 おかしいなぁ。」

 「アイシスのことかのぅ。

 あやつは、我が国でも優秀な者じゃ。

 そうか、あれと比べられると一段、二段落ちるかのぅ。

 研修生達には悪いことしたかの。」

 「おやおや、レジアスは過保護だねぇ。

 できない事をさせて上達して欲しいから送り込んだんじゃないのかい?」

 「それはそうじゃが、段階があるじゃろ。」

 「ふむ。

 では、魔法は転移魔法のみで。

 使えるようになれば、魔力操作は充分でしょう。」

 「そうしてもらえるかの。」

 「というわけだ二人共。

 メインは魔力操作、出来るなら転移魔法も覚える感じで進めてもらえるかい?」

 「はーい!」

 「わかりました。」

 「明日もあるから、焦らなくて良いよ。」

 「宜しく頼む。」

 エルテナとスタリオンは、研修生達の方に向かって歩き出す。

 その途中、小声でエルテナが声をかけてきた。

 「ねぇスタリオン、族長の側の2人さぁ、魔力の色変わってたよね。」

 「お前も気が付いたか。

 族長が何かしたのか?」

 「会話してる感じはしなかったよ。

 人間じゃ、念話できないでしょ。」

 「あの魔力量だし、出来てもおかしくないんじゃないか?」

 「えー、何それ。

 スタリオンが人間認めてるし。」

 「煩い、出来るやつは見ればお前でもわかるだろう。」

 「まーね。」


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