お試しにも程がある 217
「そんな簡単に言うがな、拓海よ。
こんな固そうな実は簡単には…開いたわぃ。」
苦も無くパカッと開いた樹の実。
中からは、美味しそうなカレーが出てきた。
ちゃんと温かいままのようだ、良かった。
「なんと、カレーか?
フォークも付いとるとは、親切なのか不親切なのか。
待て、このフォークは金ではないか?」
フォークを持ち上げたレジアスは、まじまじと見てから俺を見る。
「おほん、まさかとは思うが、何も関わってないじゃろうな、拓海。」
「え、ダンジョンの管理者に会う機会があってさ、人を呼び込める方法を一緒に話し合ったんだ。
そしたらさぁ、意外に盛り上がっちゃって楽しかったよ。
ねぇみさと、聡太。」
俺は、2人の方を見て同意を得る。
レジアスは、開いた口が塞がらない。
「色々言いたいことはあるが、まず聞こう。
その管理者とは、どういった者なんじゃ?」
じっと見つめるレジアスから視線を逸らし、簡潔に回答する俺。
何かヤバかったかな?
「詳細は省くけど、ベゼル経由で知り合った。
どうやら、精霊らしい。
各ダンジョンに1人ずつ担当がいるみたいだよ。」
「ほぅ、その口振りだと、全員に会っているのかな?」
「そうそう、6人とも個性豊かで楽しい話し合いだった。」
「それで、人を呼び込む企画を立ててきたと。」
「うん、有意義だったよ。
言ったら何でもできちゃうし、精霊って凄いよね!」
「何を言っとる!
精霊と会話じゃと?何故私も呼んでくれんのじゃ!」
「そこなの、レジアス?」
レジアスのツッコミどころに驚く俺。
「てっきり怒られるかと思ったよ。」
「そんなことは今更じゃろ。
私の心労も考えろ。」
「あ、はい。」
「で、どうなんじゃ、私も会えるかのぅ?」
結構乗り気だな、レジアス。
「ダンジョンに入れば、話せるようにはなってる。
ただ、誰のダンジョンかは入ってみないとわからないんだよ。
まだその情報はなくてね。」
「成程な。
因みに、次にダンジョンに向かうのはいつなんじゃ?」
「明日行くよ。
聡太いるうちに、制覇しようかなって思ってる。」
それを聞いたレジアスは、聡太に不憫な目を向ける。
「聡太坊、お主の親は厳しいのぅ。
初心者がダンジョン入るとかありえんぞ。」
「え、そうなんですか?
魔法の試し撃ちもできたし、シビックと一緒にボス撃破もしてきましたよ。
まぁ、駄目でも両親が何とかしてくれるって安心感はありましたけどね。」
「本当にできた息子じゃな、聡太坊。
拓海、聡太坊に無理させんようにな。」
聡太と俺とで、対応違いすぎない?レジアス。
「楽しんでるうちは良いんじゃないかな。
もっとも、こっちで訓練して加減が分からないと、向こうでやらかすかもしれないしね。」
俺の言葉に、みさとも聡太も力強く頷く。
「そうか、魔法のない世界じゃったな。
そういうことであれば聡太坊、頑張るんじゃぞ。
まぁ、ずっとこっちでも良いのではないか?」
「それは聡太が決めることだよ。
今はお試し期間だからね。
向こうに行ったら行ったで、こっちと通話できるかも試さないとだけど。」
「ほぅ、今までできなかったんじゃな?」
「そうなんだ。
この間ベゼル来た時に、あるアイテムでベゼルとも話せるよって言われてさ。
じゃあ、聡太にも持たせてできるか実験と思って向こうに行ったんだ。」
「それが、ダンジョンにつられてこっちに来ちゃいました、あはは。」
明るく話す聡太を見て、嬉しそうなレジアス。
「好きなようにするが良い。
経験は大事じゃからな。」
「やっぱ俺と態度違うよね、レジアス。」




