お試しにも程がある 216
「よ、宜しくお願いします、レジアスさん。」
聡太は、緊張した面持ちで挨拶する。
魔法協会でレジアスの部屋まで行き、測定する。
部屋に行くまでと水晶が来るまで、それぞれちょっと時間がかかったので、大ごとに思えてきたようだ。
「聡太坊、そんなに緊張せんでも大丈夫じゃ。
何があっても発行してやるわい。
気楽にな。」
流石頼れるおじいちゃん。
「でも、ここって特別な部屋じゃないんですか?
他の人達、凄く注目してた気がするんですけど。」
「あぁ、協会長室じゃからな、普通は入れんよ。
職員でも許可がないと入れないようにしてある。」
「えっと、俺の用事だけでこんな凄い部屋使って良いんですか?」
「私が協会長じゃからな、問題ない。
寧ろ、下を騒がせないための措置じゃ。
拓海の時も大騒ぎじゃったようだし。」
面白そうに俺を見るレジアス。
「俺のせいじゃないし、ベゼルのせいだし。」
「あはは、私も騒がれたからね、しょうがないよ。」
「これで俺、大したことなかったらどうしよう。」
「異世界来てまで成績とか出来を気にする必要ないだろ。
心配なら、しなくてもいいんだぞ。」
「なぁに、SSランクは確定じゃ。
心配せんでも良い。」
聡太に甘いな、レジアスじいちゃん。
「ほれ、この水晶に触ってみろ。」
レジアスに言われた通り、聡太は水晶に恐る恐る手をつける。
思った通り、虹色に光り砕けた。
「どうしよう、壊しちゃった!」
「うん、俺と一緒だ、安心しろ。」
俺は聡太の肩に手を置き、うんうんと頷く。
「よかったね、聡ちゃん。
思った通りSSランクだ。」
「あれだけ魔法が使えて下のランクだったら、それはそれでびっくりだよ。」
みさとと俺のお墨付きで、一安心した聡太。
レジアスは何事も無かったかのように水晶を片付け、俺のと同じ証明書を用意した。
「おめでとう聡太坊、SSランクじゃ。
安心したかのぅ。」
「ありがとうございます、レジアスさん。
良かったぁ。」
嬉しそうな聡太を見て、レジアスも微笑む。
「よし、これで心置き無く明日次のダンジョンに行けるな。」
「次の?
拓海よ、何処のダンジョンに行くつもりじゃ?」
「確か、フーガにあるって聞いたから行く予定。」
「ふむ、フーガか。
あそこは中々攻略進まないと聞く。
そんなに強い魔物がいるのか、そもそも1階層しか無いのかも不明じゃ。」
レジアスは難しい顔をする。
「そうなの?
俺達、そこで4つ目になるんだ。
何処も結構な階層あったから、攻略進まないのは降りられないんじゃないかな。」
「楽しみだねぇ、たっくん。」
俺とみさとののほほんとした会話に、呆れた感じのレジアス。
「まぁ、今更驚くまいよ。
もう半分攻略したか。
何か珍しいものでもあったかのぅ。」
「珍しいと言うか、出来たばかりというか。
樹の実が実装されたよ。
はい、実物。」
俺はウエストポーチから樹の実を1つ取り出す。
「中々の大きさだな。
こんな大きな物、落ちてきたら大変じゃわい。」
「そこは考えなかったな。
取り敢えず、開けてみて。」




