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ちょっとそこの異世界まで  作者: 三毛猫


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215/335

お試しにも程がある 214

 「仕方ないな、これで最後だよ。」

 最初から剣を持って待ち構えるみさとの許しを得て、中身が残った樹の実を地面に置いてみる。

 少しして、またも触手が生えてきて、近くの足に絡まる。

 順調に片足を絡め取られ、他にも侵食しようとしてくる。

 「まだかな、たっくん?」

 「どこまで行くか見ないとさ、もうちょい待って。」

 先程と同じように上に進み、顔まで来ようとしている。

 「そろそろ喋れなくなるんじゃないの?」

 「そうだね、手も抑えられてきたね。」

 「切るよ?」

 「お願いします。」

 最後どうなるか見たいから、ちょっと勿体ないけどね。

 みさとは、俺には傷1つ付けず、触手だけ切って捨てた。

 「母さんお見事。」

 「これは残った中身食べられなさそうだな。」

 聡太とシビックは離れたところから見ている。

 本体に傷をつけないようにお願いしてあったので、再度触手が生えるか確かめる。

 再度生えてくることは確認できた。

 また切ってもらい、触手が生える前に蓋が開けられるかも試した。

 パカッと開いて、中身は食べる前に戻っていた。

 「これ、無限再生かな?」

 「1個拾って、食べてから蓋して持ち歩けば、中身増えてるかなってこと?」

 「そうそう。」

 「実験するの?」

 「そうそう!」

 ウンザリ顔のみさとと、試したい俺。

 「持っている分には、触手生えないし良いんじゃない?母さん。」

 「僕も中身いっぱい食べたい!」

 2人共、援護射撃ありがとう!

 「ほら、食べ終わってから蓋して中身変わるかとか、ダンジョンの外に持ち出したらどうなるかとか確かめないと危険でしょう。

 俺達は良いとしても、他の人で危険な目に遭ったら、人来なくなっちゃうよ、きっと。」

 「ダンジョンは危険なものって、職員さん言ってたと思うんだけど。

 未知を知ることも冒険者の仕事じゃないの?

 お膳立てばかりすると、安心しきっちゃうんじゃない?」

 御尤もとしか言いようがない、みさとのご意見。

 「俺が知りたい!」

 「じゃあしょうがない、やろうか。

 危なそうなら直ぐ切るからね!」

 「了解。」

 「何回も言うけど、たっくんが危ない目に合うのは看過できないからね。」

 「き、気を付けるよ。」

 そんな俺とみさとのやりとりを見て、聡太とシビックはクスクス笑っている。

 「シビック、中身食べるか?」

 「食べる!

 今度は全部食べていいの?」

 「そうだな、増えるかの実験だし、全部食べてくれ。」

 俺が許可を出したことで、みさとがフォークを用意しシビックに渡す。

 いつも通り器用に食べて、あっという間に空っぽ。

 「ごちそうさまでした!」

 シビックは、殻になった器を俺に返す。

 蓋をして、そのまま進むことにした。

 聡太とシビックが先頭、後ろで俺が樹の実を持ち、みさとは魔石回収袋を持つ。

 「家に帰ってから、樹の実出してみないとかな?たっくん。」

 「そうだね、ダンジョンと同じ動きするかは確かめないと。」

 話しながらも、俺が抱える樹の実を見ているみさと。

 「持ってる間は、うんともすんとも言わないね。

 ニョキニョキしないで大人しい子だ。」

 「これさ、無限再生可能なら、冒険者の食料問題解決じゃない?」

 「飽きないかは別としてね。

 それを考えると、1パーティーで複数持ち歩くといいご飯になるよね。」

 「何が出るかは運次第か。」

 「同じ中身だらけだと、それはそれで大変だよね。

 食べる時も、持ってないとだし。

 そういえば、食品だけでスプーンとかは再生しなかったよね。」

 「何回も開けて回収じゃ、ちょっとなぁ。

 流石に数熟して欲しいところだよね。」

 「冒険者も大変だね。」

 「俺達もそうなんだけどな、みさと。」

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