お試しにも程がある 212
「では、そろそろ戻してもらえるかな。
続きは追加コンテンツあるんだよね?」
「追加コンテンツ?
ええと、食べ物の実が成るようにはなっているわ。」
俺の問いかけに、フローリアンは首を傾げながら応える。
「それそれ、ありがとう。
楽しんでくるよ。」
「あの!アスコット様のお気に召すようにしたいから、また相談してもいいかしら…」
そっぽを向きながらも声をかけてきたアスカに、俺もみさとも笑顔で応える。
「勿論だよ、待ってるさ。」
「またアスコット様来て何か食べたら、連絡するね、アスカさん。」
「ま、待ってるの!
ダンジョンに入ってくれれば、ここに来られるようにしてあげるわ。」
必死なアスカの様子に、フローリアンは微笑む。
「それは良いわね。
干渉し過ぎないようにはするけど、会話もできるようにしておきましょう。
皆とね。」
「それは楽しそうだ。
これからも宜しく。」
何か、何処に入っても監視されてそうな感じだが、気にしたら負けだ。
戻してもらった時点から、楽しむとしよう。
中ボスの部屋から先は、俺達も初めて進む。
まだ続きなので、聡太が魔法で倒していくそうだ。
階段を降りて通路に出ると、早速樹の実発見。
聡太が取ろうと手を伸ばすと、蔦がペシッと手を叩いた。
おや、退治しないといけない系か。
聡太は落ち着いて、凍らせている。
叩かれる心配がなくなったところで、樹の実をゲット。
「開封の前に、バッグに入れたらどうだ?
増えるぞ。」
「成程ね、じゃあ…はい、今度はウエストポーチにどうぞ。」
「お、サンキュ。」
それぞれ1回入れてから、開封。
「あ、ハンバーグだ、美味しそう。」
「ナイフしか付いてないな。
スプーンだけと、どっこいかな。」
「ナイフなら、切って刺して食べるでいいじゃん?
シビックも食べるか?」
「うん、食べる!」
聡太とシビックで美味しくいただき、ナイフはバッグに入れて器はその場に置く。
すると、地面に消えていった。
「成程、食べ終わったら置いておくことで回収してくれるんだ。
至れり尽くせりだな。」
「綺麗なダンジョンの運営だよね。
言われてみれば、ごみとか無いし。」
変なところで感心する俺とみさと。
「逆を言えばさ、置きっ放しにしたら無くなるってことだよね。
折角取ったものでもさ。」
「どれくらいの時間かは時と場合によるのかな。」
「中身食べなくっても無くなるかってこと?」
「そうそう。
人数分取ってから食べようとするの、難しいなと思って。」
聡太とみさとの会話に、ちょっと納得。
まぁ、開けてみないと何が入っているかはわからないので、数揃えるまで開けないも難しいかもね。
「持って行くには、あの樹の実は大きいよね。
俺でも両脇に抱えて2つが限度かな。」
「荷物持ったまま戦闘は厳しいし、かといって置いておくと無くなるし。
面白いこと考えたな。」
ゲームとしては痛し痒しな絶妙なバランス。わかってるね、皆!
「たっくんみたいに無詠唱で魔法使えないと、両手塞がったらアウトだよねぇ。
ご飯を取るか、命を取るか。」
「上の方は、そんなに強くなかったから、程々で帰るんじゃない?」
「攻略はされないけど来る人は増えそうだな。
いい感じじゃないか?」
3人で頷き合う。
「あ!スプーンとかだけ持っていかれそうじゃない?
それもありかな?」
みさとは、食べ物を無駄にしたくないらしい。
「次見つけたら、実験しようか。
スプーンだけ抜いたらどうなるか。」
「おぅ!じゃあ進むよ。」
また聡太とシビックが先頭で、進んでいく。
「次は何が出るかな、楽しみだ。」
「シビック、実験終わるまで食べちゃダメなんだよ、わかってる?」
「わかってるけど、最後には食べられるんでしょ?聡太。」
「なくならなければね。」




