お試しにも程がある 210
「それなら、私達の住処に行きましょうよ。
落ち着いて話ができるわ。」
みさとの問いかけに、フローリアンが応える。
そんな気軽に行っていいのか?
聞くまもなく、全員で移動した。
誰の魔法かはわからないが、敷物もカレーも大皿の唐揚げとメンチカツも、出したもの全て一緒に持ってきた。
「後で元の場所に戻してもらえるんだよね?」
「勿論よ、任せて。」
聡太・シビック・ロデオ・モコは、食べてる最中に移動し、自動的に椅子に座っていた。
俺達も結果椅子に座った状態だ。
「前回来た時より、テーブル広くない?」
「ここのテーブルと椅子はね、人数で自動で変わるようになっているわ。
便利でしょ。」
「魔道具ってこと?」
「そうかしらね、最初からあったから気にしたこともないわ。」
フローリアンの回答に、呆気にとられる俺。
便利過ぎないだろうか。
うちのもやってみよう!
その間にも、みさとはリュックから色々取出していた。
かつ丼・麻婆丼・親子丼・中華丼・オムライス。
甘い物は、アップルパイ・チーズケーキ・ドーナツ・パンケーキ・プリン・みたらしとあん団子。
おかずとして、唐揚げ・メンチカツ・とんかつ・コロッケ・餃子・春巻。
「まだ出す?」
テーブルいっぱい出したものを見て、管理者達は驚く。
「何これ、食べ物ってこんなにあるの?」
食べ物に興味津々だったジェミニも、数の多さに驚く。
「まだリュックの中の一部だよ。
サンドイッチも出せるよ。」
「「サンドイッチ?」」
「パンに具を挟んで、持って食べられるものかな。
あ、あんまり出すと、クレスタさんに怒られるかな。」
メニュー提供している物ばかりなので、みさとは心配になったようだ。
「そこはさ、ダンジョンで取れるものが食べられるって触れ込みにすれば、宣伝になるんじゃない?」
「お金を出すか、体を張って取りに行くか、みたいな?」
「そうそう。
聞いてみようか。」
(クレスタ、今いいかな。)
(拓海さんだね、どうしたの?)
(クレスタの店で出している料理の一部を、ダンジョンの景品と言うか、中で取れるものにしたいと言われてるんだ。
どうかな?)
(よくわからないな、ダンジョンで取れるもの?
魔石とか武具とかと同じ扱い?)
(今候補に出てるのは、ダンジョンの中で樹の実を取れるようにして、その中に入れるみたい。)
(そんなこと出来るの?凄いね。
じゃあ、使うもの教えてくれれば、ダンジョンに入らなくても食べられるメニューってつけられるよね。)
(まぁ、そうなるよね。
いいと思う。
関連性を問われるとどうしたもんかとは思うけどさ、ダンジョンのある地方に出店しやすいんじゃない?)
(流石拓海さん、それで行こう。
因みにさ、ダンジョン毎に出るものは分けるよね?
いくつか共通の物あってもいいけど、このダンジョンでしか取れないものも作らないと駄目だよ!)
(おぅ、管理者に言っとくよ。
じゃあ、決まったらまた声かけるね。)
(うん、出店準備して待ってるよ。)
相変わらず商魂逞しい。
「出しても大丈夫だって。
ダンジョンのある地方に、出店しなきゃって言ってたよ。」
「良かった。
フローリアンさん、これらを使えますよ。」
ホッとしたみさとは、フローリアンに声をかけた。
「そうそう、ダンジョン毎で出る物変えた方が特色出るんじゃないかって言ってたよ。」
「流石クレスタさん、よくわかってる。」
「と言うと?」
俺とみさとの話を聞いていたフローリアンが、疑問を口にする。
「全部同じものが出るんじゃなくて、この食べ物はこのダンジョンでしかでないってすれば、食べたければそこに行くしかないよねって話。」
「そういうものなのね。
面白いわね、人間てよく考えるわ。」
「どうせならさ、おまけで金のスプーンとか銀のスプーンとか付けたら?
ご飯は同じ物食べられても、中で取れたものはおまけがつくならコレクターズアイテムになるんじゃない?」
カレーを食べていた聡太が、スプーンをふりふりしながら意見する。
「それはありだな。
だが、それは可能なのかな。
フローリアンさん、用意したり一緒に入れたりは出来る?」
「スプーンというのは、これの事なの?」
フローリアンは、先程まで自分で使っていたスプーンを取り上げる。
「そうだよ。
スプーン・フォーク・ナイフでセットかな。」
俺の言葉に、みさとはリュックから実物を取出して、見せる。
「簡単な造りだね、これ。
でも、食べるのには丁度いいか。
僕作ろうか?細工物好きだし。」
フィリーはフォークを取り上げて見ている。
「素材が金とか銀とか、価値のある金属でできたものなら、売ってお金にしてもいいしね。」
「本数揃えば、家族で使えるね。」
俺もみさとも意見を出す。
「金属は問題ない、加工も大丈夫そうだよ。
中に入れるのは、宝箱と同じでいいんだよね、フローリアン。」
「そうね、フィリー。
何も問題無いわ。」
「私なら、持ち手のところに魔石を埋め込むかしら。
きっと綺麗よ。」
アスカも思ったことを口にする。
「いいねそれ、色もいくつもあるしそれもやってみるよ。
ありがとう、アスカ。」
「な、何よ。
ちょっと言ってみただけじゃない、別に何でもないわよ。」




