お試しにも程がある 206
「行って遊んでみる?
戻りたくなくなっても知らんけど。」
「行く行く!
ダンジョン攻略したーい!」
「じゃあ、皆で帰るか。」
みさとが俺の服の裾を引っ張る。
「ねぇたっくん、車出さなくても行けるのかなぁ。」
「お、いいねみさとさん。
実験だ、やってみよう。
あ、靴だけは履いてな。」
結果、玄関で全員靴を履いた状態で固まり、転移。
無事できたようで、誰も欠けることなく家に着いた。
「やっぱ広いね、この家。」
「だろ?渾身の作だよ、君。」
「俺も家かマンションか買ったら、やってみよう。」
2度目ながら、キョロキョロする聡太。
「ねぇ聡ちゃん、家の外見る?」
「見る見る。」
みさとに連れられて、聡太は外に出る。
「何か、普通よりちょい小さい感じの家だね。」
「外見はね。
一応、知らない人来たとき用に、見た目通りの部屋もあるよ。」
扉を開けて、中に入る。
「普通の部屋だね。」
「うん、あの家に繋がってるとは思えないでしょ?」
「良くできてんなー。」
その奥の扉から、俺が出迎える。
「だろ?
知ってる人は普通に中に入れるし。」
「これやったのも父さんでしょ?凄いね。」
「魔法担当は俺だからな。
気が済んだら、早速ダンジョン行くか。」
「「おぅ!」」
転移でひとっ飛び、追い出されて攻略完了していないオッティのダンジョンに来た。
「聡太が倒してみるか?
ほぼほぼみさと1人で終わっちゃうんだけど。」
「魔法試したい!俺やる。」
「フォローはするから無理すんな。」
俺が声をかけ、シビックは聡太の肩に乗る。
「俺もついてるぞ、聡太。」
「宜しく、先輩。」
前を行く聡太達を、後ろから俺とみさとで見守る。
「ねぇたっくん、使い方教えたの?」
「いや、全く。
感覚で何とかなるんじゃない?」
「直感派かぁ。
怪我しないと良いけど。」
「そんな大した魔物出ないでしょ。
大丈夫だって。」
「シビックはやっぱり良いお兄ちゃんだね。」
「頼もしい限りだ。
今回は一緒に散歩だな、みさと。」
「そうだね。
魔石の袋持とうか?」
歩きながら、楽しい会話が続く。
「お、やっと第一魔物登場だな。
聡太、頑張れ。」
「今更だけどさ、呪文とか要らないよね?」
「要らない、どうしたいか考えれば良いよ。」
「わかった。」
少しすると、魔物は火に包まれた。
燃え尽きて灰になり、魔石だけが残った。
自動で袋に入る魔石。
「やった、出来たよ!」
「おぅ、頑張ったな。
ダンジョンの中は密閉空間だから、次からは火魔法以外で倒してくれ。」
「そっか、ごめんごめん。
やっぱ安直に燃えろって考えちゃった。」
「水でも風でも切れるし、土で押しつぶすでもありかな。
氷や土の礫で、数多い敵を狙い撃つのもありだし。」
「言われてみれば、そうだね。」
自分で言っておきながら、ふと思った。
ナビ、多数の敵に狙いを定めて自動で当ててくれたりする?
『可能です。』
やった、自動ロックオン確保。
「あー聡太くん、俺達ナビ付いてるから、ナビの照準で誘導も可能だって。」
「え、凄くない?
待ってよ、俺達って俺も入ってる?」
「付けたかなぁ、どうかなぁ。
自分で付けてみれば?
ダンジョンの地図も出してくれるよ。」
腕組みして考える聡太。
暫く待つと、ガッツポーズをした。
「やった、できたよ!
ビットだかファンネルだかみたいに動かせるって。」
「考えることは同じだな。
できたようだし、良かった良かった。
じゃ、そろそろ進むか。」




