お試しにも程がある 204
「2人が帰ったら、静かになったね。」
ベゼルとアスコットは、みさとからお土産詰め合わせを貰って帰っていった。
「アスコットさん、いい人?だったね」
「そうだね、ベゼルより普通の人だった気がするよ。
シビックは知り合いだったんだね。」
「アスコットはオデッセイ様大好きだから、僕も可愛がってくれてたんだ。」
「じゃあ、良い人確定で!」
シビックの言葉に、みさとが反応。
その通りだと、俺も思う。
「ベゼル見てたらさ、好き放題するかと思ってたけど、理知的な方だった。
比べる対象が悪いかもだけどね。」
シビックは大きく頷き、みさとは苦笑い。
「ねぇたっくん、他のダンジョンも行ってみるんでしょ?
いつ行く?」
「その前にさ、聡太のとこ行こうかと思ってるんだよね。」
「聡ちゃんのとこ?
どしたの、何があるの?」
驚くみさとに、わかりやすく説明。
「いやね、ベゼルが王冠の話してたじゃん。
聡太ともできないかなって思って。
今は、こっちとあっちだと聡太と念話出来ないんだよ。」
「そうなんだ。
王冠持たせて、できるか試すやつ?」
「そうそう。
できれば付随して試したいものもあるしね。」
「ふーん。
善は急げ?」
キラキラした目で見つめるみさと。
いつもながら、直ぐやりたいという行動力には感服する。
「今からか。
確か前回は日曜日の午後くらいに戻ったっけか。」
「聡ちゃん、明日仕事って言ってたもんね。」
「パパっと渡してくるか。
長居すると、俺達も明日仕事だ。」
「なんか、凄い久しぶりな響きだね。
出来るかなぁ。」
言われてみればその通り、1年はしていないことに気づく。
「試しに仕事してくる?
仕事の間は、シビックは暇かもね。」
「向こうに遊びに行くの?
聡太とも遊べる?」
「ちょっとだけなら大丈夫じゃないかな?
聡太次第だけどね。」
「じゃあ行こうよ!
聡太元気かなぁ、何して遊ぼうかなぁ。」
ガレージで車を出し、透明化してから転移する。
自宅マンションの駐車場に着き、周りに誰もいないことを確認。
念話で聡太に連絡。
(聡太、今いいかな。)
(どうしたの父さん、まだ何かあった?)
(そうなんだ、忘れ物してさ。
渡しに行くけど良いかな。)
(わかった、待ってるよ。)
「よし、連絡取れたから向かうか。」
車ごと、聡太のマンションの屋上まで転移する。
着いてから降りて車をしまい、改めて聡太の部屋に転移する。
「よ、来たよ。」
「早かったね、シビックもいらっしゃい。
さっき渡し忘れたって、何?」
「実はさ、一度向こうに帰って念話試したんだけど、できなかったんだよ。
その後さ、ある道具があればできるかもって思って、渡しに来た。」
俺は、ウエストポーチから王冠を出した。
「綺麗だね、なんか高そう。」
「おぅ、高いらしいから無くすなよ。
ペンダントでもキーホルダーでも良いけど、いつも持っててくれると試しやすい。」
そう言いつつ、王冠を聡太に手渡した。
いろんな角度から眺めつつ、その重さにもびっくりしている。
「結構いい重さある。
純金かな。」
「売ったらいい値段するとは言われたけど、売る気は更々ない。
シビックの前のご主人から貰ったものだからな。」
「そうなの?大事にするよ。」




