お試しにも程がある 202
「アスカよ、人間が攻略進めても問題ないか。」
「はい、問題ございません。」
「壊されなければ、影響はないか。」
「仰る通りでございます。」
「では、この者達が入ることも問題ないか。」
「…アスコット様のお望みのままに。」
なんか、アスコットには逆らえないアスカで終了しそう。
だが、一矢報いたい気持ちはあるようだ。
「恐れながらアスコット様、ダンジョンの難易度を上げることは管理上許容範囲と認識しておりますが、如何でしょうか。」
「ふむ。
この者達ではなく一般の人間達も利用できる程度であれば、問題ない。」
「畏まりました。
では、更に長く・奥の方に強い魔物を配置して、攻略されないよう努めます。」
「宜しい。
他の者たちも、一般の人間達を基準に組み立てるのだぞ。」
「「畏まりました。」」
管理者達は、一斉に頭を垂れる。
「時にアスカよ、そなたのダンジョンだけが長大になるのか?
他のダンジョンも同じようになるのか。」
「アスコット様、ダンジョンは個別管理されております。
管理者毎に内容の違うダンジョンになりますので、ご安心ください。」
質問されたアスカではなく、フローリアンが応える。
「先程、皆性格が違うと申しておったが、ダンジョンもそれなりに違うものとなるのか。」
「左様でございます。」
「俺の所は、強い魔物を取り揃えております。」
「うちの所は、頭も使わないと攻略出来ないようになってます。」
ロデオとジェミニが、自信を持って進言する。
「私のダンジョンも、1階層が広く、迷路になっております。
そのダンジョンに適した人間でないと、攻略は難しいかと。」
フローリアンは、笑顔で恐ろしいことを言う。
「ただ、来る人間が少ないので、ずっと変わっていないのが実情です。
攻略されて驚いたというのが、今回のアスカの反応ではないかと思われます。」
フローリアンの意見に、アスカはコクコクと首を振る。
「あまり使われてないとな。
気骨のある人間が少ないのか、残念なことだ。
利用する者達が居ないと、そなた達も張り合いがなかろう。
どうしたものか。」
綺麗な手を顔に添えて、考えるアスコット。
「俺も意見してもいいですか?」
俺は手を挙げ、アスコットに声を掛ける。
「無論だ。
何かな、拓海よ。」
「ありがとうございます。
ダンジョンで違いがあることを初めて知りました。
人間的に言うと距離が離れたところにあるので、比べることが難しいのではないかと思います。
そこで提案ですが、俺達が全てのダンジョンに入って、こんな感じのダンジョンだよって宣伝するのは如何でしょう。
恐らく、1箇所しか行かない人が殆どで、ダンジョンはこういうもんだと入ったところの印象しかないのではないかと考えました。
今は転移装置も各地方にあるので、行きたいところに行ってみようという冒険者も増えるかも。」
「ほぅ、宣伝して人を集めてくれると。
それはありがたいな。
どうじゃ、そなた達。」
ちゃんと下の者の意見も聞くなんて、いい上司だな、アスコットは。
「ありがたい申し出、ぜひお願いしたいと思います。
残り3つのダンジョンで、お待ちしております。」
フローリアンが即座に応えると、管理者全員で同意を示す。
「忘れておらんと思うが、練習は弱いものこそ必要。
きちんとそういった者たちでも入れる所は、用意するのだぞ。」
「そこはご心配なく。
モコとフィリーのダンジョンは、初心者用でそのまま残します。」
フローリアンの回答に、モコもフィリーも同意を示す。
「僕の所は、変えるつもりありません。」
「俺の所は、来るまでの道が大変なように入り口が分かりづらくなってます。
それも練習の1つかなって思ってます、はい。」
2人の言葉に、笑顔で応えるアスコット。
「それなら良い。
では、この件で他に問題はないか?」
「「ございません。」」
「宜しい、ではこの件は終了とする。
皆、ご苦労だった。」




