お試しにも程がある 201
「あ、アスコット様?」
転移した先は、大人数でもゆったり過ごせるラウンジのようなところだった。
「皆、ダンジョンの管理ご苦労さま。
進言のあった内容について、少し詳しく聞きたいんだけどいいかしら。」
「畏まりました、直ぐに全員集めます!」
3人いた中のジェミニが、即座に反応する。
念話で集合かけたのか、あまり待たずに全員が揃った。
揃うまでの間、アスコットはソファに座って待つ。
隣に、ケーキの皿とフォークも持っていたベゼルが座る。
反対側に俺達が座り、みさとの膝の上のシビックはポテトチップ持参である。
6人全員が揃い、アスコットの前に膝をつく。
「お待たせしました、アスコット様。
何なりと仰って下さい。」
代表してフローリアンが、アスコットに声を掛ける。
「先ず、今回の内容について、何が問題なのかをはっきりさせたいわ。」
「恐れながら、私アスカから申し上げます。
私の預かるダンジョンを、一度ならず二度までも攻略し、あまつさえ壁を壊してでも進もうとする輩が出てきたのです。
他のダンジョンも攻略を進めている様子のため、被害が及ばないように追い出した次第でございます。」
「さてアスカよ、ダンジョンとは人間にとっては練習場だ。
攻略されてはまずいのか?」
「め、滅相も御座いません。
ただ、折角アスコット様よりお預かりしているダンジョンをいとも簡単に進み、全て攻略しようとする姿勢が許せないのです!」
「今まで、攻略されることはなかったのか。」
「左様でございます。
進む程に強い魔物を配置し、進みづらくなるようにしております。
勿論、段階的になので練習には丁度いいかと。」
「ふむ。
人間の練習場に人間が入れないのはおかしいのではないか。
何のための練習場だ。」
「それは、その…」
「作り直すの面倒くさいって言ってたよね。」
アスコットとアスカのやり取りに、シビックが口を出した。
「そ、そんなこと言ってないわよ!
ちょっと大変って言っただけよ。
てか何であんた達ここに居るのよ?」
シビックにびっくりしたアスカは、素が出てしまった。
「この者たちは、私が双方の話を聞くべく連れてきたのだ。
何か問題でも?」
「いえ、何もございません。
失礼致しました、アスコット様。」
「宜しい。
では改めて聞くがアスカ、壁を壊さぬよう注意した後も壊して回っていたのか?」
「いえ、私のダンジョンではしませんでした。」
「他に壊されたものはおるか。」
「バサラのダンジョンは、攻略されましたが壊されてません。」
「オッティも同様でございます。」
モコもフィリーも進言する。
「確か、途中で追い出したと聞いたが、間違いないか。」
アスコットの言葉に、フィリーが動揺する。
「あ、あの、それについてはアスカから言われまして。」
「アスカから?
何故お前はアスカの言う事を聞いたのだ。」
「その、そうするように言われただけです…」
「ふむ、この中では上下関係はなかった筈だが、どうなっておる。」
その問いには、フローリアンが応えた。
「恐れながらアスコット様、長き時を経るにあたり、それぞれ霊格と言いますか、性格がはっきりしてきた模様でございます。
ここにおります6人とも、それぞれ違う思考・行動パターンを持っておりますれば。」
「成程な。
拓海の言う通りだったのだな。
聞きに来て正解だ。」
「偶々当たっただけですよ。
精霊も、人間と同じように個体差があるのは、親近感が湧きますね。」