お試しにも程がある 200
「まだあるけど、違うケーキにしようか?
同じものでも出せるよ。」
「流石みさと、わかってるぅ!
違うのくださーい。」
ベゼルの要望に応えるため、みさとはキッチンに向かう。
「ねぇベゼル、本題は何?」
「あぁ、それね。
アスコット、拓海に直接聞いてよ。」
「え、丸投げ?
まぁいいわ。
私はダンジョンを作った者よ。
管理者として精霊を配置してあったんだけど、その子達から連絡が来たの。
最近ダンジョン攻略を軽々して、その上壁も壊していったと聞いてるわ。
あの大人しい子達から苦情が入るって、どんなことしたのかしらって確認よ。」
「大人しい、ねぇ。」
「あれは大人しくない。
ちっちゃいのに怒られたもん。」
「怒られた?ちっちゃい?
もしかして、声を掛けるだけでなく姿も現したの?」
俺とシビックの返答に、アスコットが驚いた。
「確かに、小さかったね。
仁王立ちして怒ってた。」
「上から目線の言い方もちょっとね。
僕のことわかったみたいで大人しくなったけど。」
みさともやってきて、ベゼルにケーキを渡してから座った。
「あの女の子?
私が壁壊したから怒ったんだよね?
ちゃんとごめんねって謝ったんだけどな。
その後も壊さないようにって言われたから、壊してないし。」
「成程。
繰り返しダンジョン攻略しているのは事実なの?」
「そこは本当ですよ。
魔石回収も魔物倒した分はしてる。
自動で回収する袋も作ったしね。」
俺は、ウエストポーチから実物を出す。
テーブルに置いたそれを、アスコットはじっと見る。
「これあなたが作ったの?考えたわね。」
見るだけで性能分かるんだ、流石だなぁ。
「そうですよ。
拾うのめんどくさかったんで。」
「ほぼほぼ倒したから、殆ど回収してると思いますよ。」
みさとも事実として伝える。
「オッティのダンジョンに入った時は、最後まで行く前に追い出されたみたいです。
シビックが追い出されたみたいって言ってくれてわかりました。
だから、どうしたもんかねって家で一休みしてたところですよ。」
溜息を付いたアスコットは、シビックを見る。
「ねぇシビック、全て事実かしら。」
「そうだよ、2人は嘘ついてないよ。」
「わかったわ。
となると、どうしてそこまで反応したのかしら、あの子達。」
靭やかな指を、綺麗な顎に添えて考え込むアスコット。
みさとは、綺麗だなぁと見惚れているような顔。
「元々そういう性格の子達だったんじゃないのですか?」
「いいえ、精霊は大人しい子達よ。
人間に向かって怒るなんて考えられないわ。
ましてや、姿を見せるなんて。」
「時間が経過して、性格が変わったとか?」
「短い間で変わるものかしら。」
「因みにどれくらい前なんですか?」
「ほんのちょっと、2000年前くらいかしら。」
「2000年?かなり前ですね。」
「あら、人間の感覚だとそうなるの?」
「そうですね、かなり前ですね。
経緯はわかりませんが、性格変わっても不思議じゃないかも。」
「おかしいわね。
皆同じように大人しく指示に従う子ばかりだったのに。」
「因みに、怒ってるのはインフィニティのダンジョンの子だけですか?」
「報告ではそうかも。
でも、追い出したのは別のダンジョンの子のはず。」
「それって、インフィニティの子が指示したからやったのでは?」
「何ですって?
あの子達に上下関係はないわ。」
「最初は、ですよね。
最近は確認してるんですか?」
「報告は何かあった時にするように言ってる。
実際には会ってないけど。」
「それ、会いに行った方がわかるんじゃないですかね。」
俺との問答に業を煮やした様子のアスコット。
「わかったわよ、もう!
面倒くさがった私が悪かったわ。
あなた達、一緒に来てもらうよ。」




