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ちょっとそこの異世界まで  作者: 三毛猫


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お試しにも程がある 190

 「じゃあ準備しときますね。」

 みさとはリュックからバターを取出す。

 ボウルと刷毛も出て来た。

 前に肉巻きおにぎり教えた時にも使ってたっけ。

 バターの半分をボウルに入れて、オーブンのそばに置く。

 みるみるバターは溶けていき、黄色の液体になっていく。

 程よくして釜から焼き上がったパンを出し、箱から外す。

 部屋中にパンのいい香りが広がる。

 そのうちの1つに対して、みさとは刷毛でバターをたっぷり塗る。

 バターの香りが、更に広がった。

 「うわぁ、これはたまらない。

 早く食べたいな。」

 クレスタは香りを楽しんでいる。

 プラッツも、バターを塗ったパンを見ている。

 「こんなに艶が出るんだ。

 香りも文句無し、バター染みて美味そう。

 なんでやらなかったんだろう。」

 「中々いつものやり方を変えてみようとは思わないですよね。」

 みさとは刷毛を戻しつつ、プラッツに応える。

 「触れる位の温度になったら、割って染み込み具合確かめてくださいね。

 焼きたてはそのまま食べたくなる。」

 「俺も他のに塗ってみていいかな?」

 「どうぞどうぞ、お試しください。」

 みさとは、バターのボウルとそこに入った刷毛をそのまま渡す。

 「塗るなら焼きたてですもんね。」

 プラッツはみさとがやったように、山になっているところに丁寧に塗る。

 更にバターの香りが広がった。

 売り場の方に客が来ていたようで、売り子がこちらに来た。

 「プラッツさん、この香り何ですかね。

 お客さんがこれ欲しいって言ってます。」

 プラッツは、みさとの顔を見る。

 うんうんと頷くみさとを見て、バターを塗ったパンを売り場に持っていく。

 売り場では、待っている客が3人居た。

 プラッツがパンを持ってきたことで、更にバターの香りが広がる。

 「「それください!」」

 商品が何かを説明するまでもなく、3人共購入希望を告げた。

 プラッツはパンを2つしか持って無かったため、一緒に焼いたパンに急いでバターを塗り店側に持っていくみさと。

 「お待たせしました。

 焼きたてで熱いのでお気をつけ下さい。」

 パンが入る大きさの細長い紙袋に入れて渡し、抱えた客はニコニコと帰っていった。

 温かいパンを抱え、上の袋の口からバターの香りを楽しむ。

 出て来た客が香りを広げて、更に来客が増える。

 あまり人通りが多くない時間なので、いつもなら暇な筈だった。

 連鎖的に5人来店、皆バターを塗った四角パンを買っていった。

 一段落ついて、やっと味見ができた。

 程良い温かさの四角パンを山で割り、1人1つずつ味見。

 売るパンが無くなったので店も閉めて、売り子のルーミーも試食に参加。

 ルーミーは、迷わず山から齧り付く。

 「美味しい!バター染み染み!おかず無くてもパンだけ進んじゃう。」

 「ほんとだね、美味い。

 ただ、好みはあるから塗ったものと塗らないものを用意かな。」

 プラッツは味の想像ができていたようだが、いつもの客層を思い浮かべ思案する。

 クレスタはバター染みたところは食べきったようで、残りをゆっくり食べている。

 「そっか、いつものが良いお客様も居るよね。

 それに、バター塗った方は値段変えないとかな?」

 「それな。

 さっき普通の値段で売っちゃったんだよ。

 あの時はお試し価格ってことで、ちょっとだけ上げようかな。」

 色んな事情があるよね。

 クレスタとプラッツの会話に、商売が入ってきた。

 「えっと、私がバター好きで試したかっただけなんだけど、なんかごめんなさい。」

 「何言ってるの、みさとさん。

 新たな商品開発は大事だよ!」

 「そうそう、バターありかなしかで選択肢増えたら、お客さんも喜ぶし。

 寧ろ、ありがとうと言いたいね。」

 「まだ本題に入ってないので、そっちに移ってもいいかな?」

 そうだ、町おこしだっけ。

 「パンをそのまま食べるだけだと、それ以上はお客様次第になるから、付加価値を付けてもっと選んで買ってもらえるようにしたい。

 そこでみさとさん、何か良い案ないですか?」

 振られたみさとは、首を傾げて考える。

 「例えばですが、中にクリームとかジャムとかあんことか、混ぜ込んでマーブルにしてみるとか。」

 「「ほうほう。」」

 「後は、デニッシュ食パンも美味しいですよ。」

 「「デニッシュ食パン?」」

 「あ、四角パンです、はい。

 デニッシュって、簡単に言うとバターを練り込んだパンですかね。

 折り畳むの方が正確かな。

 そうすることで層ができて、また違った食感になるんですよ。

 試してみます?」


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