お試しにも程がある 186
「おかえり、皆さん。
沢山遊んできたんでしょうから、先ずは手を洗ってきてね。」
みさとはにこやかに迎える。
デックスとルクラは、本人の意志を確認せず連れてきた。
見覚えのあるみさとの出迎えで、少し安心したようだ。
レジアスの家は、今更だが中も広い。
来客でも対応できる広いテーブルもあり、2人増えたくらいでは問題なかった。
今回も沢山用意されてたので、とても味見の量ではない。
「豪勢な昼飯だな、ご馳走になるぜ。」
「美味しかったら、前みたいに嫁さんにも食べさせたいんだけどいいかな、みさと。」
「どうぞどうぞ、デックスさんいっぱい食べてね。
ルクラさん、気に入ったの教えてね。
レシピもつけるよ。」
席についたレジアスは、セプターとオーパに声をかけた。
「どれも美味そうじゃ。
作り方は覚えられたかのぅ。」
「お任せ下さい、レジアス様。」
「この豆腐というものの産地も教えてもらいましたので、買いに行けます。」
セプターとオーパは、嬉しそうに答える。
「それは上々じゃ。
この辺りでも中々手に入らんからのぅ。」
「何ですって、手に入らない食材なの?」
レジアス達の会話が耳に入ったヒミコは、即座に反応した。
「えっと、今日使った豆腐は、朝買ってきたの。
作ってる地方あるから、そこにたっくんと転移してね。」
「成程、それなら問題ありませんわ。
だからあの時、地方の話をされてたのね。」
「後で俺が現地にお連れしますよ。」
「えぇ、是非お願いしますわ。」
「じゃあ、早速いただきましょう。」
「「いただきまーす!」」
皆一斉に食事開始。
「この辛いのは刺激的でいいな。」
「良かったです、城でも作りますね。
こっちのあっさりした丼も美味しいですが、辛いのもご飯にのせると美味しいそうですよ。」
「おいルクラ、この伸びるのが乗ってるやつ、美味いぞ!」
「米が入ってる茶色いのも、甘くて美味いぞ。
嫁さん喜ぶかも。」
「この呉汁のつぶつぶした豆の食感が良いのぅ。」
好きなものを取り、それぞれ楽しんでいる。
シビックにもきちんと取り分け、食べられるようにした。
「大勢での食事も楽しいね。
賑やかだ。」
「そうだね、さっきの遊びも皆で楽しかったんじゃないの?」
「そうなんだ!
デックス達のとこでさ、小さなサーキット作って二輪型で競争してたんだよ。
いい運動したおかげで、ご飯が美味しいよ。」
「へぇ、見たかったなぁ。
今度する時は連れてってね。」
「勿論、一緒に行こう。」
俺とみさとは鍋をつつきつつ、さっきの報告。
「おい拓海、さっきの続きは何時やる?
今度こそ俺が勝つ!」
「何を小癪な、また私が勝つから何回でも来るがいい。」
「俺達も負けてらんねぇな、ルクラ。」
「そうだな、デックス。
刻印の改良を試すか。」
皆やる気満々である。
「ねぇヒミコさん、一緒に見に行きましょうよ。」
「そうねぇ、偶にはいいかしら。」
「じゃあ、後片付けしてお豆腐売ってるところ案内してから、観戦に行きましょう!
おやつも持っていくね。」
「おぅ、この後だな。
ヒミコ見てろよ、レジアスに今度こそ勝つから!」
「ホホホ、楽しみですわ。」
これで、食後に開催が決定。
ここでコルサからみさとに進言が入る。
「みさと様、食後の片付けは我らにお任せ下さい。
まだ甘いものもあると聞いておりますが、そちらはお持ちしますか。」
「え、お任せしていいの?」
みさとは、コルサとレジアスの顔を見る。
「みさと、家のものに任せてくれていいんじゃよ。
甘いものもあるのか、コルサ出してくれるか。」
「畏まりました。
空いた食器から下げさせていただきます。」
ほぼほぼ空になった食器だらけだったので、コルサとメイド達でテキパキと下げていく。
そこにオーパ・セプターが、デザートを持ってきた。
1人前ずつにしてあるので、ブラマンジェも団子も皆に行き届く。
「同じお豆腐を使ってるとは思えませんわ。
滑らかで美味しい。」
「この緑の餡も美味いぞ。」
「小豆餡にきな粉は鉄板じゃな。」
デザートを楽しんでいる間に、みさとはルクラに声を掛ける。
「ルクラさん、奥様にお土産どれにします?
作り方も出せますよ。」
「うーん、どれも美味かったよ。
どうしようかな…」
「じゃあ、作り方は全部出すので、持ち帰りやすいものだけ持って帰ってね。」
そう言うとみさとは、透明パックを取出し、いなり寿司・麻婆豆腐・厚揚げステーキ・厚揚げの肉詰め・デザートとそれぞれ入れていく。
「お土産は先に家に置いてこようか。
ルクラ、送るよ。」
デザートも食べ終わってお茶を飲んでいたルクラに、俺は声をかける。
みさとが大量のパック詰めをしたものを俺がウエストポーチに入れて、ルクラを連れてルクラの家に転移。
家に着いてから、テーブルにお土産分を出した。
「ルクラ、このパックは食べ終わったら捨ててね。
食べる時には温め直したほうが美味しいよ。
食べるまでは冷蔵庫に入れようか。」
目まぐるしく状況が変わる中で、ルクラは取り敢えず頷いた。
更に、ウエストポーチから寸胴鍋を出した。
「序でだから、豆腐も置いてくね。
先にデックスの小屋に行く?レジアスん家に戻る?」
「小屋にしてくれ。
刻印を精査しないと、速くならないからな。」
「了解。」
ルクラをデックスの小屋に連れて行ってから、俺だけレジアスのところに戻る。
「ルクラは刻印の調整するって言ってたから、小屋にいるよ。
準備良いなら移動する?」
「たっくん、ヒミコさんをソアラさんとこに連れてかないと。」
「そうだね、先にそうしよう。」
そのやりとりを聞いて、レジアスが提案。
「では、私達は先に例のところに向かっとくとしようかのぅ。」
「じゃあそっちは宜しくね。」
お互い、別々のところに転移した。
俺達は、ソアラのところに到着。
みさとが、ソアラに声を掛ける。
「ソアラさん、こんにちは。
お豆腐美味しかったよ。」
「おぅみさとさん、ありがとな。
そっちのえらい別嬪さんはどちらさんだい?」
「ヒミコさんって言って、お豆腐の料理を一緒に作ったの。
美味しかったから、買うならここねって教えに来ました。」
「そりゃ嬉しいねぇ。
どうもヒミコさん、いらっしゃい。
店主のソアラだ。
豆腐はな、遅い時間に来ると無いときもあるから、なるべく早く来てくれると助かるよ。」
「ソアラさん、初めましてヒミコです。
お豆腐、とても美味しかったですよ。
またお邪魔させて頂くわね。」
「おぅ、別嬪さんは大歓迎だ。
待ってるよ。
良かったらおからクッキー、持ってっていいから試してみて。」




