お試しにも程がある 185
「私は自分の出すぞ。
勿論、速度制限なしじゃ。」
「俺も自分の欲しいな。
拓海、どうにかならないか。」
レジアスの自分のものという主張が羨ましいのだろう、そうだよね。
「オロチさん用に、少し大きくしたものを渡すよ。
さっきの小さかったでしょ?」
ウエストポーチから出し、少し大きくする。
「ありがとう拓海。
あいつのと見分けが付かなくなるな。」
そこにデックスが、ニヤニヤして声をかけてきた。
「こういうもので、自分用に分かるようにしてはどうかな?」
そこには、ハンドルグリップや部品の色違いが沢山あった。
「カスタマイズ出来たらって言ってたもんね、流石デックス。」
「残念ながら大きくはならんが、どうしたもんか。」
自分の倍以上大きなオロチを見上げ、呟いた。
俺が度々違う人連れてくるから、慣れてきたみたい。
「大丈夫、元に戻して交換してから大きくすればいい。」
俺は元の大きさに戻し、オロチに好きなものを選んでもらう。
「ズルいぞ、私にも欲しいぞ。」
オロチとレジアスはそれぞれ好きなものをチョイス・デックスに着けてもらう。
終わってから、オロチ用は体に合わせて大きくした。
「スピード調整は、自分で魔法でどうぞ。
ルールは飛ぶのはなし、道に沿って走ること、他の人に魔法での邪魔はしないこと。
車体ぶつけると、自分のも壊れるからしない方がいいよ。
そんな感じで、少し走ってコース確かめてみて。」
「「わかった!」」
オロチが先に走り出し、間隔を開けてからレジアスも走り出す。
折角だから、コースを俯瞰して何処に居るかが分かる映像と、走っているそれぞれの車体から見える映像を映し出せるようにして、デックスとルクラが見られるようにした。
2人が持っている水晶から、壁に映像が映し出せる仕組み。
オロチはスピード出し過ぎて、カーブ曲がれず大幅コースアウト。
それを見ていたレジアスは、ちょっと減速したがやはりコースアウト。
2人共転けそうになるが、おそらく魔法で態勢を整えたのだろう。
時間はかかったが、コースに戻って走り続けている。
練習風景を見ていたデックスが、ルクラに声をかけた。
「なぁルクラ、速度制限かけられるなら、逆に速くすることもできるよな。
魔石増やしたら、その分早くなるもんかな。」
「面白いな、それ。
やってみるか。」
デックスは魔石を入れるケースを大きくして複数入るようにして、ルクラは速く走れるように刻印し直した。
間違えて外に出さないように、これもカスタムして判別つくようにした。
練習に加わった俺に、デックスから念話が来た。
(拓海よ、俺達も参加していいか?)
(良いよ良いよ、一緒にやろう。)
許可が出たことで、2人して囲われたコースに入ってきた。
先ずはデックスが走る。
思ったより速度が速かったようだが、徐々に面白くなったらしい。
体を傾けてコーナーを回る感覚が楽しそうだ。
数周回ってから、今度はルクラの番。
最初は恐恐だったが、やはり楽しくなってきたようだ。
数周走って戻って来ると、1人1台後で作ろうと話が決まった。
やばい遊びを教えちゃったかな?
ヘルメットと膝・肘の防護具必要かな。
充分周回できたので、そろそろ集合をかける。
全員揃って、10週で競うことになった。
ルクラがスタート位置に立ち、周回数も知らせる役目。
俺は雰囲気出るように、フラッグを作り振ってもらう。
スタート位置には、先頭が何周目を走っているかわかるように大きく数字を映し出す。
スタートシグナル出せる仕組みを、後で考えよう。
そんなこと考えつつ、一斉にスタート。
ストレートでスピード上げて、コーナーに差し掛かる際に少し減速、その後のS字は体を傾けて悠々進む。
上り坂で出力アップ、立体交差を経て急カーブも難なくクリア、高速区間に入る。
遠心力で飛ばされないように気を付けながらスプーンカーブを熟し、後は出せるだけスピード出して進む。
そのスピードのまま緩やかなカーブを進みホームストレートへ。
周回をするに連れて皆慣れてきて、抜きつ抜かれつのいい勝負。
レジアス・オロチは、魔法を駆使して慣性もねじ伏せてる様子。
デックスは低重心で安定、出力は少ないがカーブも難なく進む。
俺は憧れのサーキットなので、イメージトレーニングはバッチリ。
体がついていくかが問題。
こんな感じで、拮抗した試合展開。
着順は、レジアス・デックス・俺・オロチ。
乗り慣れてる順だと思いたい。
「もう一度だ、お前が1位などありえん!」
「何回でもかかってくるが良い。」
「ルクラ、お前の番だ。」
「おぅ、旗宜しくな。」
皆元気だな。
ちょっと疲れたので、水分補給。
全員分渡して、飲んでから再開となった。
2レース目を始めると、更に白熱。
トップはレジアスだが、僅差でオロチが2位になった。
その後はルクラ・俺の順。
解せぬ…
「うぬ、もう一度だ!」
「あなた、いつまで遊んでいるのですか。」
ヒミコの声がした途端、全員が固まった。
「ひ、ヒミコ、これは違うんだ、あのな…」
「皆様で仲良くされることは良いことですよ。
そろそろ召し上がってほしいので、戻って頂けますか。」
「はい。」
大人しくお縄についた。
「来てくれて楽しかったよ、また時間あれば遊ぼうぜ。」
「そうそう、次こそ勝てるように練習しとくよ。」
デックスとルクラは、そそくさと別れの挨拶を切り出す。
「あら、折角ですから、一緒に食事は如何ですか。
沢山作りましたのよ。」
「え、良いのか?」
「勿論ですよ。
ですわよね、レジアス様。」
「あぁ、是非来ておくれ。」
デックスとルクラは、初対面のヒミコの迫力に恐れをなしたようで、俺の方を見る。
「大丈夫、みさとが料理教室して、沢山料理作っただけだよ。
早く行こう。」




