お試しにも程がある 180
「カッコよかったっす、みさとさん!」
「流石前回優勝者、お強いですね。」
チェイサー・マークツーがそれぞれ褒め称える。
みさとはわたわたしながら、恥ずかしそうに応える。
「えっと、夢中だったから体が勝手に動いただけで、特別なことはしてません。
お客さんにも怪我人出なくてよかったです。」
言うやいなや、俺の後ろに隠れてしまった。
かわいいなぁ。
「みさとにも怪我がなくてよかったよ。」
後ろに振り向き頭を撫でると、やっと笑顔になった。
「拓海さんもみさとさんもお疲れ様でした。
最後のは良い宣伝になったかも。
変なのも寄り付かないだろうし、ふふふ。」
クレスタは、全てを商売に繋げて考えられる、良い性格をしている。
「宣伝費含めて、今回の依頼料です。
本当に助かりましたよ。」
前もって用意していた袋に金貨を追加し、俺に手渡すクレスタ。
「そんな大盤振る舞いで良いのか?」
「なぁに、今後に対しての投資も含まれてるからね。
問題ないよ。」
「拓海さん、完売ですよ完売、大成功でしょ!」
「お前が凄いんじゃない、方法を考えた拓海さんが凄いんだ。」
褒めてほしそうなチェイサーの言葉を、マークツーがいなす。
「チェイサーの実演販売、お客さん楽しんでたし、大成功じゃないかな。
注目集めるのって大変だしね。
マークツーも、下準備や根回しお疲れ様。
順調に終わって何よりだね。
地方でもやるんでしょう?頑張ってね。」
2人揃って成功したことを強調し、俺は声を掛ける。
「そーなんすよ、町おこしでも成功させますよ!
今回で自信ついたし、在庫ある分だけ売れる気がする。」
「今回が偶々成功しただけかもしれないぞ。
人出も多かったしな。」
「在庫の調達は任せてよ。
デックスさん達に次の予定の連絡入れなくちゃ。」
チェイサー・マークツー・クレスタで、役割分担がそれぞれできて良かった。
「じゃあ俺達はこの辺で御暇するね。
またのご指名お待ちしてます。」
俺達は、事務所を出た。
残った3人で、決まったことがある。
「おいおい、みさとさんあんなに強いのか?
ヤバいって。」
「拓海さんに強いだけじゃなくて、腕っぷしも強いんだ。」
「普段全然そんなところ見せないから、分からないよね。
いいかい2人共、絶対怒らせちゃ駄目だよ。
前回優勝者は伊達じゃない。」
「「わかった!」」
仕事は終わったので、これからは出店を楽しむことにした。
「昨日行かなかったところに行くかい?」
「行く行く!」
すっかり元気を取り戻したみさとは、シビックと一緒に美味しそうな出店探しを楽しむ。
最初は、ラッシュの肉巻きおにぎりだ。
「ラッシュさん、こんにちは。
3つ下さいな。」
「おぅみさと、よく来たな。
売上げ順調だよ、鉄板大成功だ。」
五平餅のような形にした肉巻きおにぎりは、刷毛で塗られたたれが、香ばしい香りで客を誘う。
「3つお待ち。」
出された肉巻きおにぎりは、マヨネーズと一味もかかっている。
料金は先に払ったので、熱々を受取り口に入れる。
「あっつ、美味しい!」
「マヨも一味もいい味出してるね。
豚が主役は間違いないんだけど。」
みさとはふぅふぅしてから食べたのに、まだ熱そうだ。
俺も、ジューシーな肉巻きおにぎりの感想をラッシュに伝える。
「だろ?
終わってからうちの食堂でも出そうと思ってさ。
みさとが言ってた黄身も試したけど、かなり美味しかったよ。」
「んむ、試してくれてありがとう。
これ最高!」
みさとは食べたいけどお喋りもしたいようだ。
気が付くと後ろに行列が出来ているので、挨拶して離れた。
シビックは食べ終わり、次を探している。
そして今日も、お腹いっぱいになってから家路についた。
後から聞いた話だが、テイマー部門は優勝候補が棄権したので、決勝戦は行わなかったそうな。
祭りの後の余韻に浸る暇もなく、レジアスから念話が入った。
(拓海、そろそろいい時期かのぅ。
みさとに料理教室をうちで開いてもらえんかのぅ。)
(わかった、前回言ってたあれだね。
みさとにも声かけるけど、明日朝からにするの?)
(それが良いじゃろ。
オロチからも奥方にせっつかれたようで、まだかと聞かれとる。)
(あはは、じゃあ前回と同じ位の時間で行くね。)
(宜しく頼むの。)
「みさと、明日レジアスの家で料理教室のご指名だよ。」




