お試しにも程がある 18
「意外に重いなぁ。」
寝てしまったシビックをそっと持ち上げ、近場のクッションまで運ぶ。
起きる素振りもなく、すやすや寝ている。
大きめクッションの上に静かに乗せ、1つ任務完了。
胡麻油の監視に向かう。
「みさと、これ良く考えたね。」
「勿論ネットで調べたよ。先生様々だね。
後は代用出来そうなものは買ってみた。」
「胡麻油、考えてなかったけどあると嬉しいよね。」
「でしょ?お料理したくなるもん。
まだ内緒だけど、辣油も作っちゃった!」
「えっ!出来たの?」
「食べる時驚かせようと思ってたけど、味見する?」
「するする!」
みさとはリュックから、辣油の瓶とふりかけ状にしたものが入っている瓶を取出した。
「こっちが辣油で、こっちが辛くない食べて美味しい辣油にしようと思ってた。」
「素晴らしいよみさとさん!
こっちは辣油と胡麻油足して漬けとく感じ?」
「そんな感じで良いんじゃないかと思ってる。
時間かけないと味が馴染まないかな?」
「ふんふん、その辺は任せて。」
魔法でどうにかなるでしょ。
半々位で足して、瓶を振ってふたりで味見。
辛さは丁度いいかな。具材の香ばしさや塩味も馴染ませたいから、少しだけ時間経過の魔法をかける。
再度味見して、ふたりしてニンマリする。
「先ずはリュックに入れようか。」
「そうだね、上手く出来て良かったぁ。」
「餃子が更に楽しみになってきた!」
「ねぇねぇ、すんごく辛い辣油も作る?」
「それは後でもいいんじゃないか?
今日はこの辣油で大満足ですよ。」
「それなら良いけど。
そういえば、レジアスさんは一緒じゃないの?」
「あぁ、忘れてた。
都合良くなったら連絡してこっちに来るって言ってたよ。
後片付けあるらしい。」
「大変なんだね。
設置、上手くいったのかな?」
「多分大丈夫だよ。
最後の設置してからテストで首都まで帰ってきたしね。」
「行来しやすくなると、クレスタさん喜びそうだね。」
「そうだな、専属で指名されなくて済むよ。
他の人でも移動できるから、仕事振りやすくなるんじゃないかな。」
「魔法って凄いね。使えないけど。」
「役割分担って事で良いんじゃない?」
「そういうことにしときますか。
ご飯準備進めるね。」
みさとは、餡掛けとおこげの準備に取り掛かる。
俺は、残ってる胡麻油の塔と濾過しているものの見張り番。
腹減ったなー、早く食べたいなーと思いながら見つめる。
ぼーっと見ていたら、みさとが近寄ってきた。
「最後の仕上げは、レジアスさん来てからの方がいいでしょ?」
「そうだね、そろそろ聞いてみるよ。」
(レジアス、そっちはどう?晩御飯そろそろできるよ。)
(何!直ぐ切上げて向かうわい。)
(終わってからで良いんだよ?)
(なぁに、部下からの報告も序に少し受けていただけじゃ。
書面で読み返せるから大丈夫じゃわい。)
(そんなんでいいの?)
(アイシスじゃからな、長いんじゃよ。)
(あはは、適度によろしく!)
「みさと、もうすぐ来るっぽいよ。」
「了解!準備進めるね!」
コンロは3つしかないので、順番にテキパキ進めるみさと。
蒸して、焼いて、揚げて。餡掛けは温め直しで直ぐ出せそう。おこげは食べる前に揚げて、カリカリを楽しめそうだ。
蒸し鶏は冷蔵庫で冷してあるものを取出す。
かけるソースを混ぜ合わせ、隣に置く。
胡麻油と辣油も使っていい香りしてる。
テーブルに取り皿・箸も用意。
「遅くなってすまんの、御馳走になりに来たぞ。」
「待ってたよレジアス、ご飯にしよう。
みさと、早く食べよう!」
「なんとも良い香りじゃ。楽しみじゃわい。」
「いらっしゃいレジアスさん。
お口に合うと良いんどけど。」
「みさとなら間違いないじゃろ。」
「そう言ってくれると嬉しいな。
たっくん、シビック起こしてきて。」
「はいよー。」
シビックの元に向かうと、寝返りを打っているところだった。
「シビック、起きないとご飯なくなるよ。」
「んむ、起きるー。
なんかいい香り…お腹空いた。」
「そうだよな、みさとがいっぱい作ってくれたぞ。
お前も胡麻油作るの手伝ったんだって?ありがとな。」
「うん、頑張ったよ。
買物も大変だったけど作るのも大変だった。」
「買物で何かあったのか?」
「荷物が多かったのと、変なのに絡まれた。」
「おいおい、それを早く言ってくれ。
大丈夫だったか?」
「うん。
3人に囲まれたけど、みさとがやっつけて警備隊に引き渡した。」
「他は何もないか?」
「うん、その後は透明化して飛んで帰ったから大丈夫。」
「良かった。報告ありがとな。」
俺はシビックの頭を撫で、テーブルに向かう。
シビックもあとからついて飛んできた。
「たっくん、できたのから運んでー!」
「ほいきた!」
焼き・揚げ餃子が皿一杯に盛ってある。
雲呑スープのようなものが、既にテーブルにセットされていた。
レジアスは手を洗ってからテーブルにつき、お茶を飲んで一息ついている。
「これは美味そうじゃな。」
「そうだよね、他のも持ってくるよ。」
「たっくん、辣油とポン酢も出して。」
「え、ポン酢も作ったの?」
「お醤油に出汁と柑橘の果汁入れてみた。
多分いけるんじゃない?」
「みさと頑張り過ぎ!
片付けは任せて。」
「ありがとう。その話は食べ終わってからね。
次の運んで!」
「はーい。」
蒸し餃子と餡掛けおこげを運ぶ。
熱っついなぁ!
テーブルに置いてから、辣油とポン酢も取りに行く。
みさとは、茶碗にご飯をよそって人数分持ってきた。
「ご飯はお代わりありまーす。
餃子は、リクエスト出てから作るのでお早めに!」
「「頂きまーす!」」
「レジアスさん、これ餃子って言って、そのまま食べてもいいし辛い辣油とポン酢混ぜてつけて食べても美味しいよ。
他の調味料も出せるから言ってね。」
「ありがとうみさと。
では、遠慮なく頂くぞ。」
俺は既に焼き餃子を取り、辣油・ポン酢で食べ始める。
「熱っつい、おいひい、辛さもいいよみさと。」
「ゆっくり食べてね。」
みさとは、餡掛けおこげを取り分けている。
「レジアスさん、こっちもどーぞ。
シビックも、沢山食べてね。」
「僕、フォーク使えて良かった。
熱々美味しいよ!」
「それは良かった。
シビックも頑張った甲斐あったね。」
「うん!」
「レジアスさん、こっちの胡麻だれの鶏は冷たいから、箸休めにどーぞ。」
「みさと、すまんの。
どれも美味しいわい。」
「それは良かったです。
私も食ーべよ!」
みさとは、蒸し餃子に辛くない辣油をかけて食べる。
満足のいく出来に、思わず顔が綻ぶ。
「みさと、その食べ方良いねぇ。
俺もやろう。」
「拓海、それは何じゃ。」
「まぁまぁ、食べればわかるよ。」
レジアスの皿に蒸し餃子を取り、辛くない辣油をかける。
一口食べると、レジアスは大きく目を見開いた。
「ほぅほぅ、辛さは控えめじゃが具材に味付してあり美味いのぅ。
カリカリするのもいい感じじゃ。」
「でしょ?みさとの自信作だよ。」
「たっくんが時間経過の魔法かけたでしょ?」
「俺はそれだけだよ。
具も味付けも胡麻油も辣油も、みさとの手作りでしょ?」
「みさとは凄いのぅ。
うちの奴らにも教えてくれんかの?」
「良いですよ。
ねぇたっくん、あのお店で出せるかな?
次の新メニューに良いと思わない?」
「んむ、良いかもね。
胡麻油と辣油の作り方も、クレスタに売るかな。」
「先ずは食べてもらわないとかな?」
「そうだねみさとさん。」
「悪巧みしとるのぅ、拓海よ。」
「えぇ!美味しいのがいつでも食べられるのは嬉しいでしょ?
胡麻油なんか作るの手間大変なんだからね。」
「そうなのか?
それなら、店で売ってた方が嬉しいのぅ。」
「でしょ?
料理は店で出して、必要な調味料は作るところから売れば向こうも儲かるでしょ。」
「こうなるとさぁ、鶏ガラとか豚骨でラーメン作りたいよね。
お隣さんから買ってこようなかぁ。」
「待ってみさと、それもできるの?」
「ほら、ネットで先生に聞けばどーにかなるんじゃない?」
「夢が広がるなぁ。
レジアス、まだ研修で出掛けるまで期間あるの?」
「アイシスが準備出来次第連絡すると言っておったからなぁ。
あやつは、私が絡まなければ優秀なんじゃ。
あっという間に整えそうな気がするのぅ。」
「それはわかる。
みさと、帰ってきてからラーメン頑張ろうよ!
俺も一緒にやりたい。」
「いいよ!楽しみだね。」
そんな話をしている間も、シビックはもぐもぐ食べ続けている。
「どれも美味しいよ、みさと!」




